恐怖で体が震えてその振動で
誰も居ないはずのオフィスの電気が付いている。
ここは市内のオフィスビルだ。
空調の音も鳴り止む深夜、防災センターから懐中電灯を持ってカツカツと足を鳴らして見回るのが私の仕事。
中肉中背の半袖の制服を着た男の姿がガラスに写る。それが私。
誰も居ないはずのオフィスの電気が付いている。
いつもと違和感を感じて歩みを早める。
足音は反響して静寂に波紋を立てる。
ドアを開け、中に入る。蛍光灯がオフィスの手前半分デスクを煌々と照らし奥は薄暗く人は居なかった。
『どなたかいらっしゃいますかー?』
もちろん誰も居るはずなど無く、返事はなかった。
電気を消そうとスイッチに目をやる。
後ろに気配を感じ、咄嗟に振り向く。
中肉中背の怯えた顔が入り口のガラスに写る。私だ。
私の後ろに目を凝らすとガラスに人影がぼんやり見える気がする。
振り返るべきか。否か。人は居るはずがない。
懐中電灯を握りしめゆっくりと振り返る。
🤡