見出し画像

電子帳簿保存法はなぜわかりづらい? 『即効!電子帳簿保存法対応マニュアル』④

発売3カ月で4刷!経理の現場で大好評の『即効!電子帳簿保存法対応マニュアル』の一部をnoteで無料公開いたします。
第4回は第 1 章 「電子帳簿保存法ってどんな法律?」から第2節「電子帳簿保存法はなぜわかりづらい?」を公開します。

※ 本書は2023 年6 月現在の情報を元に執筆しています。制度の内容などについては、その後変更になる可能性があります。予めご了承ください。


1-3 電子帳簿保存法はなぜわかりづらい?

電子帳簿保存法がわかりづらいのは、以下が原因です。

  • 何度にもわたる法改正で保存を認められる条件が頻繁に変わっている

  • データの作成方法や受渡方法によって、保存を認められる条件が違う

  • なじみの少ないIT用語が使われる

経理の田口さん

田口さん:電子帳簿保存法の本を買って、何度も目を通したのですが、どうにもちんぷんかんぷんです。どんな方針で学習すればわかるようになるんですか?

公認会計士の小田切さん

小田切さん:電子帳簿保存法は、何度も改正されていて、保存を認める条件がその都度変わっているから、現在どうなっているのか、混乱しちゃうよね。それから、データの作成方法や受渡方法によって、保存に認められる条件がそれぞれ違う事がわかりにくい一番の原因だろうな。

わかりづらい原因:1.何度にもわたる法改正

電子帳簿保存法は平成10(1998)年に施行されましたが、その後改正が3回あり、令和元(2019)年からは毎年のように改正されています。改正の都度、電子データでの保存に認められる条件は変わっていますので、電子帳簿保存法に基づいて、これから電子データでの保存を行おうとする事業者には、どの条件を充たせば法律違反にならないのかが、わかりづらくなっています。

わかりづらい原因:2.データの作成方法や受渡方法が異なると認められる保存の条件が違う

電帳法とひとくくりにしていますが、元になるデータをどのように作成しているのか、どのように受渡しているのかによって、電子データによる保存が認められる条件が違います。
この「元になるデータをどのように作成しているのか、どのように受渡しているのか」による分類を電子帳簿保存法では、「電子帳簿保存法上の区分」としています。
「電子帳簿保存法上の区分」は①電子帳簿等保存②スキャナ保存③電子取引の3つに分けられます。
電子帳簿保存法についての説明は、「電子帳簿保存法上の区分」でどの区分の話をしているのか、を意識して読むことが理解のポイントになります。
「電子帳簿保存法上の区分」については、1-6節で詳しく説明します。

わかりづらい原因:3.なじみの少ないIT用語が説明もなく使用される

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿書類を、一定の条件を満たせば電子データで保存することを認める法律です。電子データの保存が認められる条件には技術的な対応が必須となるものもあります。
そのため、EDI、タイムスタンプといった経理担当者にはなじみのないIT用語を使わざるを得ない面があります。

本書の方針

電子帳簿保存法の内容が理解しづらい点について、本書は以下のような構成で、無駄な労力を費やさずに、理解を深められるようにしています。

  1. これから電子帳簿保存法に対応することを考えている方を対象とした解説
    これから電子帳簿保存法に対応することを考えられている方が、過去の改正の経緯を知ることは、ほとんど意味のないことです。そこで本書は、当期から電子帳簿保存法への対応を始める方を対象者としています。本書に記載するのは、「令和5(2023)年4月現在において、電子帳簿保存法で電子データによる保存が認められる条件」です。例外として、令和6(2024)年から適用になるものについては、今後必要となるため、説明を補足していますが、過去における改正については、一切触れていません。

  2. 「電子帳簿保存法上の区分」に従った解説
    「電子帳簿保存法上の区分」にしたがって、①電子帳簿等保存②スキャナ保存③電子取引について、第2章以下にそれぞれ章を設けて、説明します。
    また、上記の①②③の順番で説明している書籍が多くありますが、本書では、対応の容易さ等を考慮し、③①②の順番で説明することにします。
    具体的には、それぞれ以下のように対応しています。

    第2章→③電子取引
    第3章→①電子帳簿等保存
    第4章→②スキャナ保存


    また、第2 ~ 4章では冒頭に「電子帳簿保存法上の区分」を図示し、それぞれの章で学習する区分が明確になるようにしています。

  3. IT用語の詳しい説明
    システム担当業務を行っていない方にとって、慣れないIT用語は見ただけで思考が停止しがちになります。本書では「POINT」としてコラムを設け、IT用語の詳しい説明を行っています。
    電子データから始まって、CSV、XML、PDFなどのファイル形式、また電子帳簿保存法を理解するうえで、知識として不可欠のクラウド、EDI、タイムスタンプについて詳細に説明しています。IT用語に不安のある方は、先に「POINT」に目を通してから、各章を読まれることをお勧めします。

経理の田口さん

田口さん:先生のお話を聞いて、学習の方向性が少し見えてきたような気がします。

目次

第 1 章 電子帳簿保存法ってどんな法律?
 1-1 電子帳簿保存法が適用される事業者は?
 1-2 電子帳簿保存法は何のための法律か?
 1-3 電子帳簿保存法はなぜわかりづらい?
 1-4 電子帳簿保存法に対応して、利益はあるのか
 1-5 電子帳簿保存法に違反するとどのような不利益があるのか
 1-6 電子帳簿保存法で対応すべきことは? 保存対象の書類とは?
 1-7 保存に必要とされる条件はどこで決まる?

第 2 章 電子取引データの保存方法について知ろう
 この章の学習範囲
 2-1 電子取引データの保存制度とは?
 2-2 電子取引に該当するものにはどんなものがあるのか?
 2-3 電子データで保存するための基本要件とは?
 2-4 必要とされる検索機能は?
 2-5 改ざん防止として、必要とされる措置は?
 2-6 電子取引の電子データを保存するにはどんな点に注意すればいいか
 2-7 どんな場合、重加算税の加重対象となるのか

第 3 章 帳簿書類の電子データ化について知ろう
 この章の学習範囲
 3-1 PC等を利用して作成する帳簿について求められる要件は?
 3-2 優良な電子帳簿の要件を満たすのは?
 3-3 マイクロフィルムを用いた保存はどう行うか
 3-4 過少申告加算税の軽減措置を受けるには
 3-5 適用を取りやめるにはどうすればよいのか

第 4 章 スキャナ保存できる書類を知ろう
 この章の学習範囲
 4-1 スキャナ保存対象となる書類はどんなもの?
 4-2 入力で求められる要件は?
 4-3 出力の要件は?
 4-4 検索機能はどのようなものが必要?
 4-5 一般書類・過去分重要書類の取扱いはどうすればよいのか

第 5 章 適格請求書等保存方式との関連
 5-1 適格請求書等保存方式の概要
 5-2 インボイス制度で保存すべきデータは?
 5-3 電子インボイスとは?
 5-4 受領した適格請求書等を電子データで保存するには、どのような対応が必要か

第 6 章 電子データ化、ペーパーレス化の実践ポイント
 6-1 ペーパーレス化するメリットの社内共有
 6-2 段階的ペーパーレス化の検討
 6-3 電子データで保存する書類はどのように決めればよいか
 6-4 会議書類の電子データ化、電子申請による経費精算、電子契約の導入
 6-5 優良な電子帳簿を作成するために、検討すべきことは

いいなと思ったら応援しよう!