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まずいみかんとおじいさんの話

昨日、初回訪問となった患者さん。いわゆる自他ともに認めるヤクザ者で、周囲から排除されつづけて当外来に辿り着きました

書類に関連した役所とのトラブルで、なんと訪問診療導入が1年以上延期され、昨日、ようやく初回訪問になりました。

もっと上手く生きろよと思いながらも、自分を保とうと懸命に社会に反発する「クソジジイ」な姿は少し羨ましくも思います。将来、自分もそんな姿でも生きられる社会であってほしいと願っています。

担当したケアマネジャーさんが素晴らしく、誤魔化さず、逃げない姿勢に患者さんも(口では悪口ばかりですが)全幅の信頼を寄せているように見えます。以前は、訪問者が来ると鍵を閉めて警察を呼ぶようなこともありました。

動けなくなったら終わり。寝たきりは虫けら・・・。そう思って頑張ってきた人間が、少しずつそこに近づいているという地獄です。情けない、早く死にたいと会うたびに下を向きます。具体的なスケジュールまで出してきたこともありました。これは危険なサインでした。

しかし、なぜか私とは相性が合うようで、通院は中断せずにここまでやってきました。糖尿病のコントロールは「そこそこ」にこの患者さんの生活イメージとバランスがどのようなものかを手探りに探しながらの毎回の診療です。

これまで交代したケアマネさにんやデイサービスと職員とのコンフリクトの回数は両手でも数え切れません。

一人暮らしですが、最近ではヘルパーさんが訪問してくれて、会話も増えたと言います。近所の民生委員さんが声を変えてくれて、この間は「まずいみかん」をもらったと笑って喜んでいました。

そういえば、先日、公園の有効活用で意見交換した自治会長さんのエリアですし、近くには暮らしの保健室もあります。近くには地域包括支援センターもあり、来週の地域包括ケア会議にて事例報告するつもりです。

幸手と杉戸のセーフティネットは実に豊かです。支援を強いることなく、まずいみかんも持ってきてくれます。

ケアリングコミュニティは私自身を助けてくれています。

最後に彼の携帯に連絡先の電話番号を短縮ダイヤルで登録して使い方をお伝えしました。

難しいからわかんねえ、電話する前にどうせ死ぬんだからいいよと笑って私たちを見送ってくれました。

また次回、喧嘩しに行きたいと思います。

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