『暗黒大陸という伏線』
ハンターハンター選挙編。ネテロが没したことによって行われた大規模な次期会長選挙は、様々な伏線と無数の新キャラクターを登場させ、ゴンとジンが出会うという漫画の目的を達成するある意味最終回ともいえる話だった。
しかし、その章の最後においてゴンは世界樹と呼ばれる樹上でジンから衝撃の事実を告げられる。
「オレ達が知ってる『この世界』は、とてつもなく大きな世界のほんの一部だってことにな」
それは当時連載していたジャンプ漫画、トリコを思わせるほどに広大な大陸の存在が明かされた瞬間でもあった。
これを知った当初、タイミング的に「グルメ界のパクリ」といった声が相次いだ。だが、本当にそうだろうか。
わたしはそれは違うと思う。しっかりとした設定はなくとも、漠然とした布石はあった筈である。
『証拠その① 飛行機械の不在』
作中において、大陸の移動などに用いられる運航手段は全て飛行船や気球である。だがオートマライゼーションは進んでおり、特にこと電脳関係においてはむしろ現実世界を上回っている節すらある。当初はこれを何となく受け入れていたが、作中には戦闘機の存在や核ミサイルといった飛行する機械の存在が随所で出てくる。これは矛盾ではないかとも言われていたが、暗黒大陸の存在が明かされたことでこの意味を理解することが出来た。そもそも、長距離を移動できる飛行手段が制限されていたのだと。そしてそれを成し遂げているのが【渡航許可庁】なる存在。それこそが、ある意味でハンター協会以上の権力を持つ国連機関である。彼らはある種の国連である大国の連合であるⅤ5が権力を集中させた存在であり、その把握する情報は下手をするとハンター協会を上回っている可能性すらある。否、明かしていない手札があると言った方が正しいだろうか。
『証拠その② 地図におけるアフリカ大陸の不在』
画像の地図はこちらのハンターミックスさんからお借りしたものである。
このサイトはハンターハンターの情報を多岐に渡って網羅しており、その正確さ、細緻さにおいては公式本などよりも遥かに信用度は上である。
さて、上記における国家には当然モデルが存在する。
ベゲロセ連合国……イギリス
サヘルタ合衆国……アメリカ
オチマ連邦……ロシア
ミンボ共和国……インド
クカンユ王国……フランス
カキン帝国……中国
ピクシブでの近代五大陸の記事によれば上記の国家がそれぞれモデルとなっているであろうとのことであるが、ここで今一度地図を見直してもらいたい。……そう、アフリカに該当する国家が一つとしてないのである。それは別に黒人主体の国家がないと言っているわけではない。ただれっきとしてそれが存在しないことが事実であり、それが暗黒大陸の存在を暗に示していた証左でもあるとわたしは考えている。
現実世界において、かつてアフリカ大陸はその広大さと煩雑さから暗黒大陸と呼ばれた。それは広大なサハラ砂漠の向こうにある土地に、無数のロマンと危険を同時に感じたわけでもある。夢のない話をすれば、現実世界におけるアフリカは未だヨーロッパの庭としての側面を持ってはいる。だがここで見て欲しいのは、かつてアフリカに人類が抱いた幻想と等しいものがハンターハンターの世界においても語られているということである。
『まとめ』
未だ到着すらしていない暗黒大陸。そこにおける超ハイリスクは33巻において語られている通り、人類が全滅してもおかしくないほどのモノである。だが、それを踏まえても尚求めるハイリターンが存在するのも確かであり、船に乗っているメンバーは現状物語において登場した人物においても幸か不幸か最高峰の実力者ばかりである。願わくば、蟲毒のように潰しあうのではなく、互いに協力する道筋を。そう願わずにはいられない。