コラム『これまでのHUNTER×HUNTER』①
2022年10月17日。約3年11ヶ月ぶりにいよいよ連載再開となるHUNTER×HUNTER。
今回はいつもの考察から外れて、折角なのでこれまでのHUNTER×HUNTERの内容を個人的な考えに沿いつつまとめてみることにしました。間違いなくそれなりの量となりますので、読みやすさも含めて数回に分けてのコラムとなります。ご了承ください。
ハンター試験編前半
物語の始まりとなる旅立ちの章。
くじら島×船の上×最初の試験
ここでは主人公であるゴンが登場し、彼が住む島から出たいこと。そして彼の父親であるジンの存在が仄めかされ、その旅立ちと彼がハンターになろうとした動機が描かれます。
過去におけるゴンは本編における快活さとは程遠く、年齢相応の幼さと芯の弱さを仄めかせております。この点は、後に再会することになるここで出会ったカイトとの関係も含めて非常に重要なポイントですので覚えておくと面白いです。
さて次なる話では、後にメインメンバーとなるクラピカとレオリオが登場し、真っ先に揉めるという展開があります。
ここで語られる「その人を知りたければその人が何で怒るかを知れ」というゴンの言葉は、本編におけるキャラクターの考察を深める重要なキーワードとなります。
そしてハンター試験というものが、そもそも試験会場へたどり着くことも含めたものであることも、ここで説明されます。個人的にはやはりレオリオが怒った理由が彼の人となりを知るうえで非常に重要な話となっておりますので、これを機会にぜひ原作を読んでみてください。
道のり×2択×魔獣
船でのいざこざを含めた旅路を終え、一行は会場があるザバン市へ繋がるドーレ港へたどり着きます。たまに勘違いしている人がいますが、着いた場所はザバン市じゃないです。そしてザバン市へ向かうバスは試験の一種となっており、会場へ向かうどころか1台も到着しないという初歩的な罠となっております(なお約1名はそのまま乗ろうとした模様)。
この辺面白いのが、自己紹介と喧嘩、そして人助けを経てそれなりに打ち解けたとは言っても、レオリオとクラピカにはゴンを警戒するライバル視のようなものがあったりします。それはそれとして素直なレオリオの人柄が可愛いです。
ちなみに現時点で言及しているのはたった3話です。実はHUNTER×HUNTER、じっくり読めば読むほど密度が物凄い漫画だったりします。特に序盤、読者を掴むためにしている何重もの要素は後にこの漫画を不動の人気漫画へとしていきます。
さて、なぜ3話に言及したかというと、読者にとって印象的な『ドキドキ2択クイズ』がここであったからです。
その内容は『大事な存在が2つ。それらどちらかしか助けられないとき、貴方はどちらを助けますか?(意訳)』というもの。ここでレオリオがぶちキレていますが、なぜ彼がここでもまた激怒したのか。その理由は後の試験の際に語られますが、改めて読み返すとどこまでも彼がこの時点で自分を責め続けていたことが見えてきます。
クイズを終えた一行はその後、魔獣凶狸狐による試験に遭遇します。ここで一行のそれぞれはハンターとして重要な“観察力”・“知識”・“人物”といった点をそれぞれ評価されて合格を言い渡されます。この中でレオリオの評価された部分が他の二人と比べてショボいという意見を見たことがありますが、そんなことはありません。むしろ人格破綻者が多いハンター関係者において、まともな感性を持つ人間がハンターになろうとすることは何よりも歓迎することであるのです。これは後々の蟻編や会長選挙編等でも影響してきます。
弱火×試験×湿原
会場へとたどり着いた一行。ここで会場へとつながる秘密のエレベーターがある食堂『ごはん(ハンター文字で書かれてます)』が登場しますが、毎度見るたびにステーキ定食が食べたくなります。
合言葉である「弱火でじっくり」は当時誰もが言いたくなった言葉ではないでしょうか。
そしていよいよ始まったハンター試験。ゴンはそこで出会った同年代のキルアと友人となります。彼は主要人物ではあるものの、ゴンが太陽であれば彼が月であるとでもいうように、終始相棒としての役割に終始します。一種のヒロインとしての要素も担っていますね。これは別段BL的な意味合いではなく、物語における立ち位置になります。無論解釈を進めてその様に理解することをわたしは止めませんが。
ゴン達は到着こそ遅かったものの、試験の優劣は到着の順位ではありません。始まった一次試験は数時間以上のマラソンを強要する『二次試験会場まで試験管に着いていく』というもの。これの面白い部分が、仮に試験管を追い抜いた場合どうなるのかといったところ。実際にはその後に待ち構えるのがタイトルでも言及した湿原ことヌメーレ湿原──別名“詐欺師の塒”であるので、生半可な実力や能力ではそもそも先回りしたところで二次試験の会場へたどり着けなくなっていたりします。
ちなみにですが、例のマラソンは大体4・5時間以上走った上でなお80キロということなのでそのペースが察せられるというもの。体力のみならず、その精神をも削ることを目的とした試験構造となっております。
試験官ごっこ×料理×試験の本質
さて、件の湿原においては、試験開始前に登場した狂気の人物ヒソカの独壇場となります。
彼の価値観において試験を受けるべきではない人間を間引くという通称“試験官ごっこ”が行われ、そこでゴン、クラピカ、レオリオの3人は彼に気に入られます。もちろんそれは彼らへの援助を意味するものではなく、ヒソカという人物にとって〝面白い玩具〟以上の何者でもないのは読み進めるほどに理解が出来ていきます。
またヒソカがここで電話したのは、試験に潜入したキルアの兄──ギタラクルことイルミ=ゾルディックです。ちなみにここ、きっちりヒソカですら発信機を利用している辺り、ヌメーレ湿原がどれほど広大なのかが察せられる1コマとなっています。
そして二次試験ですが、その内容は1次試験とは一転してタイトル通り“料理”となります。ちなみにこちらの試験が行われたのは恐らくハンター協会の管轄下であろうビスカ森林公園。試験官であるブハラとメンチはそれぞれに“最低限の戦闘力”と“未知なものに挑戦する気概”をお題とした料理を用意させようとします。ちなみにこの時受験生が豊作であることにも触れられていますが、とはいえ最初の料理である豚の丸焼きを通過するのに湿原を抜けてきた受験生の凡そ半数が落第しております。
次なる試験は少ない材料から試験内容であるスシを作るというもの……でしたが、ここでトラブルが発生します。それは受験生の一人がこの世界では希少である筈のスシの存在を知っていたこと。またここでスシをお手軽料理とこれに言及した受験生であるハンゾーは言っておりますが、これは何も完全な間違いではありません。とはいえそこにまで言及すると今回の内容が寿エンパイアじみてしまいますので、お寿司の歴史に関しては各自wikiなどをご参照ください。
その後結果として試験内容の性質が異なってしまったこともあり、なんと試験の合格者は驚きの0。試験が終わってしまったのですが、これには流石の受験生もほぼ全員が不満顔。特にヒソカはならばとメンチを襲う気満々だったりします。そこへ現れたのがタイトルでも書いたハンター協会会長であるアイザック=ネテロ。
登場時からして空を飛ぶ飛行船から飛び降りてくるという尋常ではない強さを感じさせる彼ですが、恐らくこの時点での読者の感想は亀仙人みたいな人といった認識でしょう。メンチに対しても内心で乳デケーなとか言ってるぐらいですから。
さあ、そんなスケベもとい会長の諫言もあって試験はやり直しに。その内容は谷へと飛び降り、そこに産卵されたワシグモの卵を1つだけ取ってきてゆで卵にするというもの。
ここで卵が1つだけと指定されているのが、ハンターという職業が決して自然を破壊するものではないことがカイトとの過去編も含めて物語の整合性を知れるよい描写だと思っています。
飛行船×ボール取り×トリックタワー
次なる試験へと向かう飛行船。地味に試験の都度結構な距離を移動しているので、案外協会が所有する土地を試験官に選ばれたハンターがそれぞれ選んで開催していると思われます。
これは3次試験の会場であるトリックタワーがそもそも刑務所であり、その所長を務めるリッポーが試験官であるところからも察することが出来ます。
さて、ですがそんな3次試験の会場へ向かう最中もイベントが発生します。話題はともあれ仲良く話すゴンとキルア二人へ目を付けたネテロ会長が二人にちょっかいをかけ、ゲームをすることとなりました。ここで彼らを相手しようとしたのは会長なりの暇つぶしなのでしょう。この話では会長の尋常ならざる身体能力や身体強度が描写されますが、最大の描写はこういった暇つぶしを求めて自らあちこちへ首を突っ込むといった性質でしょう。そもそも本質的に管理者ではなく冒険を求める人間だからこそハンターをしているのがわかる描写となっております。無論、描写されるのはゴンとキルアの能力も含まれています。なおここでネテロとの勝負をギブアップしたキルアが受験生2名を殺害しておりますが、そもそも試験開始以前にヒソカが受験生の腕を切り飛ばしたりしていますので、受験生同士のトラブルにはハンター協会は一切関わらないことが改めて描写されています。これは極端な話、後に行われる288期のハンター試験がなぜああなったのかの本質も突いています。要するに競合する人間を試験に参加させない、ということも暗に試験へ含まれていたりするのです。ヒソカの試験官ごっこもそのひとつですね。
なおここでネテロ会長がその後登場する概念である念能力を用いていたのではと言われておりますが、それは無いと個人的に断言しておきます。先ほども言いましたが、自らが圧倒的に上である状態でわざわざ“纏”などの技術を用いずともゴンやキルアを圧倒できるのは自明の理だからです。つまり、ネテロ会長は素の身体能力からして化け物であるというのがこの時点で明らかになっています。
これは以降の記事でも言及するかもしれませんが、そもそも念能力は能力によって身体能力を加減することは可能ですが、基礎能力によって増すのは基本的に攻防のみです。瞬発力や視力は上がりません。それらはすべて勘違いとなり、劇中でもそれらの描写はされていません。
登場人物の身体能力が凄まじいばかりに誤解を受けてしまっている要素のひとつですね。
閑話休題。
思わず念能力へと話題が飛んでしまいましたが、ネテロとのゲームを経て本編は3次試験へと到達します。
が、以降については次の考察で述べさせていただきます。来週をお待ちくださいませ(*'▽')
あとがき
久しぶりの長文コラム如何だったでしょうか。
これでもかなり短くまとめましたが、如何せん情報量が多いのでまだ序盤の序盤にも拘わらずこれほどの長さとなってしまいました。
ですがそれだけ面白いのがHUNTER×HUNTERという作品であり、冨樫先生の作品の魅力なのです。
もし原作を読んでない方がいらっしゃいましたら、上記リンクからまずは1巻を購入してみてくださいませ。
また個人的にはこちらのコンビニコミックスもといムック本もお求めやすい価格となっておりますのでおすすめです。
それではまたお会いしましょう。
おまけ
なお最新37巻は11月4日に発売となります。
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