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解答例文つき 昇進・昇格試験(論文編)| 職場における人材育成について
管理職は、部下の仕事に介入することで、自らが想定するアウトプットを予定通り出す確率を高めることができます。
一方で、介入し過ぎると部下の成長を阻害してしまいます。
後輩・部下の成長を望むのであれば、1から100まで教えてやらせるのではなく、本人に専門知識をつけてやり、試行錯誤させ、何らかの答えをださせて、それを管理職が判断する形にしなければなりません。
自分の頭を使って答えをだす習慣のない人は、成長しません。そして、人間は、自分で失敗したことからは、大きく学びますが、上司の指示に従って失敗したことからは、学びません。
人材育成とは、自らの頭で学ぶ人間を育てるということにほかなりません。
冷たい言い方をすれば、何でも相談にくる部下の本質は、能力の欠如と責任回避のどちらかです。
保険を掛けたいから上司に相談しているというケースが多々あります。
管理職を6年目で思うことは、部下が委縮して相談しなくなると困るので、「解決を求めてくるな」とは言えず・・・。やんわりと『ちゃんと自分の頭で考えてきてから来てね』と伝えるようにしています。バランスが大事といったところでしょうか。
今回は、管理職の仕事の中でも大きなウェートを占め、昇進試験でも頻出テーマである人材育成について、小論文の書き方と参考文例をお示ししたいと思います。
小論文 解答例文
小論文を作成するにあたっての論理構成
作成するにあたっては、次の1~5の材料を組み合わせて、論理的な文章を構築します。(詳細な組み合わせ方法は後述します。)
論理展開としては以下の順番がおススメです。
用語の定義(今回は管理職の役割)
現状(どんな課題があるか)
理想
その為に何をするのか
解答例文
人材育成について様々な考え方があるが、本論文中では『組織が利益を上げるために、社員のスキル・知識を都度更新していくこと、経験を積ませること』そのための『社員1人1人の正しい成長をサポートする取り組み』として定義する。
この定義にそって、何が人材育成の阻害要因となっているのか課題分析を行い、そこからどういった対策をとれば、社員のスキル・知識・経験が高められるかについて、私なりの考えを示したい。
1.人材育成の阻害要因(なぜスキル・知識・経験が高まらないのか)
私が考える人材育成の課題・阻害要因は以下の3点である
① 自己認識できていない(自分に何ができて、何ができないのか認識できていない)
② 難しい仕事をしたことがない(任せてもらえない・自分の頭で考えない⇒経験が足りない・実行力が身に付かない。)
③ 場当たり的なスキルアップ(体系的な知識がない、だから別の部署に異動したり、職位が上がると今までの経験が生かされない)
2.社員のスキル・知識・経験が高めるための具体的な対策について
①への対応
1on1ミーティングを活用して、本人のスキルや知識の現在地と、将来的な目的地を共有する。正しい成長には、自分自身が、何が得意で何が苦手なのかを認識し、その得な部分をさらに磨き上げていくことが必要だが、それを自身で客観的に評価することは難しい。そのために、まずは、1on1ミーティングなどの個別面談の機会を通して、チーム員が、自分の知識やスキルレベルは元はどこだったのか、今どこまで来ているのかという自己認識する機会をつくることが重要である。この面談では、今後の成長プラン、つまり新たにどのようなスキルを身に付け、どのような仕事をすれば、より強みを磨くことになるのかを、管理職とチーム員と共に考える場にもできると考えている。
②への対策
成長を促進するような仕事を、各チーム員に適切に割り振るたとえ話になるが、ニワトリを養鶏場で飼育していると、大きく成長していく個体と、大きく成長しない個体が出てくる。遺伝的にはほとんど同じニワトリにも拘わらず、差異が出てくる理由は、大きく成長するニワトリは、与えられる飼料の中から栄養素の高いエサを峻別し、そのエサをもっぱら摂食するからである。
難易度が高く創意工夫が求められる仕事を、常に優秀な部下に任せていれば、その時点での業務遂行には問題はないが、チーム全体のレベルアップという観点で見れば、機会損失に他ならない。
この状況を改善するには、チーム員1人1人が自分より少しレベルの高い仕事を担うような、そういった業務分担が必要である。
また、管理職には、アウトプットを予定通り出すため、部下の仕事に関与する事が求められるが、介入し過ぎると部下の考える機会の喪失につながる。少しレベルの高い仕事を部下に与えたとしても、1から100までを教えるのではなく、部下に自分なりの答えを出させたうえで、指導していくことが必要であると考える。
③への対策
必要なスキルを身に付けさせるための業務命令による研修参加わが社における、OFFJTに目を向けると、若手社員向けの、オフィスソフトの活用研修から、学会への参加まで、非常に多岐に渡る、研修・学びの場が提供されている。
一方で、社員の参加傾向を見ると、『法改正があって、どうしてもその情報を把握しておかなくてはいけない』又は『プロジェクトを進める上で、絶対に必要なスキルを身につけなくてはいけない』といったような切羽詰まった状況の場合は、その参加率が高まるものの、重要ではあるが急ぎではない研修・学びの場については、参加率が低い傾向がある。
この状況では、体系的な知識やスキルが身につかない。場当たり的な成長にしかつながらないと考える。
研修への参加にこのような傾向がある理由の1つは、担当者がその必要性を判断し、出席するかどうかを決めているためである。研修参加を目の前の実務をこなすことに注力している担当者任せにすれば、このような場当たり的な形になってしまうのは、やむを得ない。
例えば、将来的に統計分析の作業をさせたいと考えているチーム員には、業務命令で、あらかじめデータベースの研修を複数受講させておくなど、業務の現状にスキルを追つかせるのでなく、スキルが先行して、その後ろを業務が追いかける形が理想の形ではないだろうか。
必要性に迫られて知識やスキルを高めるというパターン以外に、直属の上司が、将来チーム力を高めるには、それぞれの部下が今、何を学ぶべきかを精査したうえで、業務命令として研修に参加させるパターンがもっとあって良いのではないかと考える。管理職への昇進が叶ったなら、これら対策をとることで、継続的に人材が育つ環境に尽力したいと考えている。
約1,700文字
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昇格・昇進試験に特化した小論文参考書(おススメの2冊)
しっかり学びたい人向けに昇進・昇格試験に特化した、小論文の本をご紹介します。
『小論文の書き方が分かりやすく・具体的に書かれているか』と『昇進に関する模範解答がたくさん掲載されているか』の2点に着目してご紹介します。
文章力を高めたいのか、模範解答(例題)を知りたいのか、ご自身の用途にあった参考書を活用していただけたら。
小論文作成の準備|キーワードの洗い出し
具体的な小論文とするため、必要なキーワードの洗い出しから始めましょう。
以下は、私が考える「人材育成」に関するキーワードです。みなさんも余力があれば自分の手を動かして考てください。
① 言葉の定義を必ず調べる
そもそも、人材育成とは何か?
WEB上には、様々な解釈があったため、改めて調べてみた結果・・・混乱しました。
国や公的機関で明確に定義されていないので、今回は、書籍やWEBで調べた結果『企業が利益を上げるために、社員のスキルを都度更新していくこと、経験を積ませること』と定義することとします。
参考 人材育成の目的
企業にとって人材育成とは、さまざまなリソースを有効的に活用し、人を育てていくことです。
生産性を向上し、利益を最大化するため、人材を企業内の適材適所に配置し、従業員に最大限の能力を発揮してもらうことが最大の目的です。
② 理想の状態をイメージする
次に、理想の人材育成が実践されると、どうなるのか?イメージしてみます。
端的にいえば、職場に優れた部下が溢れる。優秀な部下は、主体的に動く、そして何をしなければならないか、部下の方が上司より、よくわかっている。求めるべきものを部下のほうから教えてくれる。といった所でしょうか??
以前読んだ『仕事は楽しいかね2』では以下のように定義されていました。
優秀な部下とは
1.優れた部下はそこそこの出来に甘んじたりしない。
2.上司が困っていると、彼らはすぐ助けに来てくれる。頼む必要などない。
3.有能な部下は、自分に対して極めて厳しい。彼らに指導は必要ない。ただよくやったと褒めるだけで良い。
4.優れた部下は、自分のしたことは自分で責任を取る。
5.良い部下がいれば、後ろを振り返る必要がない。彼らがしっかり見ていてくれる。
6.優れた部下は、問題が起きたり混乱している時にこそ、素晴らしい力を発揮する。
7.良い部下は情報を明確にする。専門用語を並べて話したりせず、選択肢をきちんと提示する。
8.優秀な部下は、いろんな可能性を示してくれる。
③ 現実をイメージする
人材育成がうまくいかないと何がマズいのか?なぜ成長しない人が出てきてしまうのか、少し考察してみます。
成長できない人の特徴とは??
1.成長するという意欲がない。努力をしない
2.自分で相違工夫する習慣がない(指示・マニュアルがないと動けない、考える習慣がない)
3.周りの環境が良くない。ぬるま湯で、手本となる人がいない(いなかった)
4.成長できるような仕事を与えられたことがない
5.難しい仕事をしたことがない(経験が不足している)
6.素直じゃない。特に中高年に顕著
7.OJTはしても、OFFJTはしない。ましてや、自宅で自己啓発に取り組むことは絶対にない
8.自分が何が得意で何が不得意か、自己分析ができてない
9.成長する為に何をするべきか、わかっていない
④ 余力があれば、マイナス要因も考えておく
マイナスの要素特になし。
強いて言えば、専門性の高いスキルは、その職場でしか必要ではないため、異動すると『死にスキル』になる可能性がある。
⑤ 具体的な解決方法をイメージする(メモレベルでOK)。
成長するには、職場で学ぶ、自宅で学ぶ、自己啓発等のアプローチがある。
①~⑤までをまとめて、現実問題として、人材を育成していくためには…
◎給料が支払われる勤務時間内での学ぶことはあっても、支払われない自宅で学ぶ人はほとんどいない
◎学ぶ意欲の醸成が何より大切で、これができれば勝手に人は育っていく
独力で学ぶキッカケを与えること
◎「成長できるような仕事」を「成長できそうな人」に割り振ること
◎外部研修を職務命令として参加させる。参加させた社員に、職場内の講師をさせる。記憶の定着が一番高いのは、書く事でも、読むことでもなく、教えることだから。
上記の対策を取ることが、職場の人材育成に寄与するのではないかと仮定して、小論文を作成していく。
まとめ
学校のテストとは異なり、昇進・昇格試験は、その勉強方法や手順を誰も教えてくれません。
職場の親切な上司や先輩に聞けば、ふわっとしたアドバイスをくれると思いますが、注意してください。
その方法は、その上司や先輩が『たまたまうまくいった方法』に過ぎません。鵜呑みにすると、失敗します。
少なくとも、タイムロスをすることになります。
多くの人は、昇格試験・昇進試験に合格するための学習プランをメソッド(手順)として確立できるほど、多くの受験経験は有していません。
加えて、受験者である『あなた』と『その上司・先輩』は、経験もスキルも違うので、同じ学習計画をたてても、結局、うまくいきません。
合格するために必要なのは、『合格までのロードマップ』には、何があって、自分が何を対策しなければならないかを、把握することです。
昇格・昇進試験に、志望動機の提出や筆記試験(択一式)、面接なども課されていて、何をやったら良いか、よくわからないという方向けに昇進・昇格試験全体のロードマップに関する記事も用意する予定です。
皆さんの成功を祈っています。