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解答例文つき 昇進・昇格試験(論文編)| 管理職としてチームをどうマネジメントしていくのか?

『管理職の業務の中心といえば、マネジメント』という認識をお持ちの方は多いのではないでしょうか?

『マネジメント』の本質とは「ヒト・モノ・カネ・情報を上手くやりくりする」であり、非常に抽象的で、かつ幅のある概念です。

解釈によっては、あらゆることが、マネジメントの範疇になります。

昇進・昇格試験、特に管理職試験では、このマネジメントについて様々な角度から、繰り返し問われることになります。

(係長や主任の昇進・昇格試験でも、部下や後輩をどう支援し、盛り立てていくかといった視点からマネジメントが問われます。)

昇進・昇格試験を受ける前に、マネジメントついて本質的な理解をしておく必要があります。
もし、自力でイメージができないなら、自分の直属の上司がどのような範囲の仕事をしているかを改めて確認しましょう。

その上で、自分の組織で求められているマネジメントの範疇を理解・把握するのが一番確実です。

今回は、昇進試験で頻出テーマである「マネジメント」について、小論文の書き方と、参考文例をお示しします。

繰り返しになりますが、志望動機・面接でも何らかの形で「マネジメント」ついて聞かれる可能性が高いので、論文試験が課されていない方も、自身の考えを整理しておくことをおススメします。


小論文作成の準備|キーワードの洗い出し

地に足の着いた具体的な小論文とするため、必要なキーワードの洗い出しから始めましょう。

以下は、私が考える「マネジメント」に関するキーワードです。

みなさんも余力があれば自分の手を動かして考えてみてください。

① 言葉の定義を必ず調べる

マネジメントの定義ですが、具体を挙げるとプロジェクトマネジメント・チームマネジメント・ストレスマネジメント等々いっぱいあり過ぎて困る・・・。

例えば、以下のように3つの類型にマネジメントを整理することができます。

siba

端的にマネジメントを表現すると・・・
マネジメント=組織におけるヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源を効果的に活用することで、組織の成果を最大化すること』と言えると思います。

定義が広すぎて、小論文が書きにくいと思った方、大丈夫です。

昇進試験の小論文は、レポートではありません。

網羅的にマネジメントについて取り上げる必要はなく、自分が打ちやすいボールだけ打てばいいのです。小論文を書くときにはポイントを絞って書きましょう。

ちなみに、マネジメントがテーマなのに、認識不足でリーダーシップとごっちゃにしてしまう人が、時々います(私も面接で、完全に混同した受け答えをしました・・・。)。

この間違いは、試験官に勉強不足が露呈してしまうので、極力避けたいところです・・・。私と同じような恥ずかしいミスをしないためにも、併せてリーダーシップについても確認しておくことをおススメします。

② 理想の状態をイメージする

  • チーム員に不安がない、迷いがない、安心感がある

  • 全体のプロジェクトの進捗が手に取るようにわかる(全員で共有)

  • 作業にロスがない、ボトルネックがない、流れるように進捗していく

  • チーム員全員が、適切な目標を設定し、それを達成する

  • その結果、生産性が向上する(投入する時間に対して、成果が大きくなる)

  • 残業がなくなる

  • チーム内でスキルの共有が進む、知識の継承が進む

  • マニュアル化が進む

③ 現実をイメージする

  • 前任者の引継ぎが不十分で不安、どうすればいいの?

  • 誰が何をやっているか不明?

  • フォロー体制皆無、病気で休んだら休んだ本人の負担が増えるだけ。誰も手伝わない

  • どこの作業工程がボトルネックになっているかよくわからない。非効率な作業の結果、残業だけが増える。

  • 形骸化している人事評価とその面談。誰のための面談??

  • それぞれの社員が掲げる個人目標が抽象的。数値目標でもないし、明確な行動目標でもない。

  • マニュアルはあるけど、適切にメンテされていない。そしてメンテしても評価されない。

  • 残業のせいで、マニュアルのメンテをする暇がないという、本末転倒な理屈が横行。

  • チーム内でスキルの継承や共有皆無。優秀な人はどんどん優秀に、ダメな人はどんどんダメに。二極化していく。

④ 余力があれば、マイナス要因も考えておく

過剰なマネジメントの弊害は・・・・
上司がスケジュールや目標を押し付けると部下のモチベーションが下がり、やらされ仕事になってしまう。
部下の主体的な意思を、チームの目標にマッチさせないといけない。

⑤ 具体的な解決方法をイメージする(メモレベルでOK)。

チームマネジメントのフォロー体制とスキルの共有(人材育成)、チーム全体で使うマニュアルやアクセス・エクセル、ローコードツール(kintone)等で作業を自動化した人間をもっと評価するしくみ、ここら辺がターゲット。

小論文 解答例文

小論文を作成するにあたっての論理構成

作成するにあたっては、先ほど準備した①~⑤の材料を組み合わせて、論理的な文章を構築します。論理展開としては以下の順番がおススメです。

  1. 用語の定義

  2. 現状(どんな課題があるか)

  3. 理想

  4. その為に何をするのか

模範解答 管理職として職場をどうマネジメントしていくのか?

マネジメントとは、『組織におけるヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源を効果的に活用することで、組織の成果を最大化すること』と定義されている。

概念が非常に多くの分野をカバーするものであるため、今回の論文では、チーム員を適切にフォローし、モチベーションを高める事によって、成果を最大化する『チームマネジメント』に着目して論じることとする。

1.現状

チームによる成果を最大にするには、メンバーである個々人がレベルアップすることはもちろん、チーム内で情報やスキルを満遍なく共有し、継続してチーム全体がレベルアップしていくような取り組みが必要である。

その観点から、現状の課題として私が認識しているのは以下の3点である。

(1)メンバーのスキルに大きな偏りがある(場当たり的に研修を受けている)

(2)個人が掲げる事業目標が抽象的(仕事をしても、しなくても達成できる目標になっている)

(3)経験の浅い社員の自立を助けるような、マニュアルやプレゼンのテンプレートが不足している

2.対応

それぞれの課題への対応策を以下に示す。

(1)計画的な人材育成(適切なスキルアップと研修計画の設定)

わが社における、OFFJTに目を向けると、若手社員向けのオフィスソフトの活用研修から、学会参加による専門知識の習得まで、非常に多岐に渡る、研修・学びの場が提供されている。

一方で、社員の参加傾向を見ると、『法改正があって、どうしてもその情報を把握しておかなくてはいけない』又は『プロジェクトを進める上で、必要な情報を得なければならない』等、真に切羽詰まった状況であれば、これらの参加率が高まるものの、重要ではあるが、重要であるが急ぎではない場合については、参加率が低い状況となっている。

これでは、場当たり的な知識しか得られず、社員が担当する分野のエキスパートへ成長することは、見込めない。

研修への参加にこのような傾向がある理由の1つは、業務担当者が必要性を判断し、その出席を決めているためである。

目の前の実務をこなすことに注力している担当者任せにすれば、重要であっても緊急性の低い分野への研修参加の優先順位が低くなることは、やむを得ない。

この状況を改善する1つの方策として、管理職が事前にチームとして有しておくべきスキルや育てておくべきスキルを把握し、誰にそのスキルを学ばせるか(場合によっては維持継続させるか)、スキル面での人材育成計画の設定してくことが必要であると考える。

例えば、コミュニケーションツール・広報プロモーションツールとして動画編集のスキルが有効であると重要視されている。

将来的には、部署に1人以上の動画編集者が必要であると予測されることから、人材育成スケジュール(誰に、動画編集のスキルを持たせるかを整理)を作成し、業務命令で、あらかじめ動画編集研修を受講させておくなど、業務レベルにスキルを追つかせるのでなく、スキルが先行して、その後ろを業務レベルが追いかける形にするべきではないだろうか。

(2)人事評価制度を活用した、明確な目標設定とフィードバック

人事評価に際して、わが社では毎年4月に係員は上司と面談の上、目標設定することになっており、期中にその進捗の確認、年度末に、結果を評価し、そのフィードバックを行うこととしている。

過去の私もそうであったが、若手係員の目標設定には、抽象的な内容となることが多い。

例えば、『〇〇に配慮する』、『適切な情報伝達を心がける』、『〇〇知識の向上を図る』、こういった目標を掲げる係員の心理の本質は、どういった目標を設定すればよいか分からないという認識の不足である。

加えて、誤解を恐れず踏み込んで言えば、自信の欠如と達成できなかった場合の責任回避という側面が多少なりともある。

こういった抽象的な目標が設定されると、明確な物差しがないため、達成したかどうかの評価ができず、適切なフィードバックができないので、結果成長できないという悪循環に嵌ってしまう。

この問題を解決する方策は、2つあり、1つはたとえ目標が未達成であっても、チャレンジした行動に対しては正当に評価がなされることをあらかじめ部下に伝えること。

もう一つは、目標の設定を可能な限り数値化すること、それができないのであれば、実際の行動回数(例えば、月に1回レポートを作成するなど)を目標として設定することをルールとするなどが揚げられる。

これら2案とも、実際の現場に定着させるには、面談を通じて管理職が1人1人の部下にその必要性を説いていくことが重要であると考える。

(3) 暗黙知を形式知に(マニュアルの整備・プロモーション用のプレゼン資料のテンプレート作成)

わが社では、新入社員にはフォローする先輩社員が1対1でメンターとしてつくという制度があり、知識・経験が少ない新入社員でも、遠慮せず疑問点を相談できる体制が敷かれている。

しかしながら、こういったフォロー体制を必要としているのは新入社員だけでない。

例えば、2年目以降の経験の浅い若手、知識・経験の乏しい異動者(中途採用組含む)については、周りから、多少の助言・フォローはあるものの、独力の業務達成が求められている。

独力で仕事を進めていくにあたっては、過去の資料を探したり、前任者やベテラン社員に詳細を確認し、悩みながら進めていく形になりがちだが、この悩む時間や過去資料を探す時間は、完全に無駄である。

この無駄な時間を解消する1つの方策として、例えば、ベテラン社員には業務と並行して、作業のマニュアル化、実施回数の多いプレゼンのテンプレート化に取り組ませることなどが必要である。

彼らが有している暗黙知を形式知に変換し、それをチーム員全員に共有できる環境を整備してくべきであると考える。

恐らくこれまで、業務の標準化が進まなかった理由の1つは、人事評価の目標として、マニュアル化やテンプレートが掲げられる頻度が低かったこと(上司からベテラン社員への促しが充分でなかったこと)も要因の1だと考えられるので、面談などを通して、マニュアル化等の作業が、目標設定され、それが高く評価される環境を作っていきたい。

管理職への昇進が叶ったなら、まずは上記3つの具体策をもってチームを適切にマネジメントしていきたいと考えている。

(文字数2,300字)

siba

その他テーマの解答例文が気になる方はこちらのリンクからどうぞ


昇格・昇進試験に、志望動機の提出や筆記試験(択一式)、面接なども課されていて、何をやったら良いか、よくわからないという方向けに昇進・昇格試験全体のロードマップに関する記事も用意する予定です。

ご参考にしていただければ。

皆さんの試験が上手くいくことを祈っています。

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