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スタバでMacBookを開いている人

バイトの休憩が1時間あって暇ができたので、なんとなくスタバ、略さずに言うとスターバックスコーヒーという有名なカフェに行った。ただし、ここでスタバを略さず言う必要は全く無い。

スタバの自動ドアが僕を感知して、僕が店内に入るためにわざわざドアを開けてくれた。なんて現代は人に優しくできているのだろう。自動ドアに感謝の意を心の中で唱えて、店内に足を踏み入れる。楽しげなBGMが耳に流れ込んできた。よく聞いてみると、クリスマスっぽいソングだった。歌というより、ソングだった。別に、深い意味は無いのだけれど。僕の鼻にはコーヒーのほろ苦い匂いが漂ってきた。さすがカフェだ。みんなコーヒーじみた飲み物を飲んで、ぽわぽわしたソングを聴きながら、何かしらの作業という名の、暇つぶしをしに来ているのだろう。ここで暇つぶしと言ったのは、特に深い意味は無いけれど、何となく、暇つぶしだろうなぁって僕が勝手に思ったからだ。

クリスマス限定の「クリームブリュレラテ」という飲み物をお姉さんに頼んだ。髪が長めの黒髪パーマイケメンの店員さんが僕のクリームブリュレラテを作ってくれるようだ。「ブリュレ」というからには、ガスバーナーを取り出して、ブォーって僕のクリームラテを火傷させて、クリーム"ブリュレ"ラテに進化させるのかと思い込んでいたが、そうでもないらしい。茶色の粉をパラパラと上にかけるだけだった。いや、別に、ガスバーナーであぶられなかったことに僕は怒らない。寧ろ、火事とか火傷とかそういうことを考慮すれば、賢明な制作工程に思える。

僕のクリームブリュレラテちゃんを大切に持って、店内に席を陣取る。よし、授業で扱う小説を読もう。

スタバで小説を読む人はかっこいい。
なんとなく、そんなイメージがある。人生に余裕がありそうだからだ。たとえ、人生に余裕が無くても、スタバで小説を読むだけで、人生に余裕がある感が出せると僕は信じている。それをしたところで、一体、誰にどんな効果が出るのかはわからないけど、いや、誰にどんな効果も出ないだろうけど、人生に余裕がある感を出したいという自己愛だと思う。そんな自分が好き。それだけ。

それと同じように、スタバでMacBookを開く人もかっこいいと思っている。それは、別に人生に余裕がある感とはまた違う、ピシッとしたイメージを醸し出せる気がするのだ。そして、僕が座った席から見て目の前に、ピシッとしたイメージを醸し出している人がいる。例のごとく、MacBookを開いているのだ。ただ、僕がいつも店の外からふと見える「スタバでMacBookを開いている人」と違うところは、僕が座った席からMacBookの画面が見えるということだ。他人のパソコンの中身なんて、見るべきでは無い。僕はそんな当たり前のことは承知していることを皆さんが承知の上で聞いてほしいのだが、僕の席からどうあがいても、その人のMacBookの画面が見えてしまうのだ。

最初に見えて"しまった"のは、文字まで読めなかったけど、おそらくWordの画面だった。ああ、流石だ。流石「スタバでMacBookを開いている人」なだけある。お仕事をするのだこの人は。やっぱり僕のイメージは正しかった。ピシッとしているんだこの人は。

ただ、次に見えて“しまった”時には、Wordの画面ではなく、LINEの画面だった。それも、明らかに仕事とかでは無い、プライベートのLINEだった。そう判断した理由は、カラフルなスタンプを乱用していたからだ。仕事の相手に送るにしてはあまりにもカラフルでカジュアルでカヴェニャックだった。(?)(自分で言っておいてなんだが、カヴェニャックって懐かしすぎないか?)(世界史選択の人なら伝わるはずだ)まあ、とりあえずめちゃくちゃプライベートのLINEをしていた。いや、MacBookでやる必要ないやん。スマホでできるやん。なんならスマホの方が楽やん。って思った。スタバでMacBookを開く人は所詮その程度のものだ。挙げ句の果てには、韓国ドラマを観てた。

だからといって、僕はスタバでMacBookを開く人を嫌いにはならない。

スタバでMacBookを開く人は、スタバでMacBookを開くのが好きなのではない。スタバでMacBookを開く自分が好きなのだ。スタバで何かしらの作業という名の暇つぶしをしているとはそういうことだろう。スタバで何かしらの作業をしている風に見せかけている自分が好きなのだ。みんな、好きな自分に近づこうと努力している。僕もそのうちの1人であるし、そうであり続けることは良いことのようにも思われる。

クリスマスなソングと、キラキラした照明、スターバックスなコーヒーと、しおりが挟まれた小説、LINEのトーク画面のMacBook。その全てが、自分を好きになるための舞台であり、小道具であり、おもちゃである。ありがとうスタバ。

それにしても、クリームブリュレラテは、ガスバーナーでブリュレしてない割には、ちゃんとブリュレだった。粉をかけただけなのに、所々カリカリした食感を楽しむことができたし、10人中3人は「これはブリュレだ」と認めるくらいのブリュレだった。もちろん僕はその10人のうちの7人の方なのだけれど、美味しかったので全然許せる。逆に、この魔法のブリュレパウダーの特許を取った方がいいのでは!?とスタバに訴えようか1ミリくらい迷うほどだ。

ふと、このブリュレパウダーも「スタバでMacBookを開いている人」と同じだなと思った。

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