【Behind The Scenes】showme「WITH」のMVを監督した話。
○はじめに
showme「WITH」のMVが1万回再生越えたということで、観ていただいた皆さまに心より感謝いたします。ありがとうございます。これはshowmeとしては初、僕としてもこの短い期間に達成するのは初なんです。
今回はこのBTS的な話を読んでいただいて、これを踏まえてもう1回観てもらえたら面白いんじゃないかなということで進めていきます。
あとはバンドマンとして長く活動していた僕が、本格的に映像制作をはじめて、今どんなふうに向き合っているかも知ってもらいたいなと思います。
音楽が好きな人、映像が好きな人が、ミュージックビデオというものにもう一歩踏み込んでもらえるように、なるべくわかりやすい言葉で書いていきます。
それでは、一つよしなに。
●全体として
主となるテーマは「旅、仲間」です。
2020年までにshowmeというユニットが色んな仲間と関わってきたストーリーと、暗闇から夜明けまでの時間の流れを絡ませて、楽曲のイメージをブーストさせることを心がけました。(Youtube概要欄にある歌詞をぜひチェックしてください)
裏話的なことでいうと、今回の撮影はとても過酷でした…。
極寒真っ暗闇の山中を最少人数で移動して、夜明けまでの時間は限られている…(ラストシーン03:38~の話につながります…)
太陽が完全に上ってしまうと、ラストシーンと他シーンの前後関係がおかしくなってしまう…(照明機材をしっかり用意するのがベターですね…)などなど。
ワンオペ撮影の限界点を目指しておりましたが(一緒にMV撮れる仲間を探してます…)、手の空いたバンドメンバーにお手伝いしてもらいながら(ほんとに助かりました…)イメージしていた映像になんとか収まりました!
過酷話をもう一つさせていただくと、今回は撮影から4日後が公開日でした…!これはわりと(いやだいぶ)猛スピードかなと思ってます。
映像制作の大まかな流れは、①準備(プリプロ)②撮影本番③編集(ポスプロ) となっています。今回は前述の通り、②と③に時間が取れないことがわかっていたので、①にしっかり時間をかけました。結果的に①に時間をかけることで、②③はだいぶカバーできるんだ!というのは発見でした。
●0:00~0:05
この冒頭のカットが、唯一現場での思いつきで撮影したものです。
カットとしては「カメラに向かって10mほど運転して、ギリギリでブレーキをかけて降りる動作に移る」というものなんですが、結構な回数撮り直しました。そして正面でカメラを構えた僕は結構な回数轢かれました…
最徐行で動かしてもらってますが、それでも編集上(ポスプロ)でさらにスローにしてあります。
車の天井(内部)に小さい照明を、今回のキーカラーの青でセット。隠しアイテムとしてshowmeのグッズもセット。(いくつ見つかるでしょうか?)
周りが真っ暗な場所だったために、なんだか異空間みたいな、独特な絵になりました。showmeのこれまでのビデオにはない雰囲気から始まることで、再生した人を「おっ」と引き込むことができた気がします。もっと言うと、このMVに出てくる他のどのカットとも似てない感じになったので、ちょっと浮いてる感じもしますね…(なにぶん思いつきだったもので…)
●0:06~
先ほど書いた通り、ここからの山中のシーンはほとんど日の出後に撮影してます。でもなるべく日光を入れたくなかったわけです。
なので編集上で暗く色編集したり、色々手を加えています。そう思って見ちゃうとけっこう限界あるけど、そこはご容赦ください…。
●0:15(一番上に載せた画像)
このロゴ+背景、けっこうお気に入りです。長方形の中に文字要素をまとめるデザインになっているのですが、今改めて見ると"旗"みたいに見えなくもない。なんとなく。
このMVのラストシーンの別案として「浜辺か山の頂上に、旗(バンダナをつけた棒)を突き刺してみよう!」みたいなのがあったので、ここにその要素が滲んだのかもしれない。後付けだけど、こういうのはなんか好きです。
あとは普段映画を見ていて、絶妙なタイミングでタイトルロゴがドンって出てくるのがとても好きなのです。そんなことも考えて配置しています。
●showmeそれぞれのソロラップシーン
2人のパフォーマンスが良かったのは言わずもがなですが、ロケーションが勝ったなー!と感じてます。山肌の茶色、緑、黄色とか、コンクリの質感、洞窟の光の入り方などもとても良くて、2人それぞれのキャラクターに合ったロケーションで撮れました。
2人それぞれのバースはラップなので、絵のイメージとしてはHIPHOP系のMVのエッセンスを取り入れたつもりです。(HIPHOPの方々のビデオはほんとにカッコいいのが多いですね…)
●0:44~ 2:53~
この2つのシーンは「showmeが仲間を集めていく」ということですね。探し物探しにいく!ONE PIECE!
このシーンも含めて、showmeの歴史を表すアイテムが各所に出てきます。(ぜひメンバーから答え合わせしてほしい!)
アイテムを登場させるというのはメンバーから出たアイディアで、「せっかくなら組み込みたいな…でもわざとらしくなったらいやだな…」と方法を迷いましたが、結果的に全体がちょっと暗めなトーン(色味)なのでその差し色になってたり、ポップな可愛げのある要素になってたりして、とてもよかったなと思います。
●3:03~
曲の展開に合わせて、一気に太陽光が入り画面にフレア(光の輪っかみたいなやつ)が出ているところ、とてもお気に入りです。旅のラストスパートということで、ここからは少しカット割りのテンポを上げて、クライマックスに向かいます。
●03:13~
このギターソロは長回しワンカット。僕はこの撮影手法がとても好きなのですが、撮られる側のパフォーマンス力がないとなかなかうまくいかないものです。
その点、ショーくんはすごい。急に「じゃあこの場所で、ここスタートでこんな動きでここまで来てもらって、はい、お願いします!」ってなノリで撮り始めて、2,3テイクでここまでやってくれました。お見事。
●03:38~
ラストシーンは、集まった仲間と、山の頂上での演奏です。このMVの一番大事なところ。メインディッシュ。ここを召し上がっていただくために積み上げてきたわけです。
ここまでなるべく暗めなトーン(ローキー)で進めてきたおかげで、「はい!夜明けです!」という一気に開けた印象になったと思います。
でもまだ空は白んでいて、太陽が上り切っているわけではない、という色味にしていまして、意味を込めたこだわりポイントです。
このロケーションを存分に活かすため、近距離、中距離、遠距離と色々なカットを撮影しました。その場にあった草木で前ボケ(手前にものを置きながら、奥のメインとなる被写体にピント合わせてより際立たせる)を作ったりできたのはお気に入りポイントです。スローと通常のスピードを、程よく混ぜられたのも上手くいったんじゃないかなと。
欲を言えば、こういうロケーションではドローンを使ってもっと遠景から壮大に撮ってみたいものです…!!
曲が終わって、画面上下の黒い帯が取れた瞬間の、メンバーのほっとしたような表情も、とても意味があってよいですね。こういうのは狙って撮れるものではないので、奇跡だなと思います。過酷な撮影した甲斐があるな〜とも思います…!
●おわりに
ああ…張り切って長くなってしまった…。皆さま、お疲れさまでした。
今回のMVは、今まで以上に「たくさん再生されたいな…!」という思いもあって、内容の構成に凝りました。「分かりやすさ、飽きなさ、複数回見たくなるにはどうすればいいか」等々を意識しつつ、自分のこだわり(こういうのが好きです!というポイント)もしっかり組み込めた一つの理想型です。今後、色んなパラメータをガンガンレベル上げさせて、またこのテイストで制作してみたいなと思います。
ではこのままもう一回通してご覧ください!
最後まで読んでいただきありがとうございました。また気まぐれでこういうものを作りたいと思います。公開している他の作品もぜひぜひご覧ください。