根矢涼香『映画は歩いていく』
映画『シュシュシュの娘』
おひさしぶりです。
丹治紗枝子役の根矢涼香です。
8月21日の日本全国での上映開始から、早いものでもうすぐ2か月。
気が付いたら来年もすぐそこで、こういうのは毎年言っちゃいますが本当に、時間というのはあっという間ですね。
まだ訪れたことのない沢山の映画館、顔を合わせたことのない誰かと、今日も何処かで映画越しに対面をしていると思うと、何度経験してもそれは不思議で、単純に、すごいことだなあと思うのです。
現在上映中・上映予定の映画館
10月1日(金)~広島・福山駅前シネマモード
https://www.furec.jp/cinema-mode/
10月15日(金)〜 長野相生座・ロキシー
10月16日(土)〜 石川・金沢シネモンド
https://cine-monde.jimdofree.com/
11月5日(金)〜 静岡シネマイーラ
11月20日(土)〜 シネマテークたかさき
http://xn--takasaki-cc-f34jndvj0dum9r.jp/
11月26日(金)~12月4日(土) 深谷シネマ 再上映決定!
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すでに上映を完走した劇場さんも、お越しくださった皆様も、本当にありがとうございました。
1年前の入江悠監督の一言から始まったこの映画。
夏にはじまり、秋に燃え、再会は春。あたらしい夏を駆け抜け、今はそれぞれに秋を迎えています。
あの期間にたくさんの人が感じてきた喜びも憂いも、悲しみも怒りも、映画の中にでくるみこんで、皆さんのもとへシュシュっと「未宇ちゃん」が駆けていきました。私自身にとっても、一本の映画が立ち上がり一緒に歩いていくということを、この時期だからこそ、改めて向き合えたことが多くありました。
現像に出していたフィルムが却ってきたので、
写真と一緒にふりかえり。
初日舞台挨拶での都内劇場巡りの日。
最初の劇場、ポレポレ東中野にて。
満席の会場で、拍手の重さがなんだか違ったのを覚えています。この時は感無量で、何を話したのだっけー
移動であわただしく、車に乗る直前にシャッターを切った一枚。
ポレポレで映画を観る帰り道は、いつも衝撃と感激にふやけてぽーっと歩いていることが多いです。これからも遊びに行きます。カフェのポレポレ坐での一息も、好きな時間。
下北沢のトリウッド。久しぶりに訪れることができました。
お客さまがアットホームで、上映前の舞台挨拶で、こちら側がホッと癒されました。マスク越しでも笑顔が温かいのがわかる。
小さいお子さんもいらっしゃった!どう感じたんだろう。
歩いて楽しいカラフルな街の、ここで物語が起こりそうな、かわいいミニシアター。遊びに来る感覚で、散歩ついでに立ち寄れるような映画館っていいな。
私自身、沢山密に、お世話になっている、池袋のシネマ・ロサ。
2年前に、私の特集上映の企画で、1週間主演作を日替わりで上映していただいた映画館です。上映期間何度も池袋の町を歩き、家から映画館へ向かう道は、上映の成功への不安と願いと、これから先の俳優としての在り方とか、生活のこととかを、頭の中でぐるぐるさせていました。映画が届くこと、再びお客さんに迎えてもらうこと、映画館にこれまで関わってきたスタッフキャストが集結することの幸せさ、自分に光があてられること、自分が光を当てたいものー
これまで、「これからの」映画監督や映画人たちを排出してきた劇場だからこそ、映画の縁がぐるりと廻っていく妙(言い換えると、必然)に、言葉にできない高揚を覚えました。
控室にて、ポスターにサインをする吉岡睦雄さん、見守る福田沙紀さん。
誰よりも字がかわいくて、皆でざわざわしていました。
支配人の矢川さんが移動の車を見送ってくださいました。
きっとこうやって長い間、映画と映画監督の背中を押してこられたのだろうなと、こころがぎゅっとなりました。
この日の最後の上映は、渋谷ユーロスペース。
やっぱりこのメインビジュアルかっこいいな。
映画館の壁を切り裂いて、中から覗いているみたいに見えます。
全国プレミアム試写会での熱狂は、この場所で起こりました。
車から、シュシュシュTシャツを着た二人が見えてきた。
私たちが上映でまわっている間、ユーロスペースの入り口では、
金谷真由美さん、松澤仁晶さんが、手袋をしてシュシュシュの娘のチラシを配ってくださっていました。
チラシを受け取ってくださった方に「応援しています」「観に行きます」と言ってもらえること、直接お礼を伝えられる場が減ってしまった今だからこそ、他に代えられない時だったと感じます。今は思い切りできなくなってしまったけれど、これまでは映画関係者によるチラシ配りも、映画を知ってもらうためのきっかけづくりや交流の場でもありました。
わが地元。茨城県 瓜連のあまや座。
映画館の前には、ケータリングカーの「ハチバス」が停まり、映画のはじまる前に、終わった後に、映画の時間でなくても傍に寄ったお客さんが訪れます。お気に入りは、とろ~りしたフレンチトースト。ライスグラタンも美味しかったな
端に写るのは支配人の大内さん。(ふと振り向いたところを収めてしまいました笑)
今年で4年目を迎えるあまや座さん。
毎年有難いことに、私の特集上映をプログラムで組んでくださっています。ミニシアターがなかったこれまでは、東京で出演した作品が上映されても、家族や友人には見てもらうことができませんでした。おススメの映画があっても、レンタルされるまで待つしかなかった頃にくらべると、私の家族も、周りの人たちも、映画館で映画を楽しむ機会が増えたと言っています。
地元の映画文化のこれからを歩んでいけるように、帰る度にまた頑張らないとと奮い立たされる、もう一つのお家です。
そして、名古屋シネマスコーレ!
真ん中に写るのはご存知、副支配人の坪井さん。2年前の特集上映での「ネヤリョーカ」Tシャツを着て迎えてくださった坪井さん。他のお客さんは普通のTシャツだったので、一人根矢親衛隊になってしまった坪井さん。
映画を盛り上げながら、映画館のこれからを考え続ける熱い方です。
その坪井さんの熱を反射するように、名古屋のお客さんの迎えてくださる熱気は、他では見ることができないような団結を感じます。
ただいまー!行ってきまーす!と声を大にして言いたくなる、そんな映画館。大好きです。
『シュシュシュの娘』はあなたの胸に、どのように刺さったでしょうか。
ここで笑ってもらえたらいいなあとか、一緒に怒ってほしいなあとか、
今日見てくれている友達は、あの人は、知らないあなたはどう感じるんだろうと、離れているときでも変わらずにどきどきとしています。
本当ならば、伺えなかった劇場さんや、これから上映される映画館に、来てくださったお客様方に、直接その場所で顔を合わせてお礼を言いたいです。
まだまだ気軽に遠出したり、中々近い距離で笑いあえない中で、私たちの身体よりも先にこの映画が、見てくださったお客さんの心に届いていますようにと願います。
きっといつか必ず追いつきます。これから先の目標の一つになりました。
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先日、撮影で広島県に行きました。
お休みの日に、広島駅から30分ほど歩いて、横川へ。
横川シネマさん。
全国一斉プレミアム試写会では、吉岡睦雄さんが広島から中継してくださった映画館です。シュシュシュの娘の上映の際には伺うことは叶わなかったけれど、偶々近くへ訪れることができました。
ふと劇場を見渡して、映画館の座席に座って考えるのは、これまでに映されてきた沢山の映画たちと、そのスクリーンの光に照らされてきた大勢の人の人生。そこに交差する場所だから、劇場を出るころにはいつも不思議な力を得て歩き出せるのだと思います。
ミニシアターのある町はどこか落ち着く風情がある。
知らないはずの場所なのに、ひさしぶりに帰ってきたような気持になる。
カラフルで煌びやかすぎないけれど、光がともる場所には人情が行き交うような、背伸びのいらないちょうどよさ。居酒屋があって、古本屋があって、商店街があって、その街の景色に映画館が溶け込んでいる。特別な贅沢や流行りの娯楽、ばかりでなく、なんとなくふらりと立ち寄れるような距離に、映画があればいい。高ぶらせたいときも、悲しいことがあったときも、映画館の座席の上で呼吸をしてきたように思う。
俳優というお仕事は、決して簡単にいくものではないけれど、映画と歩める人生を選んで後悔したことは一度もない。
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https://www.shushushu-movie.com/
この状況がなければ生まれなかった入江組のこのスタッフ、キャスト達での結晶です。
インターンスタッフさんたちの言葉や、全国のミニシアターさんからのメッセージ、パンフレットやホームページのかわいくて丁寧なデザイン、スチールの伊藤奨君の写真、クラウドファンディングや現場でサポートをしてくれた沢山の方々を想い、 ここでなければ出会えなかった人たち、感じられなかった景色ばかりだったと振り返る。何か自分で「役」にたてることは無いかと皆が手さぐりに、それぞれに見つめる少し先の未来のこと、それぞれに胸に灯す目標をこの撮影の中でより強くしなやかにしながら、現場を離れれば各々の人生に戻り、月日を重ねて再び、映画のもとへと集結していく。
簡単には出会えないからこそ、駆け付けられないからこそ、いざ巡り合ったときの密度は何倍にもなると信じて、また明日もがんばろうと眠りにつく。
時間が過ぎ去っても、映画は残っています。それが勇気になる。
これから映画に出会ってくれる人たちへ。
映画館で言葉を交わせなかった人たちへ。
傍で笑って思い切り映画を楽しめる未来に向けて。
現在上映中の映画館さん、これから上映を迎える映画館さん、
近郊にお住いの皆様。
映画の中で、この1年の色んな感情を一緒に噛みしめ、
共に歩き出すことができたら幸いです。
そしてまたいつか、映画文化のもとで再びお会いできますように。
これからも『シュシュシュの娘』を、
わたしたちを、宜しくお願いします!
根矢涼香