数十年の探し物


自分が、子供の頃 (8歳~9歳のころ)
たまたま テレビで観た、アニメーションがありました。

お休みの日の午後 だったと思います。
長編のアニメーションで、綺麗な絵でした。

その放送が、どこのチャンネルだったか、映画の再放送だったのか、スペシャル番組なのか… どんな趣旨だったのか、何も覚えていません。

テレビをつけたら、“たまたま” やっていたので、
なんの気になしに途中から 観はじめたもので、細かい事は意識をしていませんでした。

見始めて すぐに夢中になり すっかり その世界に のめり込んでしまいました。

火の国の王子と、水の国の王女が 恋に落ちるのだけど、相反するので、結ばれるのは難しい…というような… 話だったような…

ストーリーにぐいぐいと、引き込まれ、いったいこの先はどうなってしまうのか! と、自分の事のように、ハラハラしながら、観ていました。

が!、突然 母が “もうテレビの時間は終りだよ”

とテレビの電源を切ってしまったのです。

“ぎゃ~~~っ!!”

その時、母の機嫌は非常に悪く、テレビをつけることは 到底許される雰囲気ではなく、強制的に、物語りは中断してしまったのでした。

幼い子供のなんと無力な事でしょうか。
しかも、それに従う 従順さ…いま、思い返しても、よく従ったと思います。

(これが、もし 我が息子達なら、TVのリモンコンを握りしめて、『ヤダよぉ!!』と逃げ回り、言う事きかず、テレビ試聴権利を死守しそうです)

TVは途中で、終えてしまったけれど、私の中で、その物語りの炎をは 燃え続けていて 思っていた以上に、しばらく頭から離れず、続きはどうなったのか、そして、熱病のように、そこに出てくる王子様に、もう一度 会いたくて会いたくて(観たくて)
切なく 頭にある残像の王子の顔を思い浮かべるのでした。

どのくらい会いたいかというと半分 恋してしまっていたような、それくらいの会いたいさ加減でした。
何度も何度も、王子の顔を反芻しては、観たい…と思い詰めていたのです。


そのアニメーションのタイトルを私は わからず、翌日学校で、友人に聞いても 観ていなく、前日の新聞のテレビ欄を調べれば良い物を、それも思い付かず(当時の小学生の検索手段の思考レベルなんて 無知無力です)

でも、すぐに、わかるだろうと楽観的に考えていたふしもありましたが、 全く 手掛かりはなく、そのまま 月日だけが、何年も過ぎてゆきました。

成長してからは ふと思い出しては、
制作会社から考えて、
ディズニーではないか? 手塚治虫さんか? タツノコプロかな? 全く日本の物では無く洋物だったのか…? なんて調べましたが、

どれも違うようでした。

大人になってから、時々 友人に話してみたりしましたが、わかる人は、居ませんで…

したが、

それが、先日、とうとう自力で 知る事ができました。

ネットで色々検索をしていたら、たまたま『あれ?これはもしや!。』

と、思うものが、あり タイトルを知り、真剣に調べてみたら、きっとこれだ、そうだ…と、記憶のパズルが当てはまっていきます。ドキドキしながら、検索検索。

え、しかも なんと、DVDが 出ているとのことです。

そのまま ネットで ポチっと購入しました。

そして、翌日 到着。

調べて、五分後には 全てが明らかになり、その物を、その場で指一本で 数秒で 購入できる。

翌日にはもう 手元に届いているなんて!!!

一体 どういう事でしょう。なんて凄い世の中なんでしょうか。

スマホの世の中、いつでも検索、なんでも検索、いつでも買い物、なんでも買える。いつでも誰とでも繋がれる… 20年前なら魔法です。

数十年も思いを馳せていたのに、最後は、呆気ないほど あっという間でした。

『シリウスの伝説』


1981年 制作されたもので
制作会社はサンリオ。サンリオの20周年記念制作映画でした。

サンリオ… 。 ノーマークでした。

実は有名な作品なんだそうですが、そうとは
知りませんでした。

それと、私の記憶が違っていて、水の国が王子で、火の国が王女でした。

ドキドキしながらDVDを観ました。

記憶は殆ど 残っていなかったけど、
見始めたら、幼心にも、美しいと思ったあの絵と、ドキドキする恋の気持ち、それと全体に漂う妖艶さが、蘇ります。

そして、王子!!!!
あぁ、あの時のアニメーションだと、
胸が熱くなりました。

そして、最後はそんな結末だったなんて…


30年以上の時間を経て
やっと 全てを 観ることができました。

昔の初恋の人に会ったような気持ちです。


子供と、観ましたが、これは 恋も、愛も 知った 大人のアニメーションかな。
女の子は好きかもしれません。


なぜ、このアニメーションを、あの日にテレビで、やっていたのかわからないけど、このアニメーションに 偶然でも、出会えた事は 本当に良かったです。

この物語の全体の雰囲気が、幼少期の私の心の琴線に触れたとは…… そのセンス 自分、最高だと思いました。


私は、 子供達とテレビを観ていて
もう消そうと、いう時に

『待って! お母さん
もうちょっと コレ観たい。』

と、言われると、

“じゃ 見せてあげなきゃ” と、

ずるずると、テレビをつけてしまうのは、
私の幼き頃の、“突然の終幕” の無念さが
そうさせて いるんだと思います。


私は何十年も 君に会いたかったんだよ。

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