或る日本の 父の日の情景
今日は地区の役員会でした。
たくさんあった議題がかたづき、みな帰りはじめます。
会計のKさんが奥さんからのメールを見せてくれました。
"いま、マック。チーズバーガーいる?"
会計が、ぼくに訊きます。
「晩飯、チーズバーガーじゃろか?」
うれしそうに区長が言いました。
「だから、言ったろ。餃子の方がいいって」
よく分からなかったのですが、公民館を出るときに判明しました。
区長は、今夜の打ち上げに役員たちを誘っていたのでした。
場所は前区長の餃子屋さんというわけです。
ぼくは、つい尋ねてしまいました。
「今日、父の日ですよ」
「帰っても、何もしてくれんもん」
カギを締めながら、うつむきかげんで区長が答えました。
この町で、商売が成功している店舗は二軒しかありません。
その一軒の社長なんですか。。。
見送る彼の背中には、『よろしく哀愁』と書いてありました。
ここから、ぼくのタ-ンです。意気揚々と自宅へと戻ります。
「ただいま」と家に帰りましたが、電気もついておらずシーンとしていました。
台所に行くと、何もかかっていないのにガスの炎だけが見えます。
意味が分からないので止めました。
妻を見つけたので、火だけがついてたことを伝えると、
「お湯をわかしてた。今日、冷やし中華なの」
火のことは火事にならなかったので、いいとしましょう。
鍋などかかっていなかったけど、いいとしましょう。
しかしです。
ぼくは家族に公言しています。
冷やし中華が大嫌いだって。
高校の柔道部の夏合宿で、コーチが全員におごってくれた冷やし中華を食べませんでした。
食べなければ乱取り50回だぞと言われても、食べませんでした。
それくらい嫌いですし、何度もこの話はしているはずです。
この年になると、意地でも食べません。
紅生姜とか、くそくらえです。
存在意義がわかりません。
まあ落ちつきましょう。
勘のいいぼくは、役員会に行く前に、先日買っておいたホルモンを解凍しておきました。
何が起こっても傷つきたくないからです。
こういうのを 世間では防衛本能と言うんですか?
きのう買っておいた刺身も残っています。
断っておきますが、
ぼくはラーメンの中でも、つけ麺が大好きです。
新井薬師寺駅前の丸長のつけそばが今でも食べたいし、40年前に覚えたつけ麺の味は、津田沼の元祖つけ麺大王で、今のとは全然つけ汁の味が違っていました。
冷やし中華と変わらないじゃないかと言う人がいるなら、勝手に生きていけばいいと思います。
でねでね♪
一週間前から勘がさえていました。
つけ麺を買っておいたのです。
いつか、きっと役に立つ日が来るような気がしていました。
ぼくは、やつらの伸びきった麺のあとに、ちゃちゃっと麺をゆがきます。
もう、その頃には父の日だったことなんて、忘れていました。
ぼくのつけ麺の方がうまいに決まっています。
それだけでいいんです。
のっける具はホルモン野菜味噌炒めとなります。
なんとなく普段より会話のはずまない静かな父の日の晩餐でした。
がんばれ、日本の父ちゃん!
勝利の日は近いぞ!
よろしく哀愁!
ちなみに、
のAMEMIYAさんの歌は大好きです。