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[自分流] 効率良く論文を探すコツ part Ⅰ

こんにちは , こんばんは もしくはおはようございます.

社会人大学院生のしゅうとです.

前回の記事の中で 大学院へ進学する前の文献レビューが大事だという内容に

触れました.

“(3) 研究テーマに関する文献レビュー(+ まとめ作業) ”

しかしながらレビューもなにも読みたい論文を見つけることができなくては

本末顛倒.

論文を読むどころか, 「探す作業で日が暮れました...」なんてことは誰しも

経験があるのではないでしょうか?

大学院や臨床という限られた時間で成果を求められる状況においては

こういったタイムロスは特に致命的です.

そこで, 今回の記事は論文の探し方が以下のような方向けに書いています.

(1) Yahoo!や Googleの検索エンジンを使用する感覚で, 医中誌やpubmedを使用している.

(2) 自分では見つけることができなかったような論文を, 同僚や先輩がサクッとみつけてきてへコンだ経験がある.

(3) 自分が読みたい内容の論文が, 存在しないのか or 探すことができていないのか 判断がつかない.

僕が臨床3年目(M1)くらいの頃は, 医中誌pubmed に気になるワードを

ひたすら検索ボックスへ放り込み, 検索結果に表示された論文全てに

目を通すという 時間的にも体力的にも非常に効率の悪い作業を行っていました.

まさに過去の自分へ向けたような記事というわけですね.

今回あえて "効率良く"  と銘打ったのはそのためです. 

修士課程時代の僕のようにならないためにも, 

今回の記事が少しでも参考になると嬉しいです.

---✂︎---

今回記事にする内容についてですが, 

効率の良い検索方法は以下のポイントによって構成されています.

(1) 臨床的疑問のカテゴリー化 

(2) 臨床的疑問 の PI(E)COへ定式化

(3) 医学統制用語 (Medical Subject Headings : MeSH)の確認

(4) AND / OR を使用した検索式をつくる

(5) フィルター機能を活用する

です.

本日はこの中でも特に重要な

(1) 臨床的疑問のカテゴリー化 

(2) 臨床的疑問 の PI(E)COへの定式化

について解説していきたいと思っています.

(※今回はpubmedで論文検索することを前提にしています)

通勤・通学・寝る前なんかの空き時間によかったら読んでみてくださいね.


(1) 臨床的疑問のカテゴリー化


まずはじめに皆さんは日々臨床で感じている疑問(Clinical Question;CQ)

数々がそれぞれ, どのカテゴリーに含まれているのか

自信を持って答えるができるでしょうか?

同じ質問をされた3年前の僕であれば 完全にお手上げ状態だったと思います. 

まずは, 以下の[表1]を参考にしてみてください.

[表1]

スクリーンショット 2021-02-23 午後2.55.39

臨床場面で遭遇するCQであれば, 

・介入効果を検証する治療

・病気(怪我)の原因を探索する病因

・実際の病気や怪我の診察精度を検証する診断

・ある要因を持つ(状態の)人の予後

という, この4つで概ね説明がつくことが多いです.

ここで重要なのはCQのカテゴリーが分かれば, 

CQを検証するための(している)研究デザインも

同時に明らかにすることができるということです.

この 研究デザインを明らかにしておくというのは

(5) フィルター機能を活用する の際に役立ってきますので

頭の片隅に残しておいてください.

カテゴリー化についての解説はこれ以上もこれ以下でもないのですが

まずは 事例を通してCQのカテゴリー化を行っていきましょう 

事例1)

Q

「前十字靭帯再建術後患者への術後早期の神経筋電気刺激(EMS)は3ヶ月後の膝伸展筋力回復に影響するのかなー?」

この場合, CQのカテゴリーはどのようになるでしょうか?

少しだけ考えてみて下さい




A

スクリーンショット 2021-02-23 午後3.38.31

答えは "治療" です.

ここでは, EMSの治療効果 (術後3ヶ月時点での膝伸展筋力回復)に関するCQですので, 迷われる方は少なかったのではないでしょうか?


事例2)

Q

「前十字靭帯再建術後患者への術後早期のEMSはスポーツ復帰後1年以内の再受傷を減らすことができるのかなー?」

この場合, CQのカテゴリーはどのようになるでしょうか?






A

スクリーンショット 2021-02-23 午後3.38.31

こちらもさきほど同様に答えは "治療" です.

スポーツ復帰後1年以内の再受傷って予後になるんじゃないの?

という声が聞こえそうですが, 

これは単にEMSへ期待している効果が, 

さきほどの 術後3ヶ月時点での膝伸展筋力回復 から 

スポーツ復帰後1年以内の再受傷を減らせるのか へ 置き換わっただけであり,

治療効果に関するCQという本質はブレません.

つまり, ある介入や治療法の効果が知りたいと思っている時点で

いかなるアウトカムにおいても CQのカテゴリーは治療となります.


事例3)

Q

「前十字靭帯再建術後患者で, 入院中ベッド上で安静にしていた人(身体活動量が少ない人)とたくさん歩いていた人(身体活動量が多い人)では, 術後1年経過時点でのスポーツ復帰率は違うのかなー?」

この場合, CQのカテゴリーはどのようになるでしょうか?






A

スクリーンショット 2021-02-23 午後4.17.41

答えは "予後" になります. 

ここでいう身体活動量が少ない・多いという話しは治療云々ではなく,

身体活動量が少なかったor多かった人のスポーツ復帰率(予後)

関心があるためです.

ちなみに, スポーツ復帰率というアウトカムは 病気(or怪我) ではないので,

病気の原因に関心のある 病因 というカテゴリーにこのCQは

当てはまらないということはご理解いただけると思います.


(2) 臨床的疑問 の PI(E)COへの定式化


では今回のメインであるPI(E)COへの定式化について解説していきます.

まずPI(E)COとは, 

Patients (P) どんな患者に

Intervention (I) or Exposure (E) 何をすると

Control (C) 何と比べて

Outcome (O) どうなるか

これら4つの頭文字をとった造語であり, 

さきほど事例1〜事例3で挙げたような曖昧なCQを構造化するための

フレームワークとしてよく用いられます.

ちなみに...

PICOは介入研究・PECOは観察研究に該当する際のフレームワークとして

使い分けるのが一般的です.

 CQのカテゴリー化が無事に済んだら, 以下の [表2] のようにPI(E)COへ

CQを定式化していきます.

[表2]

スクリーンショット 2021-02-23 午後5.20.08

それぞれの項目欄に入れ込むキーワードは以下の通りです.

P;対象とする患者の疾患 や 参加者集団の名称

I ;治療効果を知りたい介入方法(介入内容)の名称

E;病気(怪我)の原因だと思う因子の名称 あるいは "risk factor" でも代替可 (はっきりとした因子が分からない場合は, risk factor を用いることで広範囲に検索対象を広げることができる)

C;比較対照にしたい集団 (※検索時は条件が厳しくなるため含めないほうがいい)

O;自分が知りたいアウトカム (※検索時は条件が厳しくなるため含めないほうがいい)

研究を実施する際は, これら全てを埋めるのが当たり前ですが, 文献検索が目的の場合,

[表3] のように, 赤字で示しているPとI(E)さえ埋めることができれば

欲しい文献を手に入れることは十分に可能です.

[表3]

スクリーンショット 2021-02-23 午後5.34.42

むしろ, CとOに該当するキーワードを検索ボックスへ入れてしまうことで,

該当論文がHitする条件が厳しくなるため, 

欲しい文献が見つからない可能性が高まります.

原則, Cに該当するキーワードは検索ボックスへ入れず,

Oに関してはPとI(E)のキーワード検索で

非常に多くの検索結果(500〜1000件以上) が出た場合に

そこから自分が求めている文献をより効率的に抽出する目的で

Oに該当するキーワードを使用し, ふるいにかけていくのが基本操作です.


まとめ


いかがだったでしょうか?

基礎の基礎のお話しで, 「もう知ってるよ」という意見もありそうですが,

とても重要な内容だったので今回記事にさせていただきました.

今回の記事の take home message は,

・CQをカテゴリー化

・カテゴリー化後にCQをPI(E)COへ定式化

・キーワードはPとI(E) が分かれば基本的にはOK

の以上になります.

実際にpubmedで文献検索を行う際は今回入れ込んだ日本語のキーワードを

英語に置き換える作業が必要になりますので,

次回はそのあたりの作業から解説したいと思います.


ここまで読んでいただき本当にありがとうございました.

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