政策起業とロビイングの違いについて(2)
認定NPO法人フローレンスの駒崎さんの新著
『政策起業家-「普通のあなた」が社会のルールを変える方法』が販売されました!
こちらの書籍は駒崎さん達のこれまでの実践をもとに書かれていて、
非常に胸を打つ熱い書籍になっております。
私の方は、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。
30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。
さて、前の記事で、ロビイングとの違いは
出発点が「公益」にある点なのではないかと書きましたが、
「公益」を定義することが非常に難しいというのは事実です。
実際にある方からは、
「公益からスタートするロビイストもいるので、政策起業家はロビイストの類型派生系ではないか?」というようなご指摘もいただきました。
そもそもロビイングについても様々な解釈があり、日本ではダーティーなイメージが強いように感じます。
まずはロビイングについての歴史を少しずつ紐解いてみたいと思います。
「ロビイング」の起源は19世紀末にまで遡り、南北戦争の将軍として活躍し、アメリカの大統領となったユリシーズ・S・グラント大統領の時代に本格化しました。当時のホワイトハウスが火災にあったため大統領はホテル住まいを余儀なくされましたが、その時にホテルのロビーに陳情のために待ち構えている利益代表活動家があまりに多いことに辟易したのでした。そうしたことから「ロビイング」がお決まりの表現となったとされています。
初期のロビイングは、「旧ロビー活動」と定義され、自らの利益を守るため、あるいは拡大させるために政策決定者に働きかけることでした。これらは「特定の法案ないし法律に関して、その法案や法律に関わる議員や行政府の職員らに直接訴えかける」ことから「直接ロビー活動」とも呼ばれています。
その結果「旧ロビー活動(直接ロビー活動)」のイメージとして定着したのが、「不公平」「不透明」「閉鎖的」「意思決定の場に一握りの人間しか関与できない」「マスコミを避ける」「公益性がない」「一企業の利益や便宜獲得を目的とする」「ロビー対象は政府、政治家」というものでした。
皆さんが「ロビイング」と聞いてイメージするのは上記のようなののではないでしょうか?
しかし、これらの一企業や団体の「私益だけ」を求めるロビイングは1980年〜1990年に大きな批判を浴びるようになります。
そうした反省から、「新ロビー活動」が登場してきました。
次回は「新ロビー活動」について整理していきたいと思います。
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参考書籍
明智カイト(2015)『誰でもできるロビイング入門―社会を変える技術』光文社新書
柏木宏(2008)『NPOと政治―アドボカシーと社会変革の新たな担い手』明石書店
株式会社ベクトル パブリックアフェアーズ事業部、藤井敏彦、岩本隆(2016)『ロビイングのバイブル』株式会社プレジデント社
Joos, Klemens and Waldenberger, Franz (2004) Successful Lobbying in the New Europe. Berliner-Wissenschaft.(平島健司訳『EUにおけるロビー活動』日本経済評論社.2005年)
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これまでの政策起業家に関する記事はこちらから見ることができます。
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