お好み焼き屋で目撃した双子卵の話。
説明されないキャラクター
・木村(と連れ)
・生地を焼く兄ちゃん
・キャベツ切ってるおっさん
登場人物は3人。兄ちゃんとおっさんのキャラ説明を極力抑えながら木村の主観で話を進めます。彼らとのコミュニケーションが無いので向こうが何を考えてるのかを明かしていないのがミソ。
1回目、双子卵。木村たちは驚きますが、兄ちゃんの反応は語らず(まるで無反応だったかのように)ぐちゃっと混ぜ合わせた描写だけを語る。
2回目、また双子卵。ここで木村は双子卵のみを発注しているのではないかと疑う。卵の箱を確認する描写はリアリティを底上げする。
3回目、まさかの双子卵。疑惑が確信に変わり、この店はそういうのを発注していると。しかし木村の確信は直後の兄ちゃんの行動で覆される。
兄ちゃんとおっさんの関係性が味わい深くする。双子卵くらいで報告するような関係ではないのか。仕事中の無駄な私語は控えるルールなのか。いずれにせよ業務を中断して報告に踏み込んだ兄ちゃんの愛おしさと多分強面で無口だったおっさん(“背中向けて”という描写が活きてくる)の驚いた顔を想像すると、自然と広角が上がる。キャラを説明しないことで想像の余白が広がることは笑いにとって一つ大きな起爆剤になり得る。
それにしても「言いに行った」っていう極めて淡白なオチがこうも円熟味を増すのかと感動してしまう美しい構成。オチの理解を補完することなく証人のくだりに進んでしまう手際の良さに木村印を見ることが出来るし、あの捻くれた怒りあってこそだよなぁと。
オチが付いた後、松本が「どんな言い方で言うたんや」と突っ込む。どんな言い方で言ったのかを具体的に明示しないからこの話は面白いのだ。隠し方が上手い。
平坦に抽象的に語りがちなセンテンスを具体的に語ることで笑いが増幅することがあるし、その逆も然り。ここは虫眼鏡なのか肉眼なのか、どっちで見せた方が面白いのかを感覚的に備えてるのがプロの話芸なんだろうなと。
なんでそのワード気に入ってんねんっていうフックが尾を引いたりするし、擬音とか言い換えを執拗に想像して遊びながら喋ってる人の話は面白い。