日本の行政とNPOの関係と政策起業家(3)
第1回は、NPOが行政に関わる4つの理由、そしてNPOと行政の3つの関係性の整理しました。
第2回は、日本の歴史的変遷の中でどのように関係性、パートナーシップが変わってきているのかについてを整理しました。
今回は日本のNPOがより社会に貢献していくためには、個々のNPOは、そしてセクターとして今後どうあるべきなのかについてを書きたいと思います。
日本のNPOの課題として、以下が挙げられています。
また「世界を変える偉大なNPOの条件」という書籍には、六つの原則が挙げられており、そのうちの一つに「政策アドボカシーとサービスを提供する」とあります。
これらのことからNPOは事業活動と政策形成活動を連動させていくことが使命であり、政策に影響力を持ち、なおかつ事業活動を行う政策起業家は、ある意味では本来のNPOリーダーの理想の姿の可能性があります。
しかし現実はそうなっていないことから、NPOを理想の姿に近づける存在としての政策起業家というふうにも捉えられます。
ただ一方で日本の市民社会のあり方については以下のように論じられているものもあります。
これまでの3つの記事をまとめると、
NPOと政府の関係は三つに分類されるが、日本においてはサービス提供者としての関係性が主になっており、共に政策を思考し、形成していくような関係にまではなっていないようである。またアドボカシーなどの機能強化は求められる一方で、「敵対的な関係」で活動するNPOは多くなく、また市民社会の中においても政策に影響を及ぼす集団は少ない状態である。
ここまで読んでいただいた皆さんはいかがでしたでしょうか?いろんな問いが生まれたのではないでしょうか?
セクター全体として、
・どうすれば政策への影響力を持つ回路を作ることができるのか?
・政府との関係性をどのようにすればセクターとしてアップデートできるのか?
・どうすれば市民社会としての力を高めるためにNPOは活動できるのか?そして市民社会から政策に影響力を持たせることができるのか?(世論をどう作り、どのように政策に訴えかけるのか?)
またもしNPOに関わっている方でしたら、
・自分のNPOはどのような理由から行政に関わっているのだろうか?関わりたいのだろうか?
・すでに行政との関わりがある場合には、どのような関係性だろうか?それをアップデートするためにはどうすればいいのか?
・他のNPOや団体とどんな連携をすれば政策への回路を開くことができるのか?
などなどぜひ一緒に考えていければ嬉しいです^^
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参考
原田峻(2020)『ロビイングの政治社会学-NPO法制定・改正をめぐる政策過程と社会運動-』有斐閣
Crutchfield, Leslie R and Grant, Heather Mcleod (2007) Forces for good : The six practices of high-impact nonprofits. John Wiley & Sons, Inc.(服部優子訳『世界を変える偉大なNPOの条件―圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則』ダイヤモンド社. 2012年)
Pekkanen, Robert (2006) Japan’s Dual Civil Society; Members Without Advocates. Stanford University Press(佐久田博教訳『日本における市民社会の二重構造―政策提言なきメンバー達』木鐸社. 2008年)
Tsukamoto, Ichiro and Nishimura, Mariko (2006) “The emergence of local non-profit - government partnerships and the role of intermediary organizations in Japan.” Public Management Review, vol8, no.4, pp.567-581.
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これまでの政策起業家に関する記事一覧はこちらになります。
また、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
日本では「政策起業家」に関する研究が非常に遅れています。
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「サポート」していただけますと大変嬉しく思います。
サポート資金は全額、「博士後期課程」への進学資金にさせていただき、
更なる政策起業家研究に使わせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いします。
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