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フードエッセイ「アイスクリームが溶けぬ前に」 #20 一番亭(三島)
町中華の雰囲気しっかり感じられるチェーン店が地元にあることに、つい嬉しくなってしまった。
チェーン店だけどチェーン店と言われなければ、町中華・町食堂といってもいい。一番亭には、町中華が持つ雰囲気、味、香り、景色があった。
効率を重視し、機械が調理をしたり、電子レンジやオーブンなどで温めて料理を提供するチェーン店もある中、一番亭は鉄鍋を振って作ってくれたり、ラーメン店同様に、麺を茹で、かえしとダシ、メンマやチャーシューを合わせてと、人の手が感じられる。
セットで頼んだ肉野菜炒めは、食材を炒める際の鉄鍋とおたまが当たる音、食材を炒める過程での油の匂い、厨房からの熱気が、少しはなれた距離でも伝わってきて、オープンキッチンの世界に入り込みたくなる。
ハーフラーメンセット、ご飯大盛り。わんぱく感がいつになっても拭えない。
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中華そば感ある醤油ラーメンは、幼少期に近所にあった行きつけのラーメン屋さんを彷彿とさせるスープ。これだけでお腹いっぱいになるのも悪くないが、外食するならひとつでも多くのメニューで満たされたい欲求が勝り、隣にある肉野菜炒めへコートチェンジ。
鉄鍋で炒められてるからか、見た目が違う。焼き目がついた野菜と肉、油にコーティングされたことでツヤが出た食材たち。食べる前から美味しいのが確信に変わる。肉野菜炒めをライスにバウンドさせ、頬張っていく。濃いすぎない塩梅を考えられた味付けが、ライスを口に運び込むスピードを加速させる。その合間に、ラーメンのスープ。中華の大満足三角形の完成だ。
チェーン店はサービスの質の安定が保たれていて、食体験は味気ないものだと思っていた。が、一番亭は違った。「食堂で物流を支えたい」という他とは異なるスタートだからこそ、ぼくたちの暮らしに近い存在なのかもしれない。
さて、一番亭でのご飯が終わったら、決戦の場へ行くとしよう。
心身満たされたこの状態なら、うまくいくはずだと信じて。
ごちそうさまでした。
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