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「居ても立ってもいられなくて」【2月9日】早朝、突撃インタビュー

 これは、とある人物の日常の始まりに立ち会うコーナーです。偶然出会った人物の一日が、はたまた人生が、垣間見えるかもしれません。
 眠たい目をこすりながら、早朝に散歩をする〈ばあちゃん・じいちゃん〉に話を聞いてきました。


 天気は快晴、気持ちの良い朝でした。何人か歩いている人に声を掛けましたが、この日は立て続けにインタビューを断られてしまい、諦めモードにさしかかっていました。あとひと踏ん張り。今日はこれで最後にしようと決めて、〈じいちゃん〉に声を掛けました。
 50代の男性。もの悲しげにうつむいてトボトボと歩いています。

――おはようございます。散歩中ですか?
「はい…」(元気がない様子でしたが、取材交渉に成功!)

――いつも散歩しているんですか?
「いえ、そういうわけではなく…」

――何かあったんですか?
「実は両親が亡くなって。それで、居ても立ってもいられなくて」

――それは…。一緒に暮らしていたんですか?
「はい、長い間一緒に暮らしていたのですが急に一人になりました」

――最近のことだったんですか?
「ええ、2人ともこの半年間のことでした。特に母は急で、あっけなく逝ってしまったんです。まだ大丈夫だと思っていたので、もっと生前に何かしてあげれば良かったと、後悔が残っています」

――それは、立ち直るのに時間がかかりそうですね…。
「ええ、まだ気持ちの整理が付いていないんです。家に居ると親のことを思い出してしまって」

――そうでしたか。外に出ると、気は紛れますか。
「どうでしょう。ずっとこの町にいるので、外に出ても結局親のことを思い出してしまいますね」

――今日はこのあとどうするんですか?
「一人で家に居るしか、やることはないです」

――何か、新しい人や趣味との出会いがあればいいのですが。
「まだそんな気持ちにはなれなくて」

――そうですよね。でも、こうやって散歩することは良いことだと思いますよ。
「そうなんですか」

――夜は鬱々と考えこんでしまいますが、朝日を浴びると少しは気持ちが晴れませんか…?
「そうなんですかね。まあ、もう少し歩いてみますよ。君も頑張ってくださいね」

 何気なく声を掛けた人からこんな話を聞いてしまい、心境が落ち着かぬまま帰路につきました。知らないだけで、日頃からいろいろな人生とすれ違っているんだなと、とても当たり前のことに気付かされるインタビューでした。
 それではまた次回。(2025/02/09)

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