「政策の窓」モデルから見る、成功する「政策起業家」の3つの習慣
前回記事の続きです。
これは政策起業家は活躍するフィールドによって自分の立ち位置を使い分けることを的確に言い当てている表現だと思います。
MSA理論では「問題の流れ」「政策の流れ」「政治の流れ」を合流させるのが政策起業家とありました。では、政策起業家はどのようにして「合流」させるのか?3つの習慣(戦略)について今日は見ていきたいと思います。
一つずつ紹介します。
①[素晴らしいストーリーを語り、聴衆の関心を惹きつける(アジェンダ設定)]
・政策研究では「エビデンス」だけでは政策変更できないというのが定説であり、誰かが、聴衆の注意と関心を喚起するような方法で政策問題について発言する必要があるとされています。
・アジェンダ設定に関する二つのポイントは、
→第一に、政策立案者は自分たちの責任のごく一部にしか注意を払えないので、ほとんどのエビデンスを無視して、少数の問題をアジェンダの最上位に推し進めてしまいます。注意を払うことができるのは問題の大きさや解決のための証拠ベースよりも、政策立案者の信念や影響力のある人たちからの説得戦略に関係しています。
→第二に、政策立案者は複雑な政策問題を単純な方法で理解します。そのため自分が気になっているもの、あるいはすでによく知っているものに注意を払う傾向があります。
・上記のことから政策起業家は、政策立案者に多くの情報を浴びせてはいけないことを知っています。その代わり「政策立案者が政策問題をどのように理解するかに影響を与える(問題ブローカー)」役割と、「この理解に最も関連する簡潔な証拠を提供する(ナレッジブローカー)」役割を果たしています。
・複雑な問題の単純な定義に焦点を当てることで曖昧さを減らし、その定義に関連する情報を収集することで不確実性を減らそうとします。
②[問題に注目を集め、実現可能な解決策を生み出す。(タイミングの重要性)]
・政策立案者は解決できない問題には目を向けないので、よく考え抜かれた解決策が注目を集める前にすでに存在していなければなりません。つまり政治とは、確立された解決策を追いかけることであって、政策立案者が問題を特定したときに解決策を生み出すことではありません。
→政策立案者が問題を特定し、解決策を策定し、その順番で選択するという政策サイクルは存在しません。
・解決策は「柔軟」にしておく必要があります。
③[それぞれの『窓』の固有の性質に合わせて戦略を適用させる。(機会の窓を作るための環境への適応)]
・政策起業家の戦略は多岐にわたることがわかってきています。
→より共感を得られる聴衆を求め、問題をフレーミングしなおします。
→複数の政策ネットワークに関与し、「汎用性の高い解決策」を様々なレベルの行政機関に輸入する機会を模索しています。
→異なる政治システムに適応していきます。
→問題を選挙の議論に結びつけて、国民の主要部分に明らかに人気のある解決策を模索することをします。
これらのことを行うと言われています。
上記のことから考察できることとして、すべての情報を処理できないことから、良いストーリーを語り、原因と責任を決め、危機や出来事を利用し、最も関連している証拠のみを参考に、聴衆が求めていることに合致させて政策を動かしていくという趣旨であると理解しました。一方で、「政策評価」の領域では、まさに上記のことが問題で複合的な視野を欠いた短期的な政策が生み出されてしまうからこそ、「評価のサイクルを適切に回していく」ことが大切であると言われています。
上記のことから、政策起業家が自分たちの「実現したい政策」という手法に拘らずに、「公益」にしっかりと焦点を当てて活動していることは大切だと思いました。
また、Mintromの論文で定義されていた「模範を示してリードする」に関しては一切触れられていなかったので、それが絶対必要条件なのかは更なる調査が必要だと感じました。
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参考論文
Paul Cairney(2018)”Three habits of successful policy entrepreneurs” Policy&Politics vol 46.
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