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2024年11月 第67回感染管理抄読会の紹介
2024年11月の感染管理抄読会で取り上げた論文の紹介です。
今回のテーマは、呼吸用防護具のフィットテストとフィットチェックの有効性に関するシステマティックレビュー論文でした。
論文タイトル
Effectiveness of fit testing versus fit checking for healthcare workers respiratory protective equipment: A systematic review
医療従事者の呼吸用保護具のフィットテストとフィットチェックの有効性:システマティックレビュー
書誌情報
International Journal of Nursing Sciences 10 (2023) 568-578
https://doi.org/10.1016/j.ijnss.2023.09.011
この論文を選択した理由
防護マスク装着の際、きちんと目的を考えてフィットチェックを行ってマスクを装着できていたか少し自信がなく、今後装着の際にも活かせると思ったことと、フィットテストとフィットチェックに関する正しい知識を得たいと思い、この文献を選択しました。
抄録
目的:呼吸用保護具は、医療従事者(Health Care Worker, 以下HCW)の空気感染リスクを最小限に抑えるために、医療において非常に重要である。特に、微粒子フィルター付き呼吸用保護具および同等の呼吸用保護具(Respiratory Protection Equipment, 以下RPE)を適切に装着し、顔面の密閉性を高めることが大切である。今回、HCWのRPEに対するフィットテストとフィットチェックの有効性を比較することを目的とした。
方法:2003年1月から2022年4月までのフィットテストvsフィットチェックに関する文献を、EBSCO Host、Cochrane Library、EMBASE、PubMed、およびOvid電子データベース経由のMEDLINE、およびgrey literatureを使用して特定した。研究プロトコルはPROSPEROに登録した(登録番号:CRD42020213968)。
結果:561の論文のうち、25の論文(22の量的研究と3つのガイドライン)を対象とした。RPEの有効性を評価する上で、フィットテストがより効果的で、広く採用され、信頼できる方法である。呼吸保護プログラムは、RPEの効果を最大限にするために、フィットテストとフィットチェックの両方を含むべきである。COVID-19の流行によって、フィットチェックとフィットテストに関するHCWの知識不足が浮き彫りとなり、適切な教育がRPEの有効性を高めることとなった。
結論:HCWの安全を確保するためには、フィットテストとフィットチェックの両方を実施することが不可欠である。教育、フィットテストおよびフィットチェックを、訓練を受けたフィットテスターが運営する包括的な呼吸保護プログラムに統合することが推奨され、臨床現場において求められていることである。
抄読会を終えての感想
今回の文献はシステマティックレビューで、抄読会では久しぶりに取り上げる研究デザインでした。「よくわかる看護研究論文のクリティーク」を読んで、システマティックレビューのプロセスなどについて勉強し、当日はディスカッションでさらに詳しく実際の研究方法について学ぶことができました。
文献の内容としては、フィットテストとフィットチェックの両方の役割を改めて学ぶことができましたが、プロトコル資料にはバイアスのリスク評価を実施したことは記載されていますが、どのようなバイアスがあり、それらをどのように評価したのかについては記載されていないことや、レビュー対象文献のクライテリアが厳密に記載されていないこと、レビューの目的が曖昧であるためPICOをより明確にするべきであるという意見もありました。
ディスカッションでは参加者が所属している医療施設でのやり方について意見を共有することができました。フィットテストとフィットチェックを行う必要性と、それらを現場に浸透させることの重要性を学ぶことができました。
(大学院生 F.A.)