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新型コロナウイルスワクチン効果についての論文をクリティークしました

今月も、Zoomで抄読会を開催しました。COVID-19の第4波、緊急事態宣言発出の中、医療従事者や高齢者へのCOVID-19ワクチン接種が始まりました。臨床試験ではワクチンの効果が90%以上と言われています。今回紹介する論文は、実社会での大規模医療データからワクチン効果について検証した論文です。

論文の情報

”BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting”  N Engl J Med 2021; 384:1412-1423 DOI: 10.1056/NEJMoa2101765 IF:74.699 (2020)、雑誌ランキング2位

論文の概要(抄録)

背景:世界中でCOVID-19のワクチンキャンペーンが大規模に開始されている。ワクチンの有効性は、コントロールされていない環境で多様な集団に対して、さまざまな結果について評価する必要がある。イスラエル最大の医療機関のデータを使用して、BNT162b2mRNAワクチンの有効性を評価した。


方法:2020年12月20日から2021年2月1日までの期間に新たにワクチンを接種したすべての人を、人口統計学的および臨床的特徴に従って、ワクチンを接種していない対照者と1:1の比率でマッチさせた。アウトカムは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への感染の記録、症候性Covid-19、Covid-19関連の入院、重症化、死亡などであった。各転帰に対するワクチンの有効性は、Kaplan-Meier 推定量を用いて、リスク比から 1 を引いた値として推定した。

結果:各研究グループには596,618人が含まれた。1 回目の接種後 14~20 日目および 2 回目の接種後 7 日以上経過した時点での試験結果に対するワクチンの推定有効率は,以下のとおりであった。文書化された感染では46%(95%CI,40~51)および92%(95%CI,88~95)、症候性Covid-19では57%(95%CI,50~63)および94%(95%CI,87~98)、入院では74%(95%CI,56~86)および87%(95%CI,55~100)、重症化ではそれぞれ62%(95%CI,39~80)および92%(95%CI,75~100)であった。Covid-19による死亡予防の推定有効率は、初回投与後14~20日目で72%(95%CI,19~100)であった。感染が確認され、Covid-19の症状があると評価された特定の集団における推定有効性は、年齢層を問わず一貫していたが、複数の疾患を併発している人では有効性が若干低くなる可能性があった。

結論:全国的な集団接種のセッティングで行われたこの研究は、BNT162b2 mRNAワクチンがCovid-19に関連する幅広い症状に有効であることを示し、この結果は無作為化試験の結果と一致している。

論文の背景を知る

・発表では、mRNAワクチンの作用機序、イスラエルのCOVID-19感染状況やワクチン接種状況も説明していただきました。
・論文をクリティークする際、研究が実施された国の政治・医療体制や文化を理解することも、とても大切です!

研究手法、論文の書き方、すべてが参考になる論文

・統計学的手法、データの示し方が分かりやすい:結果をパーセンテージで示しており、発生率の少ない疾患を対象として効果を評価するための方法として比較しやすく、インパクトのある方法である。
・ワクチンの効果は臨床試験で有効性が示されているが、一般的に健康な人を対象に実施されている。一方、今回の論文は、年齢や併存疾患など幅広い人を対象に、大規模データを用いて効果を検証しており、一般化が可能であり意義のある研究である。

論文の評価

【論文の評価:A】理由:研究方法がしっかりしている。追加資料も多く、交絡の評価もきっちりされている。

【臨床活用度:A】理由:ワクチン接種の効果を説明するときの参考資料になる。

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