第39回感染管理抄読会:COVID-19ワクチンのブースター接種について
2021年11月の感染管理抄読会で取り上げた論文です。
選定理由:新型コロナワクチン接種の3回目について日本で検討されるようになり、9月中旬に3回目の追加接種(ブースター接種)を実施する方針が決定したことから、3回目の効果、安全性について知りたいと思い選んだ。
論文タイトル:Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel(イスラエルにおけるCOVID-19に対するBNT162b2ワクチンブースターの防御)Bar-On YM, Goldberg Y, Mandel M, Bodenheimer O, Freedman L, Kalkstein N, Mizrahi B, Alroy-Preis S, Ash N, Milo R, Huppert A. N Engl J Med. 2021 Oct 7;385(15):1393-1400. doi: 10.1056/NEJMoa2114255.
論文の概要
背景:2021年7月30日、イスラエルでは少なくとも5か月前に2回目のワ クチン接種を受けた60歳以上の人に対してBNT162b2メッセン ジャーRNAワクチン(Pfizer-BioNTech)の3回目(ブースター) 投与が症承認された。コロナウイルス2019の確認された割合や 重症化率に対するブースター接種の効果についてのデータが必要である。
方法:2021年7月30日から8月31日までの期間で、60歳以上で少なくと も5か月前に完全に予防接種を受けた(BNT162b2の2回投与) 1,137,804人に関するイスラエル保健省のデータベースより抽出 した。一次分析では、12日以上前にブースター注射を受けた人 と受けていない人のCOVID-19確定率と重症化率を比較した。二 次分析では、ブースター接種から4~6日後の感染率と少なくと も12日後の感染率を比較して評価した。すべての分析で交絡因 子を調整した後、ポアソン回帰を使用した。
結果:少なくともブースター接種12日後、感染が確認された割合は、ブース ター群が非ブースター群に比べて11.3(95%信頼区間10.4~12.3) 低く、重症化率は19.5(95%信頼区間12.9~29.5)低かった。二次分 析では、ワクチン接種後少なくとも12日以上経過した時点で感染が確 認された割合は、4~6日経過した時点での割合に比べて5.4(95%信 頼区間4.8~6.1)低くなった。
結論:60歳以上で、少なくとも5か月前にBNT162b2ワクチンを2回接種した 人を対象とした本研究では、BNT162b2ワクチンのブースター(3回 目)を受けた人はCOVID-19の確認と重症化率が大幅に低いことがわかった。
ディスカッションの内容・感想
イスラエルは全世界においてコロナワクチン接種が進んでおり、3回目接種の結果もすぐにまとめられ発表されていることにまず驚いた。3回目ワクチン接種を行うことで感染したとしても重症化するリスクは低いことがわかり、3回目接種の有効性について最新の知見が得られた。しかし、初めての研究に対しての信頼性や結果の解釈などを理解するのが難しかった。イスラエルの情勢について詳しく知らないまま論文を理解しようとしてしまったが、海外の論文を読み解く際は、研究内容や結果だけを理解しようとするのではなく、その国の背景や文化、人種のことを知ることでより理解できるようになることを学ぶ機会となった。
(A.I.)