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図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本(3)

5月20日発売の新刊『図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本』より、一部引用してご紹介します。
第3回は『コラム 画像生成AI から考える創造性』です。

column 画像生成AI から考える創造性

2022年9月に米国コロラド州で開かれたアートコンテストで、「Theatre D'opera Spatial」という題名の絵画がデジタルアート部門最優秀賞を受賞しました。この作品は、ジェイソン・アレン氏が出品したものでしたが、同氏はこの作品が画像生成AIのMidjourneyを使って作成されたものだと受賞決定後に明かしました。この出来事に対して、SNSでは「クリエイティブな仕事が機械に置き換えられる」、「芸術の死を意味する」といった声が上がった一方で、AIが持つ創造性への称賛も集まりました。

そもそも創造性や芸術とは何なのでしょうか? 日本大百科全書によると、創造性とは、「新奇で独自かつ生産的な発想を考え出すこと、またはその能力」と定義されています。では、ジェイソン・アレン氏は創造性という人間の思考や能力を、画像生成AIにすべて代替させたのかというと、実際のところはそうではありません。同氏は、AIに絵画を生成してもらうためのキーワードや文章(プロンプト)の作成に趣向を凝らしており、最終的には80時間を作品作りに費やして、900以上の候補から出品した3作品を選んだと述べています。つまり、アレン氏は画像の生成に必要な適切なプロンプトを作るという点において、人間的な創造性を発揮し、自分の感性をもとに、複数の候補からより芸術性の高い作品を選別しています。そのため、現時点ではAIが人間の創造性に置き換わるとは単純にはいえないのではないでしょうか?

また、注目すべきなのは、AIがまったく何もない状態から画像を生成しているわけではないということです。AIは人間が作った絵画や画像という既存のデータを組み合わせ、人間の指示のもとに、新しいものを生み出しています。この点では、AIは創造性を発揮しているというよりは、人間の英知を集約させて、人間の思考を具体的なイメージに落とし込むという翻訳作業を代替していると説明した方が適切かもしれません。しかし、今後、ジェネレーティブAIによって生成されたデータが増えていき、人間の指示なしにランダムに人間の精神を充実させるような芸術性の高い作品を生成できるようになると、創造性の議論はまた別の次元に向かうかもしれません。

図解ポケット 画像生成AIがよくわかる本

目次

CHAPTER1 画像生成AIのキホン
 1-1 ジェネレーティブAIとは?.
 1-2 ジェネレーティブAIの活用
 1-3 画像生成AIとは?
 1-4 画像生成AIの歴史(1)
 1-5 画像生成AIの歴史(2)
 1-6 画像生成AIの歴史(3)
 1-7 画像生成AIとクリエイターエコノミー
 1-8 画像生成AIによる生産性の向上
 1-9 対話型AIチャットボットのChatGPT
 コラム 画像生成AIから考える創造性

CHAPTER2 画像生成AIサービスの仕組み
 2-1 画像生成AIの仕組み
 2-2 画像生成AIの仕組み
 2-3 日本語に特化した画像生成AI
 2-4 プロンプトエンジニアリング(1)
 2-5 プロンプトエンジニアリング(2)
 2-6 プロンプトエンジニアリング(3)
 2-7 プロンプトエンジニアリング(4)
 2-8 Image to Imageでの画像生成
 コラム 画像生成AIとGPU

CHAPTER3 画像生成AIと著作権
 3-1 著作権とフェアユース
 3-2 画像生成AIに関する著作権の問題(1)
 3-3 画像生成AIに関する著作権の問題(2)
 3-4 画像生成AIに関する著作権の問題(3)
 3-5 画像生成AIに関する著作権の問題(4)
 3-6 画像生成AIに関する著作権の問題(5)
 3-7 AIイラストメーカー「mimic」のサービス停止
 3-8 画像生成AIがもたらす倫理的な問題
 3-9 画像生成AIをめぐる問題への対応
 コラム オープンソースとイノベーション

CHAPTER4 画像生成AIの活用事例
 4-1 活用事例(1):コミック制作
 4-2 活用事例(2):映像制作
 4-3 活用事例(3):ゲーム開発
 4-4 活用事例(4):建築デザイン
 4-5 活用事例(5):インテリアデザイン
 4-6 活用事例(6):広告クリエイティブの作成
 4-7 活用事例(7):自動車のデザイン
 4-8 活用事例(8):医療画像の作成
 コラム 人間とAIが共存するには

CHAPTER5 代表的なサービスとその使い方
 5-1 Midjourney(1)
 5-2 Midjourney (2)
 5-3 にじジャーニー
 5-4 Stable Diffusion(DreamStudio)
 5-5 NovelAI
 5-6 お絵描きばりぐっどくん・AIピカソ
 5-7 TrinArt
 5-8 DALL・E 2(1)
 5-9 DALL・E 2(2)
 5-10 Dream by WOMBO
 5-11 Canva
 5-12 Adobe Firefly
 コラム 一般公開されていない画像生成AI

CHAPTER6 ジェネレーティブAIのこれから
 6-1 画像生成AIから動画生成AIへ(1)
 6-2 画像生成AIから動画生成AIへ(2)
 6-3 画像生成AIから動画生成AIへ(3)
 6-4 様々なジェネレーティブAIの登場
 6-5 視覚メディア生成
 6-6 文書生成
 6-7 音声・音響生成(1)
 6-8 音声・音響生成(2)
 6-9 コード・プログラム生成
 6-10 業界特化の生成AI (1)
 6-11 業界特化の生成AI (2)
 6-12 ジェネレーティブAIが社会にもたらす変化
 コラム ジェネレーティブAIを取り巻く問題

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