小悪魔セバスティアヌス 〜狩り

「えーん、えーん、パパとママが死んじゃった
よ・・・」
「坊や、大丈夫?」
 百合奈はこの子供の素姓にすぐに気がついた。デーモンハンターとして悪魔たちと対峙してきたからだ。
「・・・お姉ちゃん、寂しいよ。一緒に遊んでくれる?」
「いいわ。私は百合奈。坊やは?」
「ボク、ゲオルギー。一緒に家まで行って、ゲームをして遊ぼう」

 5分ほどでゲオルギーの家だというアパートに着いた。部屋にはテレビとゲーム機があったが、両親がいたというような生活感はなかった。
「ここならゆっくりできるわね、ゲオルギー君」
 そう言うと百合奈はゲオルギーを抱え上げ、丸っこいお尻を叩き始めた。
「痛いよっ、痛いっ。お姉ちゃんやめて!」
「じゃあ、やめよっかな」

ドサッ! 百合奈はゲオルギーを床の上に放り投げた。

「痛てぇ! 何するんだよ!」激怒するゲオルギー。
「黙りなさい、小悪魔。最近、この街で人をたぶらかす小悪魔が噂になってたけど、あなただったのね」
「ボクは悪いことはしてないぞ」
「そうだとしても、あなたは人の世にいてはいけないの。小悪魔ゲオルギー、汝に命ず。闇の世界へお帰りなさい」
 百合奈はデーモンハンターとして幾度も悪魔を従わせてきたが、ゲオルギーには効果がなかった。
「どうして!? 名を呼ばれた悪魔は命令に背けないはず・・・」
「ボクの本当の名前はゲオルギーじゃないからだ。もう許さないぞ」そう言うと、小悪魔は呪文を唱えた。

「ベールゼブブ・セバスティアヌス・マルティアーゴ・ケルソンスス」

 百合奈の左右の頸動脈に鋭い爪でえぐったような穴が空き、鮮血が勢いよく吹き出した。
 セバスティアヌスは百合奈の遺体を手土産に、小悪魔の保育園に帰って行った。

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