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たったひとりに喜んでもらうための創作

何かを学ぶってとても大切なことですよね、それは誰もが知るところ。ではあなたは何のために学ぶのでしょうか?と問われたらどうでしょう。資格のため、仕事ため、将来のため、人それぞれ目的はいろいろありそうです。

でも学ぶ目的ってそんなに特別大きくなくても、もっと身近なことでもいいんだな〜と思った出来事があります。


それは私が以前、京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)の通信教育部で講師をしていた時の話です。

通信教育部は好きな時間に学べるオンデマンド授業がメインの学科。場所を選ばず自分の生活に合わせて受講することができるため、お仕事を持ちながら学ぶ方などを中心に、幅広い年代の方々が在籍されています。


私がその時に受け持ったのは「Adobe IllustratorやPhotoshopを使ってLINEスタンプを作る」という講座。デジタルツールの操作方法を覚えながら、イラストレーション・キャラクター設計などを同時に学ぶという内容でした。

その講座を受講してくれた60代の男性
これまで長く勤めていた会社を定年退職したあと、新しいことにチャレンジするために参加されたそうです。その姿勢、見習いたいものです。


今回は自画像をイラスト化したスタンプを作りたいとのことで、慣れないデジタルツールに苦戦しながらも前向きに取り組んでらっしゃいました。

「誰に送るスタンプを作ってるんですか?」という私の問いに、「妻へ送るLINEスタンプを作りたいんですよ」との答え。制作中のスタンプを見せてもらうとそこには自画像に添えられた「いつもありがとう」の言葉が。


キューーーーーーーーーーーーーーーン。


撃ち抜かれました、心を。あまりの衝撃で、あやうく私はその場でキュン死してしまうところでした。

愛、あふれすぎ。

「いつもありがとう」。シンプルな言葉だけれど、この「いつも」がいい。きっと普段から言葉でも感謝の気持ちを伝えているんでしょうねこの男前は。


学んだことをそばにいる人のために活かす、たったひとりに喜んでもらうために創作する。そうか、それでいいんだよなと思いました。それが出来る人は、きっと同じようにより多くの人をも喜ばせる力を持っているでしょう。

私も物を作る人間の端くれとしてそうありたいなと、講師のくせに逆に受講生から学ばせてもらった出来事でした。


ちなみにもし私が自画像をLINEスタンプにして妻に送ろうものなら、「こんなん作ってる暇あったら家事のひとつでもせえよ」と呆れられそうなもの。(もしくは既読スルーか)

まずはしっかりと関係性を築くところから始めなければいけないなと、その道のりの長さを痛感するのでした。





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サタケシュンスケ(イラストレーター)
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