あのユニクロも悩んでいる!?過大在庫なのに売り逃し!
凡才(と感じている)経営者の皆さん、こんにちは!
世の中には「本当にスゴイ!」と感じる会社・経営者の方が沢山いますよね。その代表的な1社としてユニクロが挙げられるのではないでしょうか?
ですがご安心下さい!あのユニクロでさえも皆さんと同じ悩みを抱えているのです。それは…「過大在庫と売り逃し」です!どちらか1つではありません。これが同時に起こるから頭が痛いのです。
上記のように日経の記事にもなっています。在庫過多はなにも中小企業経営者だけではなく、あのユニクロでさえも悩ませているのです。これが過大在庫の問題です。
一方こんな経験はありませんか?せっかく人気の洋服を買いに行ったのに自分に合ったサイズが売り切れで結局買えずに帰ってしまった…
これはお店側から見ると売り逃しです。機会損失と言ったりもしますね。ユニクロだって「売り切れ続出」と紹介される服も多いです。
過大在庫なのに売り逃し なぜこんなことが起こってしまうのでしょうか?防ぐ方法はないのでしょうか?あのユニクロでさえ起こってしまう、この問題。一緒に考えてみましょう。
1.過大在庫はこうして生まれる!
過大在庫が生まれる理由。これはとても単純です。それは…発注のし過ぎです。売れる分以上に仕入れてしまったということですね。ユニクロなどのアパレルに限らず、小売店は「売れると思う分仕入れる」ということをやっています。でも、常に「売れる分ピッタリ」なんて仕入ができるでしょうか?当然できるはずがありません。「予想と反して売れなかった」そんな経験は小売店の経営者なら誰しも経験があるでしょう。その売れなかった分が過大在庫になってしまうのです。
2.売り逃しはこうして生まれる!
一方、売り逃しはどうでしょうか?売り逃しは「機会損失」とも言われます。売れたらその分の利益を得られるはずだったのに、その機会を逃してしまった。だから機会損失と言うのです。これが起こる原因はなんでしょうか?大きいのは「思ったより人気が出た」ということです。人気が出た、売り切れたというのは一見すると、とても嬉しいことのように感じますが、「売れる機会を逃してしまった」という意味では大きな損失なのです。
売り逃しは実は他にも要因があります。例えば私はサントリーの「特茶 ジャスミン」が好きなのですが、これはどこのコンビニにも置いてあるというわけではありません。家の近くのセブンイレブンにあったからといって別のセブンイレブンに置いてある保証はない。コンビニに入った時にそのお茶がないと私は帰ってしまいます。売り切れという前にそもそも「棚にない」これも売り逃しの1つのパターンです。こちらの方が厄介かもしれません。なにせ、お客様がなぜ何も買わずに帰ってしまったのか、何が欲しかったのか分かりませんから。アパレルのように「サイズがなかったから買わなかった」という方が分かりやすいですよね。
思ったより人気が出た、そもそも棚にない、これは売り逃しが生まれる大きな二つのパターンです。
3.「過大在庫なのに売り逃し」の裏に潜む要因
過大在庫は在庫がありすぎる問題。一方売り逃しは在庫がなさすぎる問題。一見すると両立しなさそうに見えますが、ほぼ全てのアパレルショップではこれが同時に起こってしまっています。これが「過大在庫なのに売り逃し」の問題なのです。あのユニクロでさえも起こってしまう…。
なぜこんなことが起こってしまうのでしょう?実はこの裏には全く同じ要因が潜んでいます。もう一度過大在庫が起こる理由、売り逃しが起こる理由の文章を読んでみてください。同じ理由が見えませんか?
実は両者の裏には…販売量を予想するという同じ要因が潜んでいるのです!過大在庫は販売量の予想に対して予想が「少なく外れて」余ってしまった状態です。一方売り逃しは予想が「多く外れて」足りなくなってしまった状態なのです(棚にないというのも「置いても売れない」という予想の結果)。結局両者は同じ理由から、販売量を予想するという理由からこのような結果になってしまっています。Aという商品は予想を少なく外して過大在庫、Bという商品は予想を多く外して売り逃し。両者は両立してしまうのです。
4.「過大在庫なのに売り逃し」の要因を探るTOC
同じ要因から複数の結果が生まれる。これに着目した経営理論があります。TOCという理論です(日本訳では「制約理論」と言います)。TOCでは「どんなシステムであれ、常に、ごく少数(たぶん唯一)の要素または因子によって、そのパフォーマンスが制限されている」との考えが基礎にあります。経営的に分かりやすく言えば、「どんな会社でも唯一の要因によってパフォーマンスが制限されている」という考えからスタートする理論です。この唯一の要因のことをボトルネック(制約要因)と言います。このボトルネックさえ見つけられれば、その改善で会社全体のパフォーマンスの向上が望めます。逆に言うと、ボトルネック以外の改善は無意味なのです。「過大在庫なのに売り逃し」この問題もボトルネックを要因として起こっているのです。
ボトルネック、唯一の要因さえ見つけられればいい。そう言われても、にわかには信じられないかもしれません。例え話で考えてみましょう。あなたが営業マンだとして、お客様との取引を進めるために課長の決裁が必要な状況を想像してみてください。あなたは決裁の書類を次から次に課長に提出します。しかし、課長はあなた以外の営業マンからの書類も沢山届きます。課長の机には書類の山…。決裁が遅れて、顧客はしびれを切らして他へ行く…。そんな状況ですと、「課長の決裁」が会社全体の流れを滞らせている原因になっていると言えます。この場合、「課長の決裁」がボトルネックです。
流れを滞らせているところがボトルネック。上記では「課長の決裁」でした。でもこうは思いませんか?そんな原因他にも沢山ある。「唯一」ではないのでは?と。
では少し状況を変えて考えてみましょう。顧客との取引を進めるために、課長だけじゃなく、その上の部長の決裁も必要だと仮定します。部長は当然、課長の数だけ決裁の数も増えます。あなたは課長を急がせて決裁を早く進めてもらいました。課長が普段の倍のスピードで決裁したとします。でも、さらに決裁の多い部長のところで滞ってしまったら?課長に急いでもらっても結局は部長で止まってしまいます。この場合、「部長の決裁」を改善しない限り、いくら課長を急かしても意味がありません。この場合は課長の決裁も溜まるかもしれませんが、それ以上に部長の決裁が溜まっています。結局「部長の決裁」を改善しない限り、会社の取引件数は増えていきません。
一番流れを滞らせているところ、それがボトルネック。この例え話ですと「部長の決裁」です。その唯一のボトルネックを見つけて改善することが最も効果を生むというのがTOCです。そのため、TOCではボトルネックを見つけるための手法があります。
ボトルネックという同じ要因が会社のパフォーマンスを落とすという結果につながっていく。しかも一つの結果ではなく複数の結果に(先ほどの例でいえば、取引を逃すだけでなく、営業マンのストレスという悪い結果も起こっているでしょう)。
アパレル会社を悩ませる「過大在庫なのに売り逃し」という状態も結局は同じ要因から起こっていました。物事はつながっていて、流れの中にあるのです。そのつながりから唯一の要因、ボトルネックを見つけることができれば、会社のパフォーマンスが劇的に改善されることが期待できる。だからTOCは「過大在庫なのに売り逃し」で悩むアパレル企業にも効く理論なのです。
5.「過大在庫なのに売り逃し」を防ぐ方法
ではユニクロの、多くのアパレル会社にとってボトルネックはなんなのでしょうか?どうすれば「過大在庫なのに売り逃し」を防ぐことができるのでしょうか?
やりがちな改善手法があります。それは「予想の精度を高めようとすること」。もちろん効果がゼロではありません。精度が高まれば過大に発注してしまうこと、少なく発注することは減ります。ですが、精度を高めるためには膨大なデータと分析が必要でしょう。超大企業ならともかく、中小企業にそんな余力はありません。また、超大企業といえど、何カ月も先の流行を予想することは非常に困難です。精度が少し上がったとしても、効果はそれに見合わないことも多いでしょう。
「過大在庫なのに売り逃し」という結果の裏に潜むボトルネック。もちろん、1社1社の状況に応じてボトルネックは違います。ですが、「業界」として考えるとボトルネックらしきものが見えてきます。それは、TOCを開発したエリヤフ・ゴールドラット博士の著書「ザ・チョイス」に書かれています。この本の中で名前は書かれていませんが、アパレルブランドへの改善を行った事例が記載されています。ゴールドラット博士はどこに注目したのでしょうか?ゴールドラット博士は「予想の精度」には注目しませんでした。ゴールドラット博士が注目したのは「なぜ何カ月も前に全て発注しなければならないのか?」ということです。
冒頭のユニクロの日経新聞の記事では生産委託会社の納期は当初「半年」だったそうです。つまり半年以上も前に売れると思われる数を予想して発注しているという状況。予想は先になればなるほど外れる可能性が高くなります。「半年も前に売れる数を予想する」それは外れますよね。結果「過大在庫なのに売り逃し」になってしまいます。そのため、ユニクロは納期を半分の3ヶ月にしたようです。精度を上げる取り組みですね。強大な販売能力を持つユニクロだからこそ納期半分という無茶な取り組みもできるのでしょう。どれだけ効果が出るでしょうか。
しかし、ゴールドラット博士が気が付いたことは別にあります。本来1着1着の洋服を縫製するのに何カ月もかかるわけがありません。1着あたりでしたら数十分というところでしょう。なのに何カ月も前に、半年も前に「まとめて発注されている」。それは、まとめて発注された量を用意するのに、輸送するのに、時間が必要になるからです。
本来なら商品を販売し始めてから売れ行きを見ていけば、何が売れて、何が売れないかは分かります。商品を販売し始めてから売れるものだけを「こまめに発注」できれば、「過大在庫なのに売り逃し」は劇的に減らすことができるはず。なぜこれをしていないのだろうか?と考えたのです。
なぜまとめて発注してしまうのでしょうか。その理由は輸送コストが挙げられます。店の近くで作っているならともかく、ユニクロも作っているのは海外の工場です。船便で大量に輸送した方が輸送コストは低くなります。また、生産性の問題もあるでしょう。同じものを一気に作った方が生産性は上がります(この場合の生産性は「同じ時間で多く作れる」という意味です)。このような理由から「何カ月も前にまとめて発注」が業界としては当たり前に行われていたのです。
ですが、輸送コストは「売り逃し」で失われる利益よりも大きいのでしょうか?本の中では売り逃しで失われる利益の方が明らかに大きいと考えられています。生産性も結局売れなくて過大在庫になり、捨ててしまっては意味がありません。「何カ月も前にまとめて発注しなければならないという思い込み」これこそがアパレル業界のボトルネックだったのです。
このボトルネックが見つかれば、あとはそこを改善するだけです。ゴールドラット博士は「こまめに発注する」という改善を考えました。生産委託会社も巻き込んで、売れ行きが分かってから「こまめに発注する」これで何カ月も先の予想をすることなく、予想の精度を高める必要もなく、大きな改善が見込めるようになります。「過大在庫なのに売り逃し」を防ぐ方法としてパワフルな方法です(ちなみにこれも博士の改善のスタートに過ぎません。)。
6.さらに得られる副次効果
こまめに発注できると、「過大在庫なのに売り逃し」に対処するだけでなく、さらに他の効果も望めます。
皆さんは洋服を買う時、どんな時に買いに行きますか?きっと相当数の人が「セールの時に買いに行く」と考えているのではないでしょうか?過大在庫を抱えると何とか処分したくなります。だから「〇%オフセール」が頻繁に行われるのです。
セールをしなければいけない理由は過大在庫です。もし、こまめに発注によて、過大在庫が劇的に減ったらどうでしょう?売れ行きを見定めてこまめに発注する。人気のある商品ばかりが棚に並び、次々売れていく。もうセールなんてする必要がありませんよね。つまり「〇%オフ」で売らなくて良くなる分、販売単価も上昇するのです。
この方法は何もアパレルに限りません。例えば千葉県船橋市を中心に「奇跡のパン屋」として名高いピーターパンというパン屋さんがあります。なんと普通のパン屋さんの10倍の売上をたたき出しているそうです。ここのパン屋さんのウリは「焼きたて」。焼きたてを常に提供することで有名です。これも「朝まとめて焼く」ではなく、細かく何度も焼く。そうすることで「焼きたて」のパンを提供でき、それを目当てにお客様に来ていただけます。「まとめて」ではなく「細かく」これはアパレルに限らず多くの会社で有効な手法なのです。
まとめ
「過大在庫なのに売り逃し」は、あのユニクロでさえも直面している課題です。一見矛盾するように見える二つの結果は「売れる数を予想する」という同じ要因から起こっていました。さらにそれを突き詰めると「まとめて発注しなければいけないという思い込み」がボトルネックとなっているようです。
結局売り逃しを防ぐ一番いい方法は「売れ行きを見定めてこまめに発注すること」となります。さらにそれができれば、セールをしなくても良いという副次的な効果も生まれます。
あのユニクロすら悩ませる「過大在庫なのに売り逃し」ですが、「業界として当たり前」と諦める必要はありません。その当たり前を疑い、学び、対処していきましょう。その学びにはこの記事でも紹介させて頂いたTOCという理論を学ぶことをおススメします。
最後にTOCを学んでいる人の中で「成功の格言」として言われている言葉を贈りたいと思います。
大きな山は小さく崩せ
まとめて発注ではなく細かく発注する、まとめてパンを焼くのではなく細かく焼く、今回紹介した事例もこの格言にのっとっています。是非頭に置いておいてください!
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