日本の行政とNPOの関係と政策起業家(1)
現在日本語論文で「政策起業家」及び「政策企業家」を使用しているものを整理分析しているのですが、やはりこれまでの日本の中の文脈では「政治家」や「官僚」に対して使われていたことがわかってきました。
これもまたまとまったら発信したいと思います。
今回は日本の行政とNPOの関係を整理した上で、政策起業家との関係性を考察していきたいと思います。
そもそもNPOが行政と関わる理由については、以下の四つに整理できます。
こうしてみると、NPOが政策起業家、もしくは政策起業チームとして関わるのは①であり、その他のものは政策に働きかけるが、「公益を目指した『その行政で今まで行われていなかった政策の導入』」という意味での政策起業とは少し違うのかもしれません。
政策起業家とロビイストを分けるのはあくまで「出発点が公益かどうか?」というのが大事なので活動の結果ではなく、動機が非常に重要だと感じます。
また、NPOと行政の関係において、3つに分類されます。
一つ目は、「行政の補助として独立して活動している(non-profits operate independently as supplements to government)」状態であり、行政では担えない社会課題に対して、自主的に活動を行っているようなものです。例えば、NPO法人コモンビートのような取り組みです。彼らは、市民公募で集まった100人が100日間で1つのミュージカルを作ります。表現活動を通して、市民同士が多様性の理解を深める生涯教育を提供しています。財源は参加費収入のみで賄われており、行政から独立して活動している点が特徴です。
二つ目は、「パートナーシップ関係の中で 行政の補完として活動している(non-profits work as complements to government in a partnership relationship)」状態であり、指定管理や業務委託としての連携などが典型的な例です。例えば認定NPO法人杜の伝言板ゆるるがあります。みやぎNPOプラザの指定管理を宮城県から受託し運営しており、年間の収入の約75%を占めています。
三つ目は、「行政との相互説明責任という敵対的な関係にある(non-profits are engaged in an adversarial relationship of mutual accountability with government.)」状態であり、政策提言などを主活動にしている団体などです。例えば、認定NPO法人環境文明21があります。この法人は、環境問題に関する調査研究や普及教育、政策提言などを主な活動として、行政に働きかけを行っています。
NPOが行政に関わる4つの理由、そしてNPOと行政の3つの関係性の整理した上で、日本の歴史的変遷の中でどのように関係性、パートナーシップが変わってきているのか、変えていくべきなのかについて書いていきたいと思います。
==
参考
柏木宏(2008)『NPOと政治―アドボカシーと社会変革の新たな担い手』明石書店
Young, Dennis R. (2000) “Alternative Model of Government-Nonprofit Sector Relations: Theoretical and International Perspectives.” Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly, vol.29, no.1, pp.149-172.
==
これまでの政策起業家に関する記事一覧はこちらになります。
また、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
日本では「政策起業家」に関する研究が非常に遅れています。
研究を応援いただける場合には、
「サポート」していただけますと大変嬉しく思います。
サポート資金は全額、「博士後期課程」への進学資金にさせていただき、
更なる政策起業家研究に使わせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?