【オタ活】CISOSE2024 インパーマネントロスに関する研究発表会
初投稿となります。
先日、7/15〜18にて中国・上海にて開催されました、IEEE CISOSE 2024に参加し、論文発表をして来ました。
私はdefiオタクで、defiが大好きです。
ドキュメントを読んだり、twitterやdiscordを使って、友達と意見交換したりすることが好きです。
そういった延長で今回、論文を執筆し、発表してみた次第です。
せっかくですので、論文の内容をnoteにまとめたいと思います。
論文のタイトルは「Rebalancing Threshold Strategy with Trend Following Against Impermanent Loss」
uniswap等のAMMにおける流動性提供をした際のインパーマネントロスの抑制手段について述べています。
uniswapのようなAMMへの流動性提供は現在でも最も盛んに行われており、私たちは二つのトークン(x,y)をペアとしてAMMへ預けます。AMM上ではx*y=kという非常なシンプルな式に則して、価格変動に伴ってトークンペアの量が変化します。
インパーマネントロスとは、単に2つのトークン(x,y)をそれぞれ保有していた場合に対し、(x,y)をAMMに提供した際の損失として定義されます。
インパーマネントロスの特徴として、価格の変動に伴なって、損失が累積的に増大することが挙げられます。
この累積的な損失の増大を抑制するための策の一つとして、「リバランス」が知られています。
リバランスとは、価格の変動によって、増加した片方のトークンを市場で売り、もう片方のトークンを買い戻すことを指します。私たちはしばしば「価格がx%変動する毎に、増えたトークンを増えた分だけ、減ったトークンにswapする」というルールで自動処理をします。この時、相応のインパーマネントロスが固定されます。
インパーマネントロスが価格の推移に伴って、累積的に増加するという性質を持っていますので、単調な価格推移においては、より小刻みにリバランスを実施し、損失を固定していくほど、最終的に損失の合計をより効果的に軽減できると言えます。(下図)
さて、例えば、上昇傾向の価格変動において、「上昇方向への累積的な損失を抑える」ことがリバランスを実施する上でのエッセンスです。しかし、実際には価格変動は単調ではなく、上がったり下がったりを繰り返します。「価格がx%変動する毎にリバランスする」というルールの下では、価格上昇時にリバランスが執行されることもあれば、下落時にも執行されることがありますが、下落方向のリバランスの発生は、結果的に不要となります。小刻みなリバランスは、傾向とは逆方向の不要なリバランスをより多く誘発し、損失を増やします。(下図)
よって、リバランスをどれくらいの変動毎に実施するかというルール作りに着目した時に、リバランス一回あたりの損失、不要なリバランスの発生数において、トレードオフの関係にあることが言えます。
そこで、わがままな私はこういったことを考えます。
「価格の傾向と同方向には、小刻みにリバランスを行いたい!けど、傾向とは逆の方向のリバランスの回数はなるべく押さえたい!」
⇨価格の傾向に沿ったルール作りをすることが全体の損失を抑える上で理想的な感じがします。そこで、本稿では価格の傾向を踏まえた、リバランスルールのモデルを作成し、検証を行いました。
以下のモデルについて、損失を比較しました。
まずはcontrolです。
価格pnを基準として、価格がr%動いた場合にリバランスを実行します。(下図のように閾値が設定されます)。リバランス実行後、実行時の価格を新たな基準価格pn+1とし、pn+1に対しても同様に価格がr%動けば、リバランスを実施します。
次にtreatmentです。
あらかじめ、rを任意のtick数で分割しておきます。
n回目のリバランスにおいて、上方向か下方向かで実施されたかによって、tickに沿ってn+1回目の閾値が変わります。
treatmentA
treatmentAでは、n回目のリバランスが上昇方向で発生したか、下降方向で発生したかによって、n+1回目の閾値の取り方が変わってきます。n回目の価格変動と同方向の閾値がrより1tick減り、反対方向は1tick増えるイメージです。
treatmentB
treatmentBにおいては、treatmentAと考え方はほとんど同じですが、n+1回目の閾値はn回目の閾値に対して、tickを増やすか減らすかを選択するため、閾値の取り方のバリエーションが増えます。
Result
arbitrumチェーンのalgebra; arb/steurペアを対象にシミュレーションにて、効果を検証しました。48時間の価格データをとり、各モデルによって固定されたインパーマネントロスの合計を比較しました。
treatmentA,B共にcontrolに比べ合計の損失が少ない結果となりました。
本実験でのモデルはn回目のリバランス実行時の価格変動を「価格の傾向」とし、n+1回目のルールを決定するというものでした。しかし、「価格の傾向」をどのように定義するかまだまだ不勉強ですので、より深く理解する必要があります。
コラム「観光編」
学会後、一日フリーな時間がありましたので、上海観光をしてきました。
渡航前に、ネット等で調べてもあまり情報が転がってなかったので、楽しみ半分不安半分でしたが、上海は本当にいい街でした。東京よりもはるかに都会で、物価は安く、大満足でした(もう3日くらい観光する時間があれば、、笑)
starbacksロースタリーにも行ってきました。
世界に数店舗しかない特別なスタバで、コーヒーを使ったお酒の提供もあります。(日本にもあります)