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解答例文つき 昇進・昇格試験(論文編)|企業としてSDGsにどう取り組むべきか?

SDGsが、昇進・昇格試験に出題されるの?と先日ご質問をいただきました。

その可能性は、あります。

現時点では、SDGsは皆さんの業務にどれくらい影響していますか?

業種によって、様々といったところでしょうか?

未来がどのようになるのかを予測して、その舵取りができる人間を、組織は上位の職に付けたいと考えます。

国がアクションプランを立てて、予算を組んでいる以上、どのような業種もSDGsを完全に無視して活動することは難しいです。

無視する=機会損失になる可能性が高いからです。

このトレンドは、SDGsの目標達成年度である2030年まで、当分続きます。

これは100%確定している未来です。

SDGsは、その対象とする範囲が広いため、その概念を端的に表現することが難しいテーマです。

昇進・昇格試験に特化して考えると『SDGsとは何なのか』と、『自分の会社・自分の部署はどの分野に関連が深いのか』をしっかり把握しておく必要があります(この記事で、どの分野を中心に理解しておけば良いかを解説します)。

私見ですが、小論文よりも、トピックの1つとして面接や筆記で「SDGsについて、どう考えますか?」と質問される可能性が高いかなと思います。

今回は、SDGsとは何かと、企業でSDGsを実践しようとした場合、どういった手順で取り組むべきかについて、参考文例をお示ししたいと思います。


小論文作成の準備|キーワードの洗い出し

地に足の着いた具体的な小論文とするため、必要なキーワードの洗い出しから開始しましょう。

以下は、私が考える「SDGs」の関連キーワードです。

みなさんも余力があれば自分の手を動かして考えてみてください。

① 言葉の定義を必ず調べる

国の解説ページが大量にあります・・・あり過ぎて理解が逆に難しいくらいです。
1番シンプルなのが外務省が概要ページです。

リンク JAPAN SDGs Action Platform | 外務省 (mofa.go.jp)

ここで、SDGの17の目標&169ターゲットを確認しておきましょう。

日本では、既に対応できている分野が多数あること、一方で不十分なところも、結構あることが理解できれば、それで十分です。

ドイツのベルテルスマン財団と持続可能な開発方法ネットワーク(SDSN)が共同で発表した 2019 年の報告書においては、

日本は、SDG4(教育)及び SDG9(イノベーション)については達成度合いが高いと評価される一方、

SDG5(ジェンダー)、SDG12(生産・消費)、SDG13(気候変動)、SDG17(実施手段)については低いと評価されています。

このボリュームたっぷりのSDGsの中で、昇進試験で関係するのは、以下のとおりです。

企業活動に直結する『優先して取り組むべき分野(8分野)』や『ステイクホルダーとしてのビジネス』に関係する分野です。

リンクSDGs 実施指針改定版(首相官邸 SDGs推進本部)に詳細が掲示されています。

以下に抜粋します。

SDGs 実施指針改定版(優先8分野)抜粋
①あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
②健康・長寿の達成
③成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
④持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
⑤省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
⑥生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
⑦平和と安全・安心社会の実現
⑧SDGs 実施推進の体制と手段

SDGs 実施指針改定版(ビジネス分野)抜粋
それぞれの企業が経営戦略の中に SDGs を据え、個々の事業戦略に落とし込むことで、持続的な企業成長を図る。
・ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントのために、包摂的かつ公正な労働市場を促進する。
・企業への SDGs の浸透は一定程度進んできたが、中小企業への更なる浸透が課題。今後は中小企業でもSDGsを取り組むことが不可欠。
・ビジネスと人権、責任あるサプライ・チェーン、企業の社会的責任に関する取組は重要。
・政府は、企業の SDGs に資する取組の促進を行う。

② 理想の状態をイメージする

SDGsが達成された場合、どのような状況がもたらされるのか?想像しています。

  • 企業ブランドの向上(販売増、優秀な人材の採用増)

  • SDGsに取り組むことで、ビジネスチャンスの増加(新たな会社、公官庁、大学などとの連携増)

  • 企業内の人材活性化(女性登用の増⇒女性が昇進したいと思う会社に変化⇒社員に優しい会社に)

以上のようなことが、実現できそうです。

③ 現実をイメージする

次に、今現在、SDGsを進めていくことの阻害要因を想像してみます。

  • SDGsが理解されていない。知らない社員が多い⇒このままでは、ボトムアップで良いアイディアが生まれない

  • 環境保全活動の一環として、見られがち。ISO14001やCSRと混同。これらと何が違うのか?

  • SDGsと企業活動がリンクしていない。個々の事業にSDGsの視点での評価が必要。SDGsと目標設定がリンクしていない。

  • 既存事業に無理やりSDGsを当てはめているだけ。

  • SDGsをやっている、やっていないの2元論での評価。貢献度の評価軸が抜けている。

④ 余力があれば、マイナス要因も考えておく

  • SDGsの取り組み。ちょっとやってもSDGs達成、いっぱいやってもSDGs達成。なんだかおかしい。量と質による評価がないと、社内に根付かない。やってる・やってないの評価だけだと、上手くいかない。

  • 通常やっている事業が、そもそもSDGsに大きく貢献しているケース(例えば、社内基準で法律よりさらに高い、化学物質の使用量の制限規定がある場合等)と、新たに、SDGsに寄与しようと、事業に目標や制限を設定した場合では、組織の負担が全然違う。深くやることと、広くやること、どちらも大切だが、評価基準があいまいだと、広くやること(SDGsの分野を広げること)は、なかなか進まない。

⑤ 具体的な解決方法をイメージする(メモレベルでOK)。

理想と現実のギャップをどうすれば埋められるのかをイメージします。

この解決策の部分は、ヒト・モノ・カネ・時間の4つに絞って考えると思いつきやすいです。

  • 何をどうやるかが決まっていない。具体的なアクションプランがあってもいい

  • 個別の事業(既存事業)とSDGsがリンクしていないので、紐づけないとダメ

  • 新規事業を実施する際の、評価基準にSDGsの何の目標にどれだけ貢献するかを追加

  • 電気自動車の導入、SDGs的な観点で見れば購入のハードルが下がるのでは?

  • 女性の管理職、国がゴリ押しなので、やるべき??個人的には、適性が高いものが性別に関係なく評価されるべきだと思うけど。

  • やれという号令だけでは多分進まない、各部門の自主性に委ねていてはダメ。ISO14001のように、外部監査等が入らないとダメかも。外圧を上手く利用する。

小論文 解答例文

小論文を作成するにあたっての論理構成

作成するにあたっては、先ほど準備した①~⑤の材料を組み合わせて、論理的な文章を構築します。論理展開としては以下の順番がおススメです。

  1. 用語の定義(今回はSDGs)

  2. 現状(どんな課題があるか)

  3. 理想

  4. その為に何をするのか

解答例文 SDGsを実現するには何をすべきか?

SDGsについて、国の予算規模を確認すると令和3年度当初予算政府案、令和2年度補正予算の総額は約6.5兆円となっている。

達成期限である2030年に向けて今後も、この増加傾向が続くと考えられる。

この社会情勢を最大限に活かし、我が社のSDGs推進指針に基づき企業としてさらに成長するために、取り組むべきことを3つの視点①社員の意識改革と現状分析(可視化)、②新規事業の意思決定プロセスにSDGs視点の反映、③その具体例、から論じることとする。

1.社員の意識改革と現状分析(可視化)

SDGsの視点をより多くの事業活動の中に取り込んでいくためには、ボトムアップで各部門(生産部門、管理部門、営業部門等)が既存事業・新規事業に関わらず、SDGsにどう貢献できるか、何ができるかを洗い出し、その実現に取り組むことが求められる。

そのためには、まずは社員1人1人がSDGsを理解し、自分の担っている業務がSDGsに寄与できるのか、若しくは既にSDGsに寄与しており、更なる改善の余地があるのかどうか、しっかり分析する必要がある。

現時点で、SDGsについて正確な知識を有している社員の数は、まだ多くはない。

その結果、経営方針の中で、組織としてのSDGsへの貢献が掲げられているものの、実務者レベルでは、自部署の業務・自身の担当業務とSDGsとの関連が十分にイメージできていない。

まずは、SDGsの知識を向上されるような研修(職場研修)を、実施し、社員のSDGsに対する知識を向上させること、そして、既存の業務をSDGsの視点から、再評価する必要がある。

具体的には、事業一覧に整理されている各事業について、次の3つの視点の評価項目を追加してはどうかと考える。

①その事業がSDGsのどの分野・どのターゲットに関係するのか、

②その事業をSDGsの視点から改善する余地はあるのか、

③どの程度SDGsに寄与する(寄与している)事業なのか、

これらの項目を設けることで、既存事業とSDGsをリンクすることができ、企業全体としてSDGsのどの分野にどの程度貢献できているのか(又は将来貢献できそうか)、又はどの分野が弱点なのかが可視化できるようになると考える。

2.新規事業の意思決定プロセスをSDGsの視点で評価

既存事業をSDGsにリンクすることができたなら、次の段階は新規事業実施の意思決定基準の1つにSDGsへの貢献を設定することが有効ではないかと考える。

現在、わが社の新規事業の事業計画では、顧客像、顧客に提供できる価値、自社の優位性、市場規模、ビジネスモデル、マネタイズモデル、社会的な意義、これらの要素からその事業の必要性を評価し、新たな事業を開始するか否かの意思決定がなされている。

この意思決定のプロセスにSDGsの視点を組み込むことを提案したい。

具体的には、SDGsにどの程度寄与する事業なのかを、事業の評価要素として組み込み、新規事業を実施するか否かの意思決定の判断基準の1つにすることが挙げられる。

3.その具体例

最後に、1及び2で述べた取り組みを通じて、どのようにSDGsへの寄与が具体化されるかについて示す。

例えば、社用車は、未だその大部分が、ガソリン車かハイブリット車であり、電気自動車は、コスト面から導入するに至っていない。

社用車の購入計画事業に、SDGsの視点を組み込むことができれば、電気自動車購入のハードルをさげられるのではないかと考える。

電気自動車の購入は、目標7や13に寄与する。

目標 7:エネルギーをクリーンに、そしてみんなに

目標13:気候変動に具体的な対策を

実際に事業を再検討する上では、コスト面と環境への影響(二酸化炭素削減量)を定量化し、比較検討することが不可欠ではあるが、SDGsの視点を事業実施の判断基準に組み込むことで、今ではなく、未来に投資するという観点から事業実施を検討ができるのではないかと考える(事業実施のハードルが下がると考える)。

これら、3つの取り組みを進めることで、ボトムアップでSDGsに寄与する事業が生まれやすい企業体質に変えていけるのではないかと考える。

約1,500文字

siba

 その他テーマの解答例文が気になる方はこちらのリンクからどうぞ


国のSDGsアクションプランが難しすぎる件

SDGsは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」について知った風な口ぶりで書いてきましたが、私もこの記事を書く時点では、ほとんど知識がありませんでした。

記事作成に先立ち、国のホームページで「SDGsアクションプラン2021」を見てきましたが、カタカナ英語が頻発していて、何が書いてあるのか、意味不明で心が折れました。

難しいことを小難しく書くことは誰にでもできます。もう少し、かみ砕いて伝える努力があってしかるべきかと。

ちなみに、国のアクションプランの3ページ目だけでこんなに、たくさんの横文字が出てきます・・・

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ダイバーシティ、バリアフリー、Society5.0、デジタルトランスフォーメーション、ESG投資、ディーセントワーク、科学技術イノベーション(STI)etc。

まとめ

学校のテストとは異なり、昇進・昇格試験は、その勉強方法や手順を誰も教えてくれません。

職場の親切な上司や先輩に聞けば、ふわっとしたアドバイスをくれると思いますが、注意してください。

その方法は、その上司や先輩が『たまたまうまくいった方法』に過ぎません。鵜呑みにすると、失敗します。

少なくとも、タイムロスをすることになります。

多くの人は、昇格試験・昇進試験に合格するための学習プランをメソッド(手順)として確立できるほど、多くの受験経験は有していません。

加えて、受験者である『あなた』と『その上司・先輩』は、経験もスキルも違うので、同じ学習計画をたてても、結局、うまくいきません。

合格するために必要なのは、『合格までのロードマップ』には、何があって、自分が何を対策しなければならないかを、把握することです。

昇格・昇進試験に、志望動機の提出や筆記試験(択一式)、面接なども課されていて、何をやったら良いか、よくわからないという方向けに昇進・昇格試験全体のロードマップに関する記事も用意しています。

ご参考にしていただければ。


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