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蛇と川とオクサレさまの物語 『柳瀬川』
ミュージアムで実施する小学生向けワークショップの準備で、アオダイショウを描く。楽しいなあ。蛇を描くのは楽しい。
北海道から九州までメジャーで無毒なこの蛇は、太古から、穀物を食べるネズミを食べてくれるイイ奴として捉えられてきた。繁殖の象徴として縄文土器にも描かれたりしている(石棒もそうかもしれない)。神の使いとされる白蛇は、このアオダイショウの白化(アルビノ)のことだと聞いたことがある。ともあれ、アオダイショウは山奥ではなくいつも人の近くに暮らしてきた。
武蔵野台地の窪地や谷戸(やと)、崖線(ハケ)には湧水地が沢山あり、近くには弁天堂がある。そこに飾られていたのは宇賀神という、頭が人で身体が蛇の神さま。弁天さまと習合し、頭上にトグロをまいている姿もある。蛇は水や川の神さまでもあるのだ。
そう、宇賀神といえば『千と千尋の神隠し』に出てくる「オクサレさま」という神さま。
醜悪な姿と臭いで湯屋の人々の顔を顰めさせたこの神さまは、千によってきれいに洗われて、よきかな、と満足して空に消えていく。その時のお姿は宇賀神のそれだ。
そのことを年配の友人に話したら「オクサレさまは、柳瀬川がモチーフになってるそうだよ」と返してくれた。え、家の近くにある柳瀬川のこと?どういうこと?
聞くに、宮崎駿夫妻が都内から所沢に引っ越してまもなくのころ、散歩中に柳瀬川を通りかかったそうな。下水や粗大ゴミで汚され無残な姿になっていた様子を見かねて、地域の人たちとその川を少しずつ掃除していくことにした。その後、川の水質回復への機運も高まり、近くに下水処理施設も建てられた。今では魚が住み、夏には子ども達が全裸で水遊びするほどにまで回復する。そんな出来事からオクサレさまのエピソードが生まれたのだという。
ほー、最初は何の変哲もないと思っていたこの川にも、そんな物語があったのね。そういや僕はこの川をみて、ここに住みたいと思ったのだ。
柳瀬川は今日も変わらず穏やかで、確かに、よきかな、と言っているような気もする。
ここに越してきてちょうど一年になる。
色んなこともあったけれど、今日も無事に一日終えられて、先ずは、よきかな、よきかな。