【走れワロス4】新卒採用ガチャ解説その2-2:ESガチャの問いの正しい「振り仮名」の振り方
我輩は100何回落ちた猫である。名前は、もうある。ワロスである。
今回も大手を受ける学生にとっては最も厳しい壁として立ちはだかるES(エントリーシート)についてつらつらと書いていこうと思います。こちらの記事の続きです。
ESに限らず、採用ガチャでは割と「就活語」というものが多数存在します(忖度ぅ〜)。なので、就活ではなんと日本語で書いてあるか(言われるか)よりも、その問いの項目を作った意図を考える方が優先度は高いです。僕はその「文字にはなってないけど本当に聞きたいこと」を「問いの振り仮名」と名付けました。
100社落ちてその過程で聞いたいろんな人事の話を元にその問いの意図を解き明かしていこうと思います。
目次
・1°ESガチャの正しい「問いの振り仮名」の振り方
ーー1°-1「自己PR」の正しい翻訳
ーー1°-2「学生時代に一番力を入れたこと」の正しい翻訳
ーー1°-3「長所と短所」の正しい翻訳
ーー1°-4「志望動機」の正しい翻訳
・2°ESガチャの当たり確率を引きあげるには/ESガチャ対策まとめ
・※番外編:人ってそんなに一貫してるっけ?
1°ESガチャの正しい「問いの振り仮名」の振り方
前回の記事でも言った通り、日本のハイコンテキスト文化(察する文化)により、就活生は企業の論理を不十分な情報から読み解かなければなりません。もちろんこの「問いの振り仮名」の振り方は企業によって異なりますが、今回は日本企業の典型的な振り仮名の振り方を提案します。
ESでよくある質問はいくつもあると思いますが、今回はこの4つに絞って考えたいと思います。ちなみにここは面接の質問にも通ずるところがあるので、個人的にはかなり必見ポイントです。一応リクエストがあればコメント欄で受け付けますが、そもそも僕が受けた企業自体もそこまでまばらではないため、どうしても僕の経験がベースになってしまうことはご了承ください。
1「自己PR」の正しい翻訳
2「学生時代に一番力を入れたこと」の正しい翻訳
3「長所と短所」の正しい翻訳
4「志望動機」の正しい翻訳
では、早速一つ目行きましょう。
1°-1「自己PR」の正しい翻訳
あれだけ「自分を誇張するな低頭平身でいけ」という会社が唯一「自分の強みを自慢しろ」と言ってるかのように見えるこの質問。確かにそうなのだが「自慢してほしい箇所」が意外と限定的なのです。ここの見極めこそが自己PRという問いへの答えに直結します。ではどういう範囲なのかと言えば、簡単に言えば
あなたの「組織での活躍の中で」「比較的共通している成功要因となった強みを」「一貫性を持たせて」教えてください
です。「そこまで書いてないだろ!妄想激しスギィ!!」と言われるかもしれませんが、そんなことはないです。きちんと合理的な理由があります。
「人を採用するということ」の本質とは「自社という”組織”の事業の維持拡大に合わせて必要な人員を確保すること」です。別にみんな取りたくて取っているのではなく「足りないから仕方なく」取っているのです。まずこの前提を全就活生及び採用担当は頭に入れるべきです。
つまり、どう事業を展開していくのかさえはっきりしてしまえばどのような強みを持つ人を採用したいかも自ずと決まってきます。そのため、この自己PRでわざわざ「組織での活躍」に絞っているのはそういうところから考えたら納得でしょう。あくまで会社は基本的に集団行動であるため、組織の中でどのような立ち回りをするのか、が企業的には一番知りたいことなのです。
営業の構造を完全マニュアル化する会社を受けた時に僕の担当面接官もこう断言していました。
「従業員の質を落としたくないので、基本的に新卒なんて取りたくありません。」
バッサリ言ってくれましたね。そういうの大好きです。間違っても、これはその社員への悪口ではなく「採用の本質をついている発言」としてむしろ賞賛したいと思って引用したということはご理解ください。ちなみに僕はその人の面接で落ちました。能力が一歩及ばず残念でしたね。
他に自己PRを語る上で欠かせないのが「強みの再現性」「説得性」です。振り仮名に「比較的共通して」と書いたのはそういうところです。そのため、本当にこの強みがあったから成功したのか、というのがわかるように書かなければいけません。これに関しても下の動画でよく説明されているので、ぜひ参考にしてみてください。
最後に、「一貫性」についてですが、これが入ってくる理由は至極簡単な話で、一貫性がないと「その人の人物像が想像つきにくくてあたりをつけられなくなるから」です。例えば僕の知り合いは「とにかくひたすらいろんな資格を取る」というサークルに所属していました。これをもし全て資格を言っていくとどうなるかというと
「私はダイビングのライセンスを持っていて船舶を動かせて鎌倉のガイドもできて忍者検定も持ってます!」
とこうなるのだ。ではこれを企業側はどう見るでしょうか。感想は一言。「ええ…(困惑)」です。あまりにも乱れ打ちすぎてその人の人物像が見えにくくなるため、この反応は致し方ないです。そのため就活生側は、自分の打ち出すと決めた強みに沿った情報だけをなるべく提示するべきでしょう。
1°-2「学生時代に一番力を入れたこと」の正しい翻訳
これも自己PRとセットでよく出てくる問いです。ここで注目したいポイントは「一番力を入れたこと」って何さ、ということですね。それに対しての僕なりの「振り仮名」がこちら。
「学生時代に」あなたが「組織での活躍の中で」「最も自身の強みがよく顕著に出ていた」「PDCAの回す過程」を教えてください
さあいよいよややこしくなってきましたね。順に説明していきます。
まず、「学生時代」。よく就活生の間では「大学だけ?」とも言われていますが、実際に人事の人に聞くと必ずしも大学時代である必要性はないそうです。ただし、高校生までの経験というのはどうしても制約やご加護を多分に受けた環境での経験になりがちなため、パッとしにくいというのはあるかもしれません。でもそれを決めるのは他でもないご自身なので、そこの判断はご自身にお任せします。
次に「組織での活躍」に関しては先ほどの自己PRとほぼ同じ論理なので省略します。
「最も自身の強みがよく顕著に出ていた」というところがこの問いの最大のキモですね。一応ESとは自己PRとセットでこの問いを投げられることが多い為、自己PRの話との整合性が求められます。そのため、まず自分の打ち出す強みを決め、それ裏付ける自己PRを書いた後で、それを補足できるような体験を書くのがベストなのだと思います。ちなみにこれは僕の例ですが
自分の強み:数学力をベースとしたマーケティング能力
自分の一番頑張ってきたこと:演劇ワークショップを通じた異文化コミュニケーション
と書いていた為、相手からしたら「数学オタク系インキャ男子」なのか「人の立場に立てる共感能力の高い好青年」なのか判別がつかなかったことでしょう。僕は少なくともどちらの要素も持ち合わせているとは思いますが9:1でオタクインキャですね。でも、それは相手に伝わらないのです。これがESの悲しいところです。
最後に「PDCAの過程」と書いてあるのは、何かしらの大きめな成功体験を語る上ではほぼ確実にPDCAサイクルをベースにして事を進めているからです。ちなみにPDCAサイクルとは、Plan(仮説策定、問題意識)→Do(実験する)→Check(実験結果を確認する)→Analyze(結果から分析、考察する)を繰り返すことでより物事を改善していく、という思考プロセスのモデルのことです。スタートがどこから始まるかは状況によりますが、逆回転は基本しません。
またまた僕の例で恐縮ですが、仮に「高校で所属していた陸上部の部員数を歴代で一番多い人数にした」という体験をこのPDCAに当てはめるとどうなるでしょうか。
P1:新入生を入れるには認知度の向上が必要なのでは?
D1:新入生にビラを配る
C1:来たのしばらく2〜3人(学年人数は176人…)
A1:認知度は上がってはいるが増えないため、その他に原因があるはず
P2:新入生の仮入部期間は入ってはやめてを繰り返しながら定着していくため、そこで止める人数を減らしたらいい噂だけが新入生の間で飛び交うことになり、雪だるま式に人がやってくるのでは?
D2:実際に仮入部に来た人との話す頻度を上げたり、その中で体験したその人の面白いエピソードなどを既存部員に向けて発信し、その人がより陸上部で居場所を得やすいような環境をセットしてみる
C2:気づいたら新入生だけで15人、他の学年からも合わせると24人から46人にまで増えた(前年度までの部の最高人数は30人なので1.5倍の大躍進)
A2:恐らく大成功(やったぜ)
みたいな感じになります。みなさんもこのフレームに乗っかって自分の経験を整理するとかなり伝わりやすくなると思います。
1°-3「長所と短所」の正しい翻訳
ここも非常に悩むところではありますが、僕の翻訳はこうです。
あなたの思う「表裏一体となっている」長所と短所を教えて下さい。
はい、謎の制約が入りました。「表裏一体」であるのはなぜでしょう。
それは、ここまでもう口すっぱくなんども言って来ましたが、読者は「一貫性を求めている為」です。これはFateや空の境界や月姫などでおなじみのライター、奈須きのこさんの世界観の言葉を借りて言うなら、「根源」という概念を説明するとわかりやすいかもしれません(ちなみに僕はfateだけならそこそこわかるので好きな人いたらこっそり教えてくださいね)。
奈須きのこさんの世界観では、魔術師という魔術の研究者が何人か出て来ており、彼らにはそれぞれ「根源」という自分自身の中核となる要素を持っています。そしてこの世界観において魔術とはその「根源」に派生するものしか生まれないため、魔術を研究する上では「自分の根源とは何か」という問いが至上命題なのです。ある種の自己分析でしょうか。
さて本題に戻ると、読者や面接官は就活生の「根源」を見出そうとしており、その「根源」がいい方に出るとどうなるか(長所)、悪い方に出るとどうなるか(短所)ということを聞きたいので、ここは実は長所短所を語る上では欠かすことができないでしょう。それがその人の人となりを知る上でとても大事になりますからね。
2°-4「志望動機」の正しい翻訳
ここはそこまで奇をてらったものではないため、そんなに悩む必要はないと思いますが、一応僕が振り仮名振っておくと
あなたは「どういう人生ビジョンを持っており」「そのビジョンを達成するためのどこのパーツを弊社への入社で担うのかを」「他の同業種の会社とは差別化をした上で」教えてください
って感じでしょうか。一個ずつ説明します。
まず「人生ビジョン」。ここは、あなたが入社してから働くモチベーションの根幹がどこにあるのかを宣言する部分です。ここでもしこのビジョンと会社の方向性が噛み合わなければまず落ちます。どうしても受かりたいならばいかにその会社の方向性に自分のビジョンがどう共通項を持つのかを力説しなければなりません。そのために有効なのは「会社の理念の引用」です。相手も会社の理念を宣言され、そこと自分のビジョンの整合性が取れていたら基本的に神の段階で落とす理由はありません。
ただし、どうしても思いつかない!って時は潔くその会社からは撤退しましょう。絶対に合わないはずです。というか向こうが勝手に落としてくれます。逆にそこでES通っちゃった会社は採用がガバガバということになるため、やはり脱走するのが無難でしょう。僕は脱走せずきちんと落ちましたが。
次に「そのビジョンのどのパーツを担うのか」は、ビジョンが説明できれば大抵すぐ作れるものです。主に職種などの説明を付け加えてどんな力を身に付けたいかなどをきちんと書けば良いでしょう。ちなみに福利厚生や給料ベースのお話をここで書くと高確率で地雷です。
最後に「他との差別化」。ここは「自分の会社にどれだけ愛着を持っているのか」をはかります。愛着なく入社されたら簡単に離職されてしまうため、せっかくの採用コストも無駄になります。そのためにも「他の業界よりここは優れていて、ここは劣ってるけど、その劣っているところは私にはこう言う理由でそこまで苦になりません。むしろプラスです。」と言えるといいですね。採用チームは大喜びです。
2°ESガチャの当たり確率を引きあげるには/ESガチャ対策まとめ
ここまで長々と色々論じて来ましたが、これを全てひっくるめたまとめとしてはこんな感じでしょうか。
・話に一貫性を持たせる
・日本語の文法はきっちりと
・なるべく数字を使ってどのくらいすごいのかアピール
・結論から書くことで10秒でも伝わりやすい文章をつくる
・その上でPDCAのフレームに沿って自分の体験を書く
・なるべく「組織」での勝利体験を書く
・自己分析と会社の分析はしっかりと(その後の時代の流れまで読めればかなりレベル高いと判断されるはずです)
こんなところでしょうか。では、ここで最後に、予測されうる最大の問いに答えましょう。
Q.私あまり組織での成功体験ってあまりなくて困ってます。
→A.今俺が書いて来たことの真逆を書きましょう。個人の戦績を思いっきり見せてやりましょう。
だって無い袖は振れないじゃないですか。だったら個人の実力で勝ち残って来たことを延々と書き記してやればよいのです。もちろん、結論から入ったり、PDCAをベースに書いていくことは話を伝わりやすくするために必須ですが。それが嫌な会社は勝手に落としてくれますし、そうでない会社でも「そういうやつが必要なんだ」って時には会ってくれるかもしれません。僕はそうやって逆にスクリーニングをかけていたりしました。だから正直100社落ちたことに対してやらかし意識は一切ありません。
ではでは今回はこの辺で。今回はかなり骨太な内容ですが、その分面接は手抜きにするつもりです。次は面接とグループワークどっちにしようかな。
※番外編:人ってそんなに一貫してるっけ?
実はこの一貫性の話は、話を伝える上ではとても大事なのですが、あくまで「就活で伝える際のみ」にとどめるようにしてください。
というのも、就活してると自己分析をすることってあると思うのですが、その際自分の中に何らかの一貫性を見つけたことに愉悦を覚えて「微小ながらも確実にある自分の側面」というものを強引になかったことにする就活生が結構います。だってそこを挙げ始めると話がどんどん複雑になるんですもん。せっかく文字ベースで自分のマインドコントロールしてるのにそんなこと考え始めたらきりがないですからね。
確かに人というものは矛盾に対して言いようのない嫌悪を示すことがあります。ですが、あなた自身のことは誰よりもあなた自身が肯定してあげないといけないのです。知らないおじさんに自己矛盾をどうこう言われる筋合いはないのです。その自己矛盾も含めてあなたなのです。それを忘れて強引に周りから求められる自分の単一的なキャラを押し通そうとすると必ずその反動が自分にやってきます。クラスで求められるがままにいじられキャラを維持して自殺した人を知っています。嘘の自分で塗り固めて死んだ人を知っています。自分を曲げるのはいい、でも自分に嘘をつくのは本当にメンタルが疲弊するんです。
僕自身、以前は自分の「微小ながらも確実にある自分の側面」を無視して就活を進めて、完全にメンタルを病みました。僕の知人なら「嘘つけ!」って思うでしょうが、そのくらい僕は病みました。人生で失恋に次ぐ数すくない暗黒期です。
どんなわずかな側面もあなたなのです。かけがえのない大切な一人の人間なのです。どんなに就活で悩んでもこれだけは忘れないでください。
少なくともあなたの自己矛盾を否定する人にワロスは嘲笑します。
【100何回落ちた猫の簡易プロフィール】
・幼稚園の面接で、既に受かっていた幼稚園に行きたくて面接官の前で「いやだ!僕はあっちの幼稚園に行くんだ!!」とガチギレ、落ちる
・中三の時、英検3級で、相手の言葉が全く聞き取れず"I beg your pardon?"を連呼しすぎ、落ちる
・大学一年の初頭、バイトの面接で「学生の本分は勉強だから授業優先に決まってんじゃん」と言って全てのバイト先候補に嫌われ、悉く落ちる。
・大学三年、某銀行インターンで6人のバトルロイヤル系グループワークで完全に俺の大勝利だったのに、変死。
・大学四年、エンジニアとして7月に内定をもらい、8月からインターンとして研修を受けれると最終面接で約束されたから内定を承諾し、他の会社を全て蹴ったのに、一ヶ月後8月になって「やっぱ新卒ではエンジニア取ってなかった!営業なら枠あるよ」などとおほざきになられ、実質的な内定破棄をされる。ワロスは激怒した。