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「読書力」 斎藤孝

「読書は人間の幅を広げ、器を大きくする。それは、優れた他者を数多く自分の心に持つということだ。」



「読書力」  斎藤孝



僕は小学生のころ、本を読むのが苦手でした。


読書感想文を書くのが本当に嫌だったんです。


おそらく読むことを強制されたり、著者の意図を求められたり、自分の思ったように本を読めなかったことが、苦役になっていたのだと思います。


そこから好きな本を自由に読むようになって、いつのまにか本を読むのが好きになっていました。 


でも


自分自身、読書家かと言われるとそうではありませんし、読むスピードも遅い方です。


ただ、自分がおもしろそうだな!と思う本を手にとって、活字を目で追っていくことが、とてつもなく好きなんです。


今回、斎藤孝さんの読書力とは何か?というのと、読書にどのような効用があるのか?というのを知りたくて、この本を読み始めました。


そうすると


自分は、ただただ本を読み流していただけだったと思い至り、「読書」の深さ・「読書」の効用・楽しみ方を新たに知ることとなりました。本を読むことがますます好きになりました。


まず、斎藤さんは憂いています。


それは


本を読まない若者が、増えているということ。


本を読む、読まない、は自由でありますが、斎藤さんの経験から言いたいことは、自身の思考力の重要な部分を読書がつくってきたということ。


それほど読書が物事を考える上で、重要だと言うのです。


逆に言えば、「本を読まないともったいない!」ということなのでしょう。


読書は思考活動における素地をつくるものだ。 


その上で斎藤さんが設定する「読書力がある」という基準が、


「文庫百冊・新書五十冊を読んだ」 


というもの。


僕も偏った読書をしているなぁ……とこの本を読んで反省しているのですが、幅広いジャンルの本をたくさん読むことによって、次のような効用があるのです。


現実的に言って、内容のある本をたくさん読んでいる人間は、ある程度の知性があると想定しうる。

その知性の中には、物事に対する判断力や向学心、広い意味での倫理観といったものが含まれる。

本を大量に読めば自己形成がすべて保証されるというわけではもちろんない。

しかし、本から学び、そこからコミュニケーションが発展していく意味はとても大きい。


判断力や倫理観、あとコミュニケーション力など、社会に入ってからとても重要なことが、読書によって培われるのです。


もっと端的に、斎藤さんは読書の効果を次のように語っています。


「本はなぜ読まなければいけないのか」という問いに対する私の答えは、まず何よりも「自分をつくる最良の方法だからだ」ということだ。


なぜ、幅広い読書が必要なのかは


読書の幅が狭いと、一つのものを絶対視するようになる。教養があるということは、幅広い読書をし、総合的な判断力を下すことができるということだ。

目の前の一つの神秘にすべて心を奪われ、
(この前にオウム真理教の例を出して自己形成の問題を書いています。)冷静な判断ができなくなる者は、知性や教養があるとは言えない。


まだまだ、読書の効果はつづきます。


たとえば、あなたが失恋したとします。


「どうして自分だけが、こんなに辛い目に合うんだろう」


まわりをみると、みんな笑顔で幸せそうに見えるし……街ではカップルが仲良く手を繋いでいる。


こんなとき、同じ経験をした人の本を読むことで慰められ、唯一絶対という思いから離れることができるのです。


「自分だけが悲惨なのだ。周りの者は自分のような境遇はわかりはしない」と、周りの狭い世界だけを見て決めつけると、精神的に追い込まれてくる。

自分と同じどころか、より辛い運命にさらされた人がいる、そして、それを乗り越えて生きているということを知るだけで、活力が湧いてくる。


本を読むことの最大の魅力は、疑似体験ができるということでしょう。


僕は高校生の頃、司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』を睡眠時間を削って夢中で読みました。


すごく影響を受けた作品であり、また坂本竜馬を通して幕末の時代にタイムトリップし、激動の瞬間を体感しました。


斎藤さんは、語ります。


経験していないことでも私たちは力にすることができる。


そして


想像力を豊かに育てることができるのです。


この想像力こそいろんな場面で役立ち、また道(人生)を踏み外しそうになったとき、軌道修正してくれるものではないかと思いました。


本の良さは、イマジネーションを育てるところにもある。単に知識を得るだけではない。

言葉から映像や音、匂いなどを想像する力は、優れて人間的だ。この極めて人間的なイメージ化能力を、読書は鍛えてくれる。


あと、読書の技能として得たことがあります。


それが、本に線を引きながら読むこと。


三色ボールペンを使って、


「おもしろい」

「まあ大事」

「すごく大事」


と感じたところを色分けして線を引いていくことで、本の要旨や理解がさらに深まっていくそうです。


あとで読み返してみても、自分が重要に考えているところがわかりますし、まさに、自分をつくる最良の方法なんですね。



【出典】

「読書力」  斎藤孝  岩波書店


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