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政策起業とロビイングの違いについて(3)

 前回記事では、「旧ロビー活動」は「あまりに私益だけ」を求めすぎたがあまりに、1980年〜90年ごろに批判にされてきたことから「新ロビー活動」が生まれてきたというところまで書きました。

ここまでの流れについてはこちらをご参照ください^^

「新ロビー活動」は、「政策アクター(政治家・官僚)の政策決定・執行に何らかの影響を与えるために行われる利益団体の意図的活動全て」と定義され、「利益団体は『国に政策アクターから有利な政策を引き出し確保し、自己利益を守るため』にロビイングを行う」とされています。
また、「代表する企業に競争上の優位性をもたらす競争上不利となることを阻止するような情報を収集・選別・分析評価することをいい、さらには企業が情報を使って政治もしくは行政の意思決定機関に対して直接ないし間接的に行う働きかけであり、競争上の優位性を獲得または不利な状況の回避を目的とするものである。」としてます。


「新ロビー活動」においては、旧ロビー活動とは違い、「特定の法案ないし法律に関して、社会一般の人々に対して働きかけること」が重要とされ、「特定の法案ないしは法律に関して、その法案に関わる議員や行政府の職員に対して、社会一般の人々が要請を行うように求めること」も行います。具体的にはデモや署名活動などをいい、これらを「草の根ロビイング」または「間接ロビイング」と呼びます。

「草の根ロビイング」で行われる政策実現の手法として、「課題だと思うことを発信し、仲間を募る」「役所に行き、解決までのステップを確認する」「議員に会いにいく」「陳情・請願などを行う」「メディアに報道してもらう」「委員会・審議会に入る」「モデルとなる事業をやってみる」などがあります。

いくつかの書籍では「公益を目指すのが新ロビー活動」とあるのですが、定義や事例を見ると、あくまで「私益」を出発点としつつ、「公益」という視点を持つに留まるように見えます。
(草の根ロビイングは事例として紹介されていたものと、ロビイングの定義との乖離がそもそもあるようにも見受けられました。)

政策起業の出発点はあくまで社会課題の解決であり、「公益」だという点は大きな違いの一つではないかと思います。

しかし、この「公益」を定義することが非常に難しいのも事実です。

次回は「公益」とは何かについても書いていきたいと思います。

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参考書籍

原田峻(2020)『ロビイングの政治社会学-NPO法制定・改正をめぐる政策過程と社会運動-』有斐閣

秋山訓子、駒崎弘樹(2016)『社会をちょっと変えてみた―ふつうの人が政治を動かした七つの物語』岩波書店

Joos, Klemens and Waldenberger, Franz (2004) Successful Lobbying in the New Europe. Berliner-Wissenschaft.(平島健司訳『EUにおけるロビー活動』日本経済評論社.2005年)


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これまでの政策起業家に関する記事一覧はこちらになります。

また、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。

最後までお読みいただきありがとうございます。
日本では「政策起業家」に関する研究が非常に遅れています。
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