【第三十五場…ドクダミシィとクレクレンの人たち】

 五年かけて海を戻ったドクダミシィは、南ハレリカ大陸に再上陸しました。陸に上がってからは、ゴロゴロ転がって大陸縦断移動をしていきます。目指すは北ハレリカ大陸です。この二つの大陸はかろうじて陸でつながっているので、泳がずに渡れます。ドクダミシィは、おなかがペコペコでしたが、ありがとうエキスの残っている所は、ありませんでしたので、まっすぐにカスベガスを目指します。
 カスベガスから五百キロほど手前にクレクレンという都会がありました。そうです、ドボロウくんの故郷です。ドクダミシィは、十年前にもクレクレンに寄ったのですが、おいしいありがとうエキスには、ありつけませんでした。
 ちょうどドクダミシィが通りかかったとき、クレクレンでは、黒い服の人たちが会議をしていました。カスベガスというお金が使われなくなった街があるという噂が耳に入ったからです。そんな街が伝染病のように世界に広まったら、これまでクレクレンの人たちがせっせと貯めてきたお金がムダになってしまうではありませんか。蟻の一穴天下の破れと言って、小さな綻びから世の中は変わってしまうものなのです。小さな穴があいたらすぐに塞いでしまうに限ります。彼らは、どうやってカスベガスにお金の力を復活させようかと話し合っているところでした。
「おい、あれ」
 ひとりの黒服男が指さしました。ドクダミシィが転がっていきます。それを見たドボロウくんのお父さんが、言いました。
「あれは、十年も前に通っていったドクダミシィというバケモノだ。ありがとうエキスを吸って生きてるらしい。きっと、カスベガスに行くつもりだ。あいつについて行って、カスベガスをムチャクチャにしてやろう」
 ドボロウくんのお父さんはクレクレンのボスになっていました。クレクレンの人たちはお金のためなら何だってやる人たちです。その中でも、ドボロウくんのお父さんは、一番冷酷非道な男でした。みんな、手に手に武器を持って集まり、ドクダミシィのあとを追いました。

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