#1 偉そうな芸術
芸術とは何か、という問いに対して何と答えるのが正解なのだろうか。
わからないとか正解とかはないとか、そんなのはつまらないと私は思う。
もし、これをいま読んでいるあなたが、それ以外の答えをしたなら、それだけで私はあなたのことを敬愛する。
以前、私はとある博物館に赴いた。
どこか生を感じる青い蝶や醜い色をしたラフレシアの標本。今にも死んでしまいそうな小さな魚。いろんな形の命がそこにはあった。
その中でも一際、命を魅せたものがあった。それは、カニの画だった。
緻密に描かれたそれは、鮮やかな赤を基調とした、それでいて静謐な雰囲気が漂っていて、これぞ芸術だと思った。そのカニの画の説明をここに引用する。
彩色細密画
モノクロ写真が一般だった時代には、科学的かつ美術的魅力に溢れた細密画が多く描かれた。採集後すぐに色や形が変化してしまう生物の場合は、描くことは時間の勝負だった。
あぁ、なんと素晴らしいのだろうと思った。大切に保存された標本よりも、今目の前で生きている生き物よりも、なによりも、生を感じたのだ。これこそまさに芸術だと思った。
あなたにとっての芸術とは何だろうか。きっと人それぞれだろうが、絶対に答えはあるのだと私は確信している。
芸術に答えがないなんていう芸術家は偉そうにしているだけだ、と雑誌を読みながら、私は思った。
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