見出し画像

1985年のスーパーマーケットファンタジー

『 SUPERMARKET FANTASY』(2008年)と名付けられたMr.Childrenのアルバムがある。

ボーカルの桜井氏は、発売当時「スーパーマーケットというのは消費文化の象徴」、「消費されることをポジティブに捉えたアルバム」と語っていた。聴き手の身近な日常を表現したものといえる。

スーパーマーケットは、現代の消費文化を最も象徴するものの一つであるが、所帯じみたイメージが強く、ポップな世界観とは相いれないようなものに思われ、あまり歌詞に歌いこまれてこなかった。

アートディレクターの森本千絵がアルバムのデザインをディレクションしているのだが、タイトル案を提示したのも彼女である。スーパーマーケットという世俗的なものにファンタジーという言葉をかぶせたのは新鮮に感じられたが、評論家・小説家の黒川創がすでに演出家・如月小春を評するコラム(『思想の科学』NO.63・1985年6月号)で「彼女(如月小春)は、路地裏のガラガラと戸を開ける駄菓子屋の奥にではなく、自動ドアの向こうのスーパーマーケットの通路にこそ、今の子どもたちのファンタジーが存在していることを、ある生理的共感をもって知っている」と書いている。

「彼女の戯曲におけるモチーフは、一貫して超現代的な都市」」それは「どこかなまなましい生活感をたたえ」ているがその生活感こそ、スーパーマーケットなのである。2008年に『SUPERMARKET FANTASY』というアルバムタイトルを目にしたとき、日常的な場所にファンタジーという用語を組み合わせた新鮮さを感じた。意味合いは若干ずれる面もあるが、1985年の雑誌にすでに提示されていた。黒川創の視点の切り口は鮮やかである。

#Mr .Children #SUPERMARKETFANTASY  #黒川創 #如月小春 #思想の科学



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?