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「分断」が生む、つながり。第2の実家、「リビングルーム!」

「会員以外は、お店の場所を知ることも、入ることもできません。」


ここは千葉県のとある田舎にある住所非公開のカフェ、「リビングルーム!」。


オーナーを勤めるのはワタナベさん。
飲食業や公務員を経て、実家の家業と並行しながら運営している。


「コンセプトは第2の実家。飲食もお仕事もできて、ソファーでくつろげる場所です。」


現在の会員数は約250人ほど。クラウドファウンディングで1度だけ会員を募り、公開販売は終了しています。

「みんなに開かれたユニークな飲食店を作りたくて、3年ほど前からオープンを検討していました。でも、コロナ禍が始まると、世の中の「分断」みたいなものを感じてたんですね。」

「マスクをする・しないでも、人の考えってこんなにも違う。その中で"みんなが、開かれている場所に集まる”って行為が、ちょっと不可思議だなと思いました。」


ターゲットを決めて、事業を進めるのが飲食業の王道。

しかし、世間に開かれた店には来て欲しいターゲット以外のお客さんも来店する。

そうすると、お店のレビューも大きく変化してしまう。

「結局来てほしいターゲット以外のレビューが、全員に見える場所での評価に反映されてしまうって、すごく違和感があると思うんです。

お客さんも期待していたものが得られないと、そりゃ満足できない。だったら来る人を絞ってみよう。そして、僕もお客さんもお互い気持ちいい店になればと思ったのが、会員制にしたきっかけです。」


1人で切り盛りする店舗の内装は、すべてDIY。


店内は、ぐるりとたくさんの本に囲まれている。

多くを語らずとも本の選書からワタナベさんの人間味が伝わるよう、工夫しているそう。


「僕のルーツはこれなんですよね。まだ他の人から理解されにくい、論理的でアカデミックなものです。実用書とかビジネス書は図書館でも揃えないものが多いです。」


そう言ってお気に入りの本棚を指差す。

「よく来店されるのは、単純に家から逃げてきたい人や1人になる時間がほしい人、社会の目を気にせず家族とゆっくりと過ごしたい人。


田舎って車社会で、すぐに『あそこにいたよね』って話になるんですよ。でもここは交通量も少なく、奥まった場所にあって、看板もない。


そういう空間が、その人の生活を充電するんです。」


食事も読書もできるが、ただのカフェではない。
ただ、 初対面の人でも会話は弾む。

「”クラウドファウンディング” ”会員制”ってある種高めのハードルを設けたことで、価値観も近い人と出会える。ある種大学みたいな集め方。だから、会員さん同士で繋がり、ここで仕事に発展することも多いんですよ。仲良くなって他に出かけたりとか。」

店主と会員とで共通点が存在する。
あえて社会と分断された空間になめらかで、安心感のある空気が漂っている。

今後、リビングルーム!は、人々にどのように楽しまれるのだろう。

「この場所は誰かの実家としてこのままあり続ける。必要になったときに来る場所。それでいいと思います。ここでの繋がりこそが資産になる。だから、別に店の外とかでもいいので、どこかで「爆発」してくれたらいいなって。


爆発?

「そうそう。この空間の中だけで何か新しいものが生まれてほしい!っていうわけじゃなくて、気の合う人と出会い、ここじゃないどこかでも何かを企てる。そんなふうになればいいなと思っています」

起業家、個人事業主、家族、子どもなど、さまざまな人たちが集う不思議なカフェ。

ワタナベさんは会員さんが子どもを連れてくることについて、嬉しそうに話してくれた。

「子どもが親以外の大人と話す機会が生まれるのがいいなと思うんです。他の大人と出会うことで、この地域で働くことの選択肢を知れるんです。子どもの世界は、学校というある種の閉鎖空間と家との往復になってしまいがち。だから、彼らにはここにきた時に『そんな選択肢もあるのか!』って思ってほしいですね」

「もしかしたら教室では異質だった自分が、外では普通だった、ということがあると思うんですよ。子どもたちにひと言うならですか?そうですね、異端であり続けてほしいです。あぁ、甘いもの食べたいな。」

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