企業の基幹業務を支える最新システムの仕組みとオペレーションがわかる『SAP担当者として活躍するためのERP入門』より 第4回 ~SAP社とは~&~SAP社のERPパッケージの種類~
企業の基幹業務を支えるERPを理解するために、SAPの基礎知識からプロジェクトの進め方、ERPの運用に必要な業務知識まで基礎からわかりやすく解説した『SAP担当者として活躍するためのERP入門』から書籍内容を抜粋してご紹介。第3回は第2章「SAPの基礎知識」から「SAP社とは」ならびに「SAP社のERPパッケージの種類」です。
1 SAP社とは
■ERPパッケージ製品で有名なドイツの会社
SAP*社は、ドイツに設立された会社で、企業向けのソフトウェア・パッケージであるERP パッケージを作っている、R/3、S/4HANA で有名な会社です。
1972 年に、当時、IBMのドイツ法人を辞めたエンジニアたちによって創業された50 年以上の歴史のある会社です。
■ERP市場で大きなシェアを持っている
SAP 社は、ERP 市場で大きなシェアを持っていて、世界で430,000 社、日本では推定3,500 社以上の顧客を持ち、世界150カ国以上で事業を行っています(2022 年12 月時点)。
そのため、多通貨、多言語の機能が標準装備されています(図2)。
SAP 社のERP 製品は、1990 年代に日本に入って来ました。また、Oracle*などのSAP 社以外の多くのERP パッケージ提供会社もこの頃に日本にやって来ています。
* SAP……System Analysis and Program Developmentの略、システム分析とプログラム開発の意味。
* Oracle……データベースやERP パッケージなどを提供している会社、およびその製品のこと。
2 SAP社のERPパッケージの種類
■3種類ある
SAP 社のERP パッケージと呼ばれる製品は、大きく分けると、大企業・中堅企業向けのS/4HANA、中堅・中小企業向けのB1とByDesignの3種類があります(図1)。
■大企業・中堅企業向けのS/4HANA
大企業・中堅企業向けのS/4HANA は、R/3 → ECC*→ S/4HANA へとバージョンアップしながら進化してきたものです。ECC では、オンプレミスによる利用が中心でしたが、S/4 HANAは、オンプレミスでもクラウドでも利用できるようになっています。
データベースは、SAP 社が開発した、インメモリデータベースのSAP HANA を利用する形になっています(図2)。
■中堅・中小企業向けのB1、ByDesign
中小企業や中堅企業向けには2種類のERPパッケージが用意されており、1つめがB1(正式名称は、SAP Business One)と呼ばれる製品です。これは、大企業向けのERP パッケージが持っている機能を少し減らしてシンプルにしたもので、使い勝手が良いものになっています。
2 つめは、SAP 社がオンデマンド*で提供する中堅企業向けのERPパッケージ提供サービスのByDesign( 正式名称は、SAP Business ByDesign)です。36 種類のビジネスシナリオが用意されていて、クラウドで利用します。自社に特別な基盤を持つ必要がないため、短期間での導入が可能となっています。
*ECC……ERP パッケージのSAP S/4HANA の1 つ前のバージョンのこと。ERP 6.0 とも言う。
*オンデマンド……サービスの提供形態のこと。ここでは、SAP 社が自社のデータセンターを元に提供するサー
ビスのこと。
書籍目次
第1章 ERPの基礎知識
1-1 ERPとは
1-2 ERPの対象業務と組織
1-3 ERPシステムが提供するもの
1-4 ERPシステムの必要性
1-5 ERPシステムの進化
1-6 ERPが目指す方向
コラム 様々な言語、通貨も使える
第2章 SAPの基礎知識
2-1 SAP社とは
2-2 SAP社のERPパッケージの種類
2-3 SAP社のERPパッケージのコンセプト
2-4 データベースの進化
コラム RPAの活用について
2-5 S/4HANAの種類
2-6 S/4HANAで変わったこと
2-7 S/4HANAの全体像
2-8 S/4HANAの周辺アプリケーション
2-9 ERPパッケージの構成
2-10 ERPパッケージの導入手順
2-11 Unicode
コラム ERPシステムでは自動仕訳は必須
2-12 移行方法
第3章 ERPプロジェクトの進め方を学ぼう
3-1 プロジェクトの進め方(1) 全体の工程
3-2 プロジェクトの進め方(2) スケジュール管理
コラム プロセスを管理する
3-3 プロジェクトの進め方(3) 工程とスケジュールの例
3-4 プロジェクトの進め方(4) 要件定義の進め方
第4章 ERPの開発の仕組みを理解しよう
4-1 ERPシステムを動かすために必要なもの
4-2 開発(1) Add-onの方法
4-3 開発(2) Fiori
4-4 開発(3) ABAP
4-5 開発(4) データベース/SAP HANA
4-6 サーバー機
4-7 SAP GUIによるメニューの作り方
4-8 ABAP開発(1) 基本設計書
4-9 ABAP開発(2) 詳細設計書
4-10 ABAP開発(3) ABAPコーディング例
第5章 社会のインフラの仕組みを知っておこう
5-1 会社組織とは(1) 儲けることと納税義務
5-2 会社組織とは(2) キャッシュを増やすこと
5-3 会社の仕組み
5-4 会社の中の要素と外の人たちの関係
5-5 銀行の役割
5-6 消費税の仕組み
第6章 会社の基本となる業務を理解しよう
6-1 会社全体の仕事の仕組み
6-2 購買・在庫業務の仕組み
6-3 生産(製造)業務の仕組み
6-4 工事・建築業務の仕組み
6-5 販売業務の仕組み
6-6 人事管理業務の仕組み
6-7 会計業務の仕組み
第7章 ERPの運用に必要な業務知識を身に付けよう
7-1 会計帳簿の仕組み
7-2 ツケで売った代金の管理の仕組み
7-3 ツケで買った代金の管理の仕組み
7-4 在庫補充の仕組み
コラム 変更履歴管理について
第8章 ERPの使いこなしのためのヒント
8-1 業務処理を複数のシステムで処理している場合の問題点
8-2 プロセスをデザインする時のポイント
8-3 バッチ処理は少ないほうが良い
8-4 お客様に納期を伝える仕組み
8-5 入金予定日、支払予定日
コラム 請求金額と入金金額が異なる時
コラム 透過テーブルについて
第9章 ERPの保守作業
9-1 保守の手順
9-2 ユーザーの管理
第10章 S/4HANAのオペレーション方法を身に付けよう
10-1 お気に入りの使い方
10-2 SAP GUIの使い方
10-3 Launchpadの使い方
コラム 会計伝票番号について
10-4 卸売業における全体業務フローと各業務プロセス
10-5 購買・在庫業務のオペレーション例
10-6 販売業務のオペレーション例
10-7 会計業務のオペレーション例
第11章 SAPについてのQ&A
11-1 ECCとS/4HANAの違い
コラム ドリルダウン機能について
11-2 ECCからS/4HANAへのバージョンアップ方法
11-3 財務会計と管理会計の違い
コラム 会計監査人もSAPを使う
11-4 仕入れと売上原価、製造原価の違い
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