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ケーススタディ #4 日本花き振興協議会
こんにちは、ナカムラです。今回は「ブレーン2021年4月号」から日本花き振興協議会の「Okulete gommenプロジェクト」を紹介したいと思います。(5分で読めます)
1)消費者の価値に根ざした「購買機会の創出」
花との接点が少ない人に、花を贈るきっかけを創出するプロジェクトサイト「Okulete Gommen」。応援団を務める、お笑いトリオのハナコやオリジナルラッピングペーパーなどを紹介。店舗への送客につながるコンテンツを発信。
「祝いそびれ」をきっかけに花を贈る人を増やそうというのがこのプロジェクトの主旨です。ハナコの皆さんが、それぞれの「祝いそびれ」を語り、実際に花を贈るサプライズを収めたムービーもあって、ほっこりできるので一度見てみて下さい。
「祝いそびれ」という着眼点
このプロジェクトの最もすばらしい点は、やはり「祝いそびれ」という着眼点だと思います。
「花を買う人を増やしたい」というのは売り手の論理ですから、これを買い手の論理に変換しなければいけない。その中で母の日、父の日、入学・卒業…と、いわゆる”祝いごと”に商機を見出したアイデアはこれまでもたくさんありました。
花に限らず、とにかく無数の商品が、そういう祝いごとのタイミングで一斉に広告を出すわけですよね。
ただ、この「Okulete Gommen」プロジェクトは、それらと一線を画する位置にあります。まず、消費者のペインを解決していること。そして、シーズナルの商戦で戦っていないこと。この2点がとてもユニークなポイントです。
多くの消費者が抱えている「あ~、タイミング逃しちゃったな…」という気持ちに「すこし遅れてしまっても、お祝いされたらきっと嬉しいから。」と背中を押してくれるこのプロジェクトは、確実に価値がありますよね。
かつて、2月14日を「チョコレートを贈る日」と再定義した森永製菓のマーケティングはもはや文化となっていますが、あれは「気持ちを伝えるきっかけがない」という悩みを解決したことが功績だと思っています。
「Okulete Gommen」プロジェクトも、バレンタインデーに並ぶすばらしいマーケティングだなと思います。
気持ちを動かすデザインの力
ブレーンの記事中に、制作者である壇上さんのこんなコメントが掲載されていました。
「Okulete Gommen」という一見フランス語風のタイトルとデザインにすることで、気まずい気持ちをジョークに変え、楽しい気分をつくることに挑戦しました。
まさしくこのデザインが、企画を成立させる要点になっていると思います。タイミングを逃した人たちが未だに祝えていないのは、「今さらって思われるよな…」とか「なんで今?って感じだよな…」とか、祝いたい気持ちと、相手に対する申し訳なさがぐるぐるしている状態なわけです。
そこに「花を贈りましょう」と言われても、「まぁそうなんだけど気まずいんすよね…」という話で、何も変わらない。
ただこの企画は、「むしろもう笑い話にしちゃって、祝っちゃおうよ」っていう”ネタにしちゃう”ことでこの悩みから解放してくれるんですよね。
これがもの凄く理にかなっていて。脳神経科学でいう「認知的再評価」の一種で、ネガティブな出来事をポジティブに再解釈することで、脳の回避反応(ここで言う「今さらお祝いなんて…」)を抑制できるのです。
この狙いを、完璧にデザインで表現しているところに脱帽です。
※認知的再評価については↓のnoteで詳しく書いています。
最後まで支えてくれる動線設計
このサイトと出会った人が、「あ、これ良いかも」と思ったとして、その後どんな行動や心理が想定されるでしょうか。
「…と言っても、どんな反応されるか分からないな…」
「面白いと思ったけど、この空気が伝わるのかな…」
「そもそも花なんて買ったこと無いから何が良いのやら…」
私ならこんな気持になります。
しかし、Okulete Gommenはこのすべてをフォローしてくれるんです。(まわし者っぽくなってますが、ただのケーススタディですw)
冒頭紹介したハナコさんのドキュメンタリームービーを見ることで、「遅れてお祝いされた人はどんなリアクションをするのか」を知ることができます。そして、あの笑顔や涙をみて、安心するはずです。
また、専用のラッピングペーパーが用意されていて、和やかな空気作りに一役買ってくれます。「遅れてごめん!(けど、許してね)」という気持ちが伝わりやすい設計です。
そして最後に、「祝いそびれの花」と題して、祝いたいコト・人に合わせた花を紹介してくれます。ここまでお膳立てしてもらえたら、きっとその足で花屋に駆け込んでいくでしょう。
2)最後に
2020年、新型コロナウィルス感染症に起因して、結婚式に代表されるイベントの中止・延期が相次ぎ、花き業界は大きな打撃を受けています。一方で、おうち時間の充実を求めて、花を飾る習慣が生まれた人も多くいます。
ただ、その規模を見れば、ネガティブインパクトの方が大きいのが実情だと思います。
そんな中で、日本花き振興協議会の本プロジェクトはとても意義あるものだと感じますし、他業界においても見習うべき点が多くあるので、是非参考にしてみて下さい。
以上、ケーススタディ #4 日本花き振興協議会でした。あくまで私個人の捉え方なので、ぜひご意見下さいませ~!
最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m
ナカムラ