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2024年2月             第61回 感染管理抄読会の紹介

感染管理抄読会の文献とディスカッション内容の紹介です。

論文タイトル
Quantifying the Hawthorne effect using overt and covert observation of hand hygiene at a tertiary care hospital in Saudi Arabia
サウジアラビアの三次医療病院における手指衛生の公然および密かな観察を使用したホーソン効果の定量化

この論文を選択した理由
現在高齢者施設で行っている研究で、直接観察者がいることにより手指衛生遵守率が向上するというホーソン効果が見られたので、他のホーソン効果の研究の方法論や結果の解釈の仕方などが気になり選択しました。

書誌情報
American Journal of Infection Control
DOI:https://doi.org/10.1016/j.ajic.2018.02.025

抄録
背景:人間による手指衛生の直接観察は手指衛生遵守を測定するためのゴールドスタンダードだと考えられているが、ホーソン効果により、その正確さが疑われている。
目的:様々な専門分野、病院環境、手指衛生の適応における手指衛生遵守を公然および密かな直接観察を利用して比較すること。
方法:横断研究は2012年10月〜2013年7月にサウジアラビアのリヤドにあるキング・アブドゥルアズィズ・メディカル・シティの28ユニットで行われた。遵守は、手指衛生の適応(機会)においてWHOの5つのタイミングのうち1つに、(アルコール手指消毒薬による)手擦りまたは(流水と石鹸による)手洗いを行うことと定義された。公然の観察は習慣的に手指衛生観察を行っている感染予防専門家によって実施された。密かな観察は一時的に雇用され認識されていない、専門的に訓練された観察者によって実施された。
結果:合計で15883機会が公然の観察で観察され、7040機会が密かな観察で観察された。全体の手指衛生遵守は公然および密かな観察でそれぞれ87.1%と44.9%であった。著しい過大評価が全ての専門分野、病院環境、手指衛生の適応で見られた。
結論:公然および密かに観察されている手指衛生遵守には全てのカテゴリーでかなりの違いがある。ホーソン効果の影響を最小にするために直接観察の方法論を改善するにはさらなる研究が必要である。

クリティーク・ディスカッションを終えての感想
今回の論文は、サウジアラビアの1000床を有する大規模な病院で行われた研究で、「手指衛生の公然および密かな観察を使用したホーソン効果の定量化」という非常に興味深い内容でした。文章も読みやすく、背景や研究方法も比較的詳細に書かれていたのですが、いくつか疑問が残る部分(密かな観察の観察方法や観察者間の一致性の指標であるκ係数の算出方法、解釈しがたい図表や数値が一部示されていること)もありました。特に考察では、なぜ今回の結果に至ったのかという点についてホーソン効果と絡めた議論があまりされておらず(算出方法が不明確な過大評価の値だけが示されていた)、今回得られた結果から何が言えるのか、何に活かせるのかということが分かりにくいという意見が挙がっていました。
今回の抄読会で、“結果を活かした考察”を意識することが大切であると学び、自身の研究を他者に伝える際に参考にしたいと感じました。また、クリティークしながら論文の疑問点も共有してディスカッションすることができ、今回も大変勉強になりました。

(担当 C.S)


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