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ChatGPTを活用したファクトチェック

少し前に『サクッとわかる ビジネス教養 新アメリカ』という本を刊行しました。

この本を編集するときChatGPTを駆使しました。

これまでのChatGPT活用法としては、本のタイトルや帯コピーを考えるときがほとんどでしたが、今回は事実確認(ファクトチェック)に使用しました。

今回は、私が活用した、新たなChatGPTの使い方を紹介します。

いつも以上にウラとりが必要だった


『サクッとわかる ビジネス教養 新アメリカ』(以下「アメリカ本」)は、アメリカについての幅広い知識を解説した本です。
歴史をはじめ、地理、宗教、政治、法律、軍事、教育、カルチャー、ビジネスといった事柄にプラスして、人種差別、格差、分断、銃などのアメリカの問題点にも焦点を当てています。アメリカについて多岐にわたるジャンルを紹介した本です。

そのため、さまざまなジャンルのファクトチェックが必要になりました。

私の在籍する出版社には、事実確認を担当する「校閲部」という部署はありません。また、「アメリカ本」では、外部の校閲者に依頼もしませんでした。

その結果、編集サイドでウラとりをする必要が生じたのです。

ふだんから、本に書かれていることが正しいかどうかを調べる「ウラとり」をしていますが、通常は、あるひとつのテーマを深掘りしていくため、ジャンルが多岐にわたることはありません。

いくつかのジャンルについてだけウラとりを行えばいいため、いくつかの情報ソースが見つかれば、それを中心に確認していくことができます。

「アメリカ本」では、さまざまな情報ソースが必要だったため、事実確認をするための作業が大幅に増えたのです。

そして、今回それを大幅に助けてくれたのが「ChatGPT」と「グーグル翻訳」だったのです。

どんなことをChatGPTで調べたか?


基本的にウラとりを行うには、信頼できる情報ソースが必要です。
信頼できる専門書や信頼できるWebサイトなどがそれに当たります。

たとえば、今回の「アメリカ本」では、「AMERICAN CENTER JAPAN」というサイトを活用しました。

ここは在日米国大使館が提供しているデータベースサイトで、政治や社会、文化などの情報がまとめられています。国務省やホワイトハウスの刊行物についても掲載されています。

大使館ですから、このサイトに書かれていることは信頼できると判断できますので、ファクトチェックの情報ソースとして活用できます。
実際、歴史ジャンルを筆頭に、とても助けられたサイトです。

しかし、「アメリカ本」では、このサイトに掲載されていないジャンルの情報も多数取り上げています。

つまり、別のサイトや専門書などでのウラとりが必要だったのです。

ネットでウラとりをするとき、基本的には通常の「キーワード検索」を行っています。
検索結果に出てくる中から、信頼できるソース、たとえば世界銀行や大手新聞のWebサイトなどで情報を確認していきました。

キーワード検索でも見つけることができなかったときに、「ChatGPT」と「グーグル翻訳」を活用したのです。

まず、文章(プロンプト)でChatGPTに聞き、情報ソースのURLもあわせて教えてもらいました
それらの多くは英語サイトでしたので、グーグル翻訳の登場です。「ウェブサイト」タブでURLをコピペして、Webページに書かれている英語を日本語に翻訳してもらうという方法です。

そして、それを読んで確認します。念のため、該当ページのPDF保存やキャプチャ保存もしました。

この作業を、何度も繰り返しました。

実際にこの方法で確認したのは、たとえば宗教のプロテスタント、カトリック、イスラム教徒などの人口割合についてのウラとりです。

実際に以下のような質問をしました。

> アメリカの宗教について教えてください。
> アメリカに住んでいるカトリックのうち「白人、ヒスパニック、その他」に
> 分けたときの割合を教えてください。
> プロテスタントも3つの割合を教えてください。

上記への回答があったあとに、追加で以下の質問をしました。

> プロテスタントについてもう少し詳しく教えてください。
> 「白人福音派、白人福音派以外、黒人、その他」に
> 分けたときの割合を教えてください。

さらに以下のように質問をしました。

> このプロテスタントの割合を表やグラフになっている
> サイトのURLを教えてください。

そして、入手したURLを「グーグル翻訳」の「ウェブサイト」と書かれているところに貼り付けて、日本語でページを表示させて確認していきました。


このような方法で、アメリカンフットボール・NFLの資産価値ベスト3の金額のファクトチェックでも行いましたし、メジャーリーグベースボールと日本のプロ野球の平均年棒の比較のときも、メジャーリーグ選手の平均年棒をこの方法を使って金額を確認をしました。

もちろん、これらだけでなく、多くの情報を「ChatGPT」と「グーグル翻訳」を活用してウラとりをしていったのです。


信頼のおけるサイトかどうか?


海外のサイトでウラとりをするときに大変だったのは「信頼できるサイトかどうか?」の判断です。

ウラとりの情報ソースとしてWikipediaは、残念ながらNGです。Wikipediaに記事を書かれている方が、誰であるかがハッキリしないからです。
Wikipediaは、大まかなことを知るには適したサイトで、とても便利なサイトですが、ファクトチェックには向かないのです。

実際に、ChatGPT上では、以下のようなプロンプトを使いました。

> 信頼できるサイトのURLを教えてください。
> 「信頼できるサイト」とは省庁や大手シンクタンク、大学などです。
> Wikipediaは信頼できるサイトには含まれません。

上記のようなプロンプトを書いて、省庁やシンクタンクなどのサイトにて確認していきました。

そのとき日本のサイトであれば、省庁や大学だけでなく、○○総研や△△研究所、独立行政法人など、名前を聞いただけで信頼できるかどうかを、ある程度、見極められます。

しかし、海外については、基本的な知識を持ち合わせてないため、名前を聞いただけでは判断できません。
もちろん、アメリカ国防省のようなわかりやすいところはありますが、◇◇Centerや□□Instituteのような名前は、聞いたことがありません。

たとえば、「Pew Research Center」というサイトには、具体的な数値データの情報が多く、ウラとりに適した、知りたい数値データも多数、掲載されていました。

しかし、私の知識では「Pew Research Center」が信頼できるかどうかを見極められなかったのです。

そのため、まず「Pew Research Center」について、ChatGPTに教えてもらいました。
「信頼できる」という回答が出てきたのですが、それでもまだ「全面的に信頼してOK」という確信を持つことができませんでした

最終的に、信頼できる日本の専門書に「Pew Research Center」を参照したデータが「出典」としてたくさん掲載されていたのを見つけることができたので、「信頼できるサイト」と結論づけました。

このようなChatGPTでのウラとりを何度も何度も繰り返した結果、ChatGPTの使い方に慣れていきました。

求める結果の出やすい質問の仕方(プロンプト)を、少し身につけることができたと思います。

「アメリカ本」では、このような海外サイトで得る情報が多く、本当にファクトチェックに時間を要して大変でしたが、ChatGPTのスキルを身につけられた、とてもいい経験でした。


※以下は、今回の記事に出てきた「アメリカ本」です。



文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

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