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『シュシュシュの娘』に寄せて仗桐安
皆様、こんにちは。
『シュシュシュの娘』に高峰三吉役で出演いたしました仗桐安です。”じょう・きりあん”と読みます。
『シュシュシュの娘』の完成・公開、おめでとうございます。ありがとうございます。
入江監督のミニシアターへの思いがついに各シアターに届くのですね。携わった人間のひとりとして、大変うれしく思います。
監督から「何か書いて」との依頼がありましたので、本作との何やかんやを振り返ります。
2020年6月、私は本作のオーディションを受けました。以前、『22年目の告白 私が殺人犯です』と『AI崩壊』でお世話になった入江監督のツイートを見たのがきっかけでした。
「コロナ禍で苦境に立たされたミニシアターのために自主製作映画を撮る」その決意が何だか粋だなと思ったのと、私もまた、当時俳優業がぱたりと止まり苦境に立っていたというのもあってのエントリーでした。
びっくりしたのは、オーディション前に、既に完成していた本作の脚本をまるごとデータで送っていただいたことです。
拝読し、「こ、これは面白い…」と思い、同時に「この作品世界に入りたい…」と思いました。
果たして、私はオーディションに合格し、高峰という役をいただくことになりました。
正直、その報せを聞いたときはうれしくてガッツポーズをとりましたが、同時に、あまりオーディションに合格するという経験をしたことがなかったもので「いやいやそんなわけは」「ドッキリでしょこれ」という自己防衛的な疑念も浮かびました。
そして、配役発表で別のびっくり。メインキャストの中に、1999年に舞台で共演して以来、長らく疎遠になっていた吉岡睦雄さんの名を発見し「うおおお」と声が出てしまいました。人生の伏線をひとつ回収したような気分になりました。
撮影に向けて準備の日々がやってきました。高峰の設定年齢が私の実年齢より10個くらい上なので、監督に「アクセント的にメイクで白髪を入れたい」と申し出たところ、承諾していただきました。また、何となくこの人は色黒の方が良いかなと思い「多少肌を焼いて臨みたい」と申し出たところ、こちらについても承諾していただきました。
本番は2020年10月。私の出番は2日間のみでした。現場の雰囲気が良かったこと、そして、現場のご飯がおいしかったことがとても印象に残っています。ケータリングの達人の方がいらっしゃっていて、毎日あたたかいご飯をご用意していただいておりました。ありがとうございました。
埼玉県某所での撮影は恙無く進行し、高峰三吉と向き合う2日間はあっという間に終わりました。
撮影が終わってなお、私はある疑念を持ち続けていました。
「あの撮影、ドッキリだったのかな」
そんなわけはありませんし、そんなことを考えること自体が私を選んでくださった入江監督にも失礼なのは重々承知の上で、ぼんやりとそんなことを思いつつ、撮影で出会ったキャスト・スタッフの皆様との楽しい思い出を時折思い起こしておりました。
そして2021年1月。本作の初号試写を関係者の皆様と鑑賞しました。
「あ。ドッキリじゃなかった」
試写を観て、あの、脚本を読んだときに入りたいと思った世界に自分がいることを確認したのと同時に、テキストでしか存在しなかった世界が、多くの方のご尽力の結果として、こうして映像作品になったのを確認し、大いなる感慨を感じました。撮影現場での色々な光景がフラッシュバックしました。
しかし私の脳はここでまたよからぬ方向に思考を進めます。
「試写はしたけど、果たして公開されるかな」
「いや、されるだろうよ!」もう1人の自分がツッコみます。そうです。映画はお客様に観ていただいて初めて完成する。そんな風に思います。
てなわけで、このたびの封切日決定、上映館決定の報せに、またも私はガッツポーズをとりました。2020年秋に取り組んだ仕事の成果がお客様の眼前に届くということに、無上の喜びを感じております。
あ。吉岡さんとは、現場でお話することができまして、旧交を温めました。
あと、あれですね。映画の内容についてはまだ言えないのですよね? いろんな要素が詰め込まれていて、シリアスでもあり、チャーミングでもあり、不思議な味わいのある映画だと思います。
全国のミニシアターを運営されている皆様、そしてミニシアターを、ミニでないシアターを、映画を愛する皆様に、本作が届きますことを祈っております。
未だ“禍中”ではありますが、乗り越えて、生き残ってまいりましょう。
最後に。
本作への出演依頼をくださった入江悠監督、ならびにキャスト・スタッフ・関係者・クラウドファンディングご出資の方々、そしてご覧になるお客様、皆々様、本当にありがとうございます。
仗桐安
映画『シュシュシュの娘』
8月11日(水)先行プレミアム試写会
8月22日(土)全国ミニシアター公開