11月20日は恵比寿講(おいべすこう)です。
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右手に釣り竿を持ち、左脇に鯛を抱えているこの方は、七福神の恵比寿様です。
恵比寿様は商売繁盛の神様ですが、漁業や農業の神様でもあり、私の地域では「おいべす様」とか「おいべっさん」と呼び、恵比寿講のことを「おいべすこう」と言ってお祀りしています。
商売の神様の恵比寿様は、店内の目立つところで、福笹や熊手などの縁起物と一緒にお祀りされていますが、縁の下を支える農業の場合、恵比寿様を食器棚の奥などで、つつましくお祀りします。
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旧暦10月は神無月で、神様達は出雲大社に行かれるのですが、恵比寿様は留守番役です。そこで、神無月も終わりに近づいた11月20日に、いつもは他の神様の目につかないような場所でお祀りしている恵比寿様を明るい場所にお出しして、他の神様達の留守中の労をねぎらう恵比寿講を行います。
お供えするのは、「お桜ごはん」「甘酒」「米粉をたくさんつけたお餅」、「葉つき大根」、「尾頭付きの鯛」、 「水を入れた器の中で泳いでいるメダカ」です。
お桜ごはんというのは、お米に醤油と塩と酒を加えて炊き上げたご飯で、静岡県の西部、遠州地域に伝わる家庭料理です。地味ですが、醤油味が美味しくて、学校給食にも出る子供たちにも人気の御飯です。
お餅には白い米粉をたくさんつけます。お桜ごはんを食べて、甘酒を飲んで、口直しにこのお餅を食べると、白い粉が口にたくさん付きます。これが大切で、戻ってきた神様達に恵比寿様が「私達がいない間は、きっと、ごちそうをたくさん食べさせてもらっていたんだろう。」と問い詰められたときに、恵比寿様は米粉で白くなった口の周りを見せて、「めっそうもありません。何も食べていないので、口の周りが乾燥して、白いカビが生えてしまいました。」と言うそうです。農家の恵比寿様は、少し弱い立場でありながらも、ユーモアがあり、機転をきかせることができる神様なのです。
ごちそうを食べて満腹になった恵比寿様が、食べすぎで苦しまないように、消化吸収を助けるように大根もお供えします。
大根を葉付で、鯛を尾頭付きでお供えするのは、豊作の祈願と、丸ごと全体でバランスがとれているという「一物全体(いちぶつぜんたい)」の考えによると思います。日本の食は神代の時代からマクロビオティックです。
私たちに地域では、さらに水の入った器の中にメダカを入れてお供えします。理由はよくわからないのですが、「身土不二」の考えを反映させているようにも思うし、大きな鯛を抱えている恵比寿様に対して、「うちの魚はこんなに小さいんです。恵比寿様が釣っているような大きな魚がとれるようにしてくださいよ。」と、切なる願いを込めているのではないかなとも思います。
絶滅危惧種となってしまったメダカですが、しあわせ野菜畑の農場の横の水路には、まだ泳いでいます。メダカが減ってきたという話を聞いた時には「そうなると、恵比寿講の時に困るよなぁ」と思ったものでした。いつまでも、恵比寿様にメダカをお供えできるような環境を守っていきたいものです。
遠州のソウルフード「お桜ごはん」の作り方
(材料) 米3カップ、醤油大さじ3、酒大さじ4
(方法) 普通に米をといで、醤油、酒を加えてから、分量分までの水を加えて軽く混ぜて炊くだけです。
・水の量が少な目だと焦げますが、醤油味のおこげが、またおいしいです。
・家庭によって味付けは差があり、みりんも入れたり、醤油の量をもう少し多くする家もあります。
「11月20日は恵比寿講(おいべすこう)です。 」
第1版 2024年10月 日発信
オーガニック農園 株式会社 しあわせ野菜畑
代表 大角昌巳
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