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ミンくんが笑ってくれたギャグ作品


2年前、ぼくがnoteに登録するきっかけとなったのは、藤岡拓太郎さんのギャグ漫画が見たいからであった。


僕は普段、漫画を一切読まない。漫画を読んでいて、次のコマに差し掛かった際にどこの文字から読めばいいのか分からなくなる程に読まないし、苦手である。

漫画の空想の話にあまり付いていくことが出来ないので、彼の描く、短くて、どこか現実的で、気持ち悪いキャラクターを描く彼の漫画は僕のツボであった。

当時、彼のギャグ漫画は本にはなっていなかった為、作品はネット上で見ることしか出来なかったのだが、去年の夏に夏がとまらない」(ナナロク社)という彼の単行本が発売された。


彼のこれまでの作品が凝縮された1冊で、そこに描かれる1ページ漫画はどれも面白かった。

彼の作品の醍醐味は、日常に不気味なキャラクターや設定がされていることである。


僕は、多くの人に「夏がとまらない」の面白さを知ってもらいたかったので、当時、働いていた飲食店に、この本を自分のお店に持って行ってアルバイトの子達に見せたことがあった。

面白がってくれるだろうと思って、僕は興奮気味で見せたのだが、店長だからといって愛想笑いを明らかにしている者や、「まぁ好きです。」と反応が薄かったりする。

たしかに、ハードルは上げ過ぎたかもしれない。

いかんせん僕はワンピースやNARUTO?(漫画名すら出てこない)を見たことがないから、漫画に対する尺度が他の人と違った可能性はある。

それでも、共感して大笑いしてくれる人も居て嬉しかったし、そういう人に限って気が合うと思っていたから、笑いの感覚は大事である。

アルバイトに、ミン君(21)という男の子がいた。

ミン君は、ミャンマー出身である。

腰が低くて、頭が良くて、日本語も日常会話は問題ないのだが、いきなりタメ口になったり、スキンシップが激しかったり、笑うポイントが違ったりする所は、やはり外国人だなと思わせる点があった。

僕は、営業が終わったあとにラストまで一緒だったミン君に「夏がとまらない」を見せてみた。

僕は、ミャンマー出身の彼がどういう反応をするのか楽しみであった。


まず、彼はこの表紙の漫画をみて真顔でこう言った。

「・・・かむ。これでオワリ??どういうことですか??」

確かに、どういうことかと言われたらそれまでであったが、僕は1から丁寧にどういう点が面白いのかを解説してみた。

ぼく「普通、この流れでは、ここは噛まないというのがお決まりのパターンというか、この人の言い方が・・・。」

ミン君「はァ???????」

拓太郎氏の描く作品の笑いというのは、なんとも言葉にしづらい面白さなのだ。

そして次のページからは、ミン君がまず読み、僕が解説をして、ミン君が少し理解して笑う。という謎の読み聞かせをした。

ミン君は、その読み聞かせを楽しむと同時に、真剣に取り組んでいた。

憶測ではあるが、日頃の生活で、なにが面白いのか分からない場面がたくさんあったのだと思う。

「ベンキョウになる。」とまで言い出して、本のタイトルをメモり出したのだ。

そんなつもりはなかったが、見せた甲斐があった。

そして、その後も僕は1ページずつ解説を続けていったのだが、もしかしたらミン君が僕の解説なしで笑ってくれる作品があるのではないか。

それを期待している自分がいた。

僕は「あー、これも、分からんかぁ!」とか言いながら、懸命に解説を続けること、67ページ目。

遂に、ミン君は笑ったのた。

それが、この作品だ。


飲食店という身近な設定と「愛してる」というシンプルな言葉で、ミン君は理解できたのだろう。

しかし、それが本当に拓太郎氏が意図した笑いで笑ったのかは分からない。

単純に、ここで描かれた夫婦愛にほっこりして笑った可能性はある。

だけど、もはや彼が笑った理由なんてどうでも良かった。

僕は、家からわざわざ持ってきた「夏がとまらない」という推奨した本で笑ってくれただけで嬉しかった。

僕はすぐに満足して、68ページ目は見せずに本をカバンに速攻しまって帰宅した。

「夏がとまらない」には、そんな懐かしい思い出がある。

そして、そんなことを思い出しながら、藤岡拓太郎さんの原画展「夏がとまらないですね」にいってきた。

大阪の「black bird books」という場所で開催していて、小さな本屋であるが、とてもこだわりを感じ、つい長居してしまう空間であった。

そこでしか見れない作品も飾ってあり、合言葉を言ってポストカードも手に入れた。

いま、僕はお店を作ってる途中だ。

いつか原画展をコラボレーションするのは夢の一つある。

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ShunyaNishida
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