二重人格の自分

私の本名は坂本裕太。もう一つの名前は秋野朱裕。

 坂本裕太は意志が弱く、人に流されやすい。すぐ楽な方向へ向かって歩き、努力はほぼしない。その割にどこか一発ぶちかましたいという願望があり、現状の生活に満足していない。それに加え、人からカッコよく見られたい、モテたいという願望もある。見栄を張りたがる。だからか光が当たっている人が好きで、理想で、羨ましがっている。アイドルが好きなのはそのせいか。妄想の中で、坂本裕太は東京ドームでコンサートは100回やっている。SMAPや嵐の一員として。妄想は楽しい。自分の理想を全て実現することができる。簡単に夢を叶えることができる。ただ、妄想から覚めた時は大体虚無感が現れる。やる気に満ち溢れる時もあるが、結局何もせず、現実世界へ。そんなことを10年以上繰り返し、30歳を過ぎた。大学在学中には就職活動はしなかった。サラリーマンにはなりたくないと、スターになりたいと、全くやる気にならなかった。一切努力も行動もしないのに。結局最後は大学卒業して就職してない人を他人からどう見られるかということを想像した結果、叔母に紹介してもらった会社に正社員で就職した。他人からすれば、大した大学を卒業したわけでもなく、就職活動もせずにそこそこ良い会社に入り、給料も人並み以上もらえているこの状況は贅沢だと言われるかもしれない。ただ会社員で定年まで働き、老後の生活をまったり過ごし、人生を終えることは幸せなことだとはどうしても思えない。人類のほとんどが生活するために生きている。僕らは生きるために生まれてきたのか?生きるためだったら生まれる必要あるのか?人類は夢を持って、追いかける為に生まれてきたものだと思ってる。こんなことを思っているのにどうして、どうして行動ができない?頑張らない?結局敷かれたレールから脱線する勇気もなく、生きる不安という壁が立ちはだかって一歩踏み出せずにいる。

 そんな僕は結婚もしたくない。今はできないと思ってる。なぜなら守るべきものができるとリスクを負った挑戦ができなくなるからだ。どうせ挑戦なんてできないのに、可能性を途絶えることはしたくないのだ。独身でさえいればスターの自分をいつまでも妄想できる。正直自分でも困ったもんだと思っている。会社員を卒業してスターになった時には結婚したくなるだろうと予測している。スターになって結婚して自分の子どもに教育する姿も妄想済み。そんなことを言っていたら一生妄想を繰り返し独身のままであろう。ちなみにここで言うスターは自分自身の心が輝いているかということ。

 僕は努力もしない、行動力もない自分を坂本裕太の責任だと押し付け、坂本裕太という人間を見捨てる決断をした。頭がおかしいかもしれないが、坂本裕太という名前で活動するのが嫌になった。そこで秋野朱裕という人間を自分の中に形成した。第2の自分。それは父親が秋野泣虫という名前で詩人を夢みていた、その苗字を受け継いで自分で名付けた。秋野朱裕という名前を使えば何でもできる気がしてきた。現に10年以上妄想しかしてなかった自分が少しずつ行動に移し始めている。ちょっと友達に秋野朱裕で色々と動いているのがバレると恥ずかしいが、それもいつでもバレた時の心の準備はできている。
 
 オンラインでは秋野朱裕、オフラインでは坂本裕太の二重人格を演じている。オフラインで秋野朱裕が出るようになった時、僕はスターになっているはずだ。

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