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シャニマスアニメ化が難しい理由は全て八宮めぐるが教えてくれた
”あの記事”が目に入るまでの30分。
俺「やっぱ、MVあさひを流しながらViストレイでPLとるの気持ちええ~~」
俺「祝シャニマス5周年のいいねRTキャンペーン0時更新かあっぶね」
俺「ギミマスいいな、やっぱワールプールフールガールズ最高だったな…」
俺「やっぱファンアートいいなぁ……ライブこんな感じだったわ……」
俺「ん、なんだこの記事」
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』は育成ブラウザシミュレーションゲームである。それはつまり、三つしかない選択肢を選んだり揺れ動くバーをタイミングよくタップすることで一人の人間を導いた気になるゲームということだ。
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』への期待と懸念 “実在性”にどう挑む?
「なんなんだよ今度はああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
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はじめまして、炭酸水です。
「あの記事浅いな~~~~」と思ったものの、ココが浅い!って一言で言えなかったので、noteで深掘りします。
なお、この記事はシャニマス総合discordサーバー「SHINY CORD」にてコミュ語り企画を主宰され、コミュオススメ記事をめ↑っちゃ書かれているベンプさんとの連作となっており、この記事は前編にあたります。(後編は下のリンクから!どしどしどしどしどしどし)
アイマスはゲームにすぎないのか
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』は育成ブラウザシミュレーションゲームである。
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』への期待と懸念 “実在性”にどう挑む?
言い切るのどうなんでしょうね?!?!?!?!
まあ実際、対外的にそのような紹介をされることはありますが、
これを前提として、色々と論じるにはあまりに不十分だと思います。
簡単に示しましょう。
「アイドルマスターはゲームである。」を言い換えれば、
「ゲームでないならアイドルマスターではない。」になります。
そんなわけないじゃん
なあ
ライブはゲームではないから、アイマスではないのか?
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THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023
アニメはゲームではないから、アイマスではないのか?
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TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」
CDはゲームじゃないから、アイマスではないのか?
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Lantisリリース情報THE IDOLM@STER 765 MILLION ALLSTARS BESTより
名刺交換はゲームじゃないから、アイマスではないのか?
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【公式】アイドルマスター P GREETING KIT(Pグリ)
様々なコラボはゲームじゃないから、アイマスではないのか?
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【SideM】「アイドルマスター SideM×山梨」山梨スタンプラリーがスタート!
プロデューサーによる制作と運営との相互作用は、アイマスではないのか?
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【シャニマス】シャニマスつくってみたコンテストが開催!
断じて違います。全部アイマスです。
あらゆる人が、あらゆる形でアイドルを映し出す。
映し出した結果が、運営やプロデューサーの垣根を超え、相互作用を生み出す。
生み出された相互作用から、また新たなアイドルの一面が映し出される。
この繰り返しによって、アイドルという偶像が実像に変わっていく。
こうした営み全てを表す生態系が、アイマスではないでしょうか。
そして、シャニマスとは
アイマス全体について述べたあとは、その中でのシャニマスの位置を確認しておきたいと思います。
端的に言えば、シャニマスは、
・アイマスブランドの中では最後発(vα-liv除く)の妹分であり、
・アイマスの始まりからシャニマスの誕生まで十数年経過していた
これにより、
・これまでのアイマスを見て育った世代が成長し、クリエイターとしてシャニマスに参加できるため、
・アイマスの生態系としての営みを最も体現しやすいブランドになった。
偶像を実像に変えていくプロセスに対し、シャニマスは非常に自覚的です。
それが故に、プロセスへの褒め言葉としての「実在性」が、バズワードとして広まっていったのではないかと思います。
実在性は手段にすぎない
なぜ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』が多重的で自己批判的でキャラクターに記号的なところがないのかというと、『シャニマス』はアイドルの実在性を追及するという愚直な一貫性を持っているからだ。
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』への期待と懸念 “実在性”にどう挑む?
さて、記事への反論に戻ります。
i)まず、「記号的なところがない」というのもあまりに不正確です。
むしろ、「記号から始まっている」とも言うべき表現が、シャニマスにおいては多用されています。
ii)また、シャニマスは、記事に書かれているような「実在性を追求するという愚直な一貫性」が保たれているわけではありません。
シャニマスに通底するテーマは実在性ではなく、もっと根源的なところにあります。
(実在性云々いうなら、そもそもシャニPとはづきさんで売れっ子アイドル26人の業務を見れるわけがないし、テーマを伝えるためにはむしろ思い切って捨象している部分があるのではないでしょうか。)
これらを一挙に示す、「i)記号的なところを示しながらも、ii)実在性への追及をせずにシャニマスのテーマを示す」例をあげましょう。
お待たせしました。
八宮めぐるです。
1/3(These) 金色の元気いっぱいガール
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八宮めぐるを描く最初のカードでは、「金色」の「元気いっぱい」ガールのカードタイトルが示す通り、まず記号の連打から始まっています。
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実在性ってなんだっけ?というぐらいの友達たくさんパワフル助っ人ぶりが描かれる
そして、コミュが進行するにつれて、めぐる視点で自身がどう思われているか、自己認識はどうであるかのズレについて、極めてゆるやかに触れられていきます。
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齟齬について自覚的に触れられたシーン
そしてその流れのなかで、当時にも大きな話題となった、「チエルアルコは流星の」が実装されます。
2/3(Antithese) チエルアルコは流星の
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このカードの肝となる部分は何より、
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1匹だけ周りと色の違う、水色の熱帯魚
「青い外見」「ひとりぼっち」といった共通する記号を持つ「女の子の役」と「熱帯魚」の文脈が、
目については同じ「青い外見」という記号を持つ八宮めぐるに接続されることで、
「ひとりぼっち」という記号も、八宮めぐるに関係しているのではないか、と描いた点です。
この点、「八宮めぐるって友達多くてひとりぼっちなわけ無くない?」という、『金色の元気いっぱいガール』での予想へのアンチテーゼになっています。
そして、この解決が以下のイベントシナリオによって行われます。
3/3(Synthese) Star n dew by me
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イベントシナリオ「Star n dew by me」では、
八宮めぐるの外向的で明るい性格が、実は先天的なものではなく、過去の学校での経験を踏まえて、そうあろうと後天的に努力した結果であることが示されます。
最初に示した「元気いっぱい」の記号と、「ひとりぼっち」の記号の両面から八宮めぐるを映し出すことで、めぐるのことをより良く知れたのではないでしょうか。実在性への追及を色濃く求めなくとも、シャニマスのテーマを示すことができるというのは明らかでしょう。
そして、シャニマスに通底するテーマは何より、「自己と他者との相互理解」なのです。
目的は相互理解
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シャニマスはアイマスの営みである「偶像を実像にする」点を強く受け継いでいると述べました。
この”強く”というのは、言い換えるならば、創作上のテクニックとして「偶像を実像にする」ということが有効だというレベルを超えて、「人間を理解するプロセスは自ずとそうなる」という、一種の人生観として捉えていると言えるかも知れません。
思えば、実際に誰かと初めてあった時、スーツをぴっちりきているから誠実そうだなと思うのは、理解が記号から始まる何よりの証拠ではないでしょうか。
そして、何回か会ううちに少しだけ寝癖が見えたり、曇った表情が見えたりすることで、少しはその人のことを知った気持ちになり、いつもより深い話をしたくなるものなのではないでしょうか。
こうした人生観から導き出されるのは、「みんな特別だし、みんな普通の女の子だ」に代表されるような、等身大の一個人として他者を尊重し、理解しようとする、シャニマスの重要なテーマなのかなと思っています。
3DCGへの期待
だからこそ『シャニマス』のアニメ化は、それ自体が物語化になってしまうのではないかという懸念がある。映像化の宿命として、あるコンテンツを別のコンテンツで表現する場合、そこに必ず翻案の必要性が出てくる。その過程で解像度を低くしたり、情報が入れ替えたりするのは避けられないことだ。
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』への期待と懸念 “実在性”にどう挑む?
さて、シャニマスを描き出すテーマのためには、むしろ多様な記号(広く言えば情報)が必要だということを上記で述べましたが、
記事で述べられているような「(翻案の)過程で解像度を低くしたり、情報が入れ替えたりするのは避けられない」から、「それ自体が物語化になってしまうのではないかという懸念」については、限定的には的はずれなのでは無いかと思っています。
なぜなら、
enzaはもともと解像度低いだろ!
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未だにハイタッチが電子ドラムのクラップ音なんだぞ!!!!!
それでもあんだけ感動したんだからアニメのほうが翻案のハードルは低いだろ。以上です。
それでも心配な理由:情報量vs尺
さてと、ここらでシャニマスアニメ化が難しいのではないかと思う理由だけ書いておこうと思います。現段階の予想ではポジティブよりもネガティブが勝っています。
ポジティブ要素:3DCGの情報量
シャニアニのクリエイターズインタビューでも述べられていましたが、
3DCGでの制作ということもあって、各アイドルの動き方やクセなどを相当緻密なレベルでアセット化できているようです。
こうして増えた情報量を活かすことができれば、通常のアニメで3分ほどかかるシーンを、3DCGで再現された細かなアイテムのテクスチャを1つ示すことによって圧縮できるのではないかという期待があります。
(この点、もっと良い手法がたくさんあるのを承知で稚拙な具体例を出しますが、たとえば、レッスンシューズがだんだん傷がついたりほつれていったりしたら、それだけで練習量を示すアイテムになります。また、アイドル視点でのカットを採用する際、わずかに下を向くだけで感情表現ができるのではないでしょうか……?)
ネガティブ要素:尺
しかし忘れてはいけません。
1ユニットを描くイベントシナリオですら、1時間だの2時間だの読むのにかかるわけです。
繊細な相互理解のプロセスを描くわけですから、それぐらいの時間がかかるのが仕方がないとしても、
これを、25分尺*13話ぐらいで、4ユニット分できるものなのでしょうか?
そして、13話共通で進行するメインストーリーもその中に組み込まなければならないという状態で、アイドルごとの掘り下げがどこまでできるのでしょうか?
ポジティブ要素である程度圧縮が利くのだとしても、相当難しい戦いを強いられているのではないか、と思ってしまいます。
見てえ
なんだかんだシャニアニについても述べましたが、私の想像では「そんな難しいことできないだろ、制約的に」と思ってます。
それでも、心のどこかで「あの人たちならやってくれるんじゃないか」と思っているので、感動で椅子から転げ落ちる用のクッションだけは、自室にしっかりと敷いておこうと思います。
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あ、劇場で見るんだった
家のクッションいらねえじゃん
じゃあウキウキで倒れて映画館にポップコーンこぼしちゃうね!!!!!
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かわいいね、めぐる 劇場で会おう
おわりに
シャニマス総合Discordサーバー「SHINY CORD」が面白く、(この企画もここから生まれました!)シャニマス人生のQOLが非常に上がりました。
オススメなのでまだ入ってない方はどうぞ。
🥤