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忘れがちな【経験を買う】こと
僕は守銭奴なのでお金を使うことに慎重すぎる節がある。まだ実家にいる頃、弟に倹約家の思想を押し付けていたのは本当に異常だったと思う。それも無駄あれも無駄と、購入目的も聞かず投資だろうが何だろうが端から否定していた。他人のためにお金を使う意味が分からない、みたいな。そこから本を読んだり多くの人と関わるようになって、徐々に消費や浪費について理解を深めていった。
昔、Aという選択をした場合の人生とBという選択をした場合の人生について描いた映画があった(と思う)のだけど、それに似た話を彼女がしてくれた。
午前中に用事が終わり、昼食も済ませ、あとは帰るだけだがせっかくなのでと市内をブラブラしていたそう。ある程度漫喫した彼女は、そろそろ帰ろうとバス停に向かっていると、1時間に1本しか出ないバスがちょうどバス停に到着した。そこへ同時に停車したのが焼芋販売車。彼女は出会ってしまったらしい。彼女は脳内の電卓をフル回転させ、【A】焼芋を買ってバスを逃した場合と【B】焼芋を買わずにバスに乗った場合の損得を計算した。【A】の場合、焼芋(100円)を買って地下鉄に乗って帰る(300円)=400円。【B】の場合、焼芋は買わず(0円)バスに乗って帰る(150円)=150円となる。このように両者には250円の差が出る。
彼女は【B】を選んでしまったと言う。午前中、外食したり買い物をしたりしたから節約思考が働いたようだ。僕はそのとき彼女が後悔した理由が分からなかった。話を聞いていくとすぐに理解した。焼芋(100円)をスルーしたから、1時間に1本のバスに乗れた。これはすごくラッキーだと。しかし、彼女に言わせると金銭的にはラッキーだが経験的にはアンラッキーであると。焼芋販売車で熱々の焼芋を買うという経験を買えなかったからだ。