
【絵本】「木のすきなケイトさん」 H.ジョゼフ ホプキンズ
「木は、ケイトのともだちでした。」
「木のすきなケイトさん」 H.ジョゼフ ホプキンズ
キャサリン・オリヴィア・セションズ
よび名はケイト。
ケイトは幼い頃から、自然の科学に興味を持っていました。
学校で一番好きな授業は、雨や風など天気のこと。人間や動物のからだのしくみ、木や草花についてでした。
とくに
木が大好きでした。
ケイトは森にいると、のびのびとして、しあわせでした。
森では葉っぱを集めたり、葉っぱと花といっしょに編んでネックレスやブレスレットを作って遊びました。
木は、ケイトのともだちでした。
木が大空にむかってぐんぐんのびたり、お日さまの光をあびようとして、いっぱいに枝を広げるすがたが大すきなのです。
この絵本の表紙とこのくだりの絵が同じなのですが、とても素敵な絵なんです。
森の中に寝そべって木や空を眺めている姿は、木や森がなくては生きられないくらい、ケイトは木が好きなんだっていうのが伝わってきます。
絵本の副題に「砂漠を緑の町にかえたある女のひとのおはなし」とありました。実在した人物で、実際にあったお話なんですね。
「砂漠の町を緑にかえた」とは、どういうことなんでしょう。
ケイトの子ども時代のアメリカの女の子は、手の汚れることをしてはいけないとしつけられていたんです。
でも
ケイトは森の中で遊んで、いつも手がよごれていました。
また
当時ほとんどの女の子は、科学の勉強などしなくていいように言われていたそうなんです。だけど、ケイトは科学の勉強が好きでした。
大学まで進み、顕微鏡で土や昆虫の観察をし、植物について世界中の木について学びました。
1881年にケイトは、はじめての女性の科学者としてカリフォルニア大学を卒業しました。
卒業後、ケイトは働くことになりました。
はじめての仕事は、学校の先生でした。
ケイトは南カリフォルニアのサンディエゴという町に行きました。
船が港に着いたとき、ケイトは息をのみました。
そこは、砂漠の町だったのです。
そう
ケイトの好きな木という木がほとんどなかったのです。
サンディエゴのほとんどの人たちは町の公園でさえも、あそこに木が育つはずがないと考えていました。
ケイトはサンディエゴでも、木は育つと考えました。
木が好きなケイトは先生を辞めて、園芸家になりました。
ケイトは世界の木について学んでいたので、サンディエゴの土地にあう木を町中に植えたのです。
ケイトは砂漠が持ついのちをはぐくむ力を知っていました。
10年もたたない内にサンディエゴのいたるところで、木はぐんぐん成長していきました。
サンディエゴの町の公園で、博覧会が開かれることになりました。ケイトは親しい人たちに頼みます。
「公園で木をたくさん植えますから友だちをつれてきてください。」
そして
博覧会会場の公園に、たくさんの木が植えられました。
しだいに
博覧会会場の公園は、緑でいっぱいになりました。
博覧会は大成功に終わりました。
博覧会は1年の予定が、2年まで延長されるほど好評だったそうです。
博覧会後、ケイトは数々の賞が贈られ
「バルボア公園の母」と呼ばれました。
砂漠だったサンディエゴは、今では、
緑いっぱいの美しい町になっています。
もしもケイトがいなかったら、サンディエゴは砂漠の町のままだったかもしれません。
たった1人の「好き」が町を変えてしまいました。
「好き」ってすごい力です。
もちろん、最初は小さな力だったと思います。
ケイトの行動にまわりの人たちが影響され、すごく大きな力に変わったんでしょう。
まずは想像、それから行動
そして
好きという力が積算され、奇跡は起こるのです。
以前読んだ絵本「ハチドリ」の話や「半日村」もこのようなお話でしたよ。
いずれも1人の行動から周りの人たちへ思いが伝わり、その思いと行動から奇跡が生れるお話でした。
【出典】
「木のすきなケイトさん」 H.ジョゼフ ホプキンズ BL出版