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noteで友人を見つけて思うこと

仕事を辞めた同僚がnoteをやってると言っていたのを思い出し、試しに彼の本名で検索してみた。
流石に本名で登録しているわけないだろうと思ったが、予想は大きく裏切られた。彼は本名で活動していた。

彼との出合い


彼との出会いは数ヶ月前に働いていたアパレルでのこと。基本的に私が所属していた会社は超効率優先主義で実力主義だった。そのせいか、正社員になれる人間は性格が悪いなど酷い言われようだった。

そんな会社に契約社員として入社してきた彼は、かなり異なった真逆の存在だった。一言で言って不器用、店長の代理の社員からは「早く作業してください。」なんて言われてしまう程、丁寧に仕事をするような人だった。

なんでこの会社に入社したの?と休憩時間にふざけ半分で聞いてみた。

「服が好きなんです」

口ごもりながら言う彼に

「じゃあ、別のアパレル店でも良かったんじゃないの?」

今思っても嫌な言い方だと思う。けれど、周りから愚図とか、何も考えてないんじゃないかと言われても尚、続ける理由を知りたかった。

「僕、このお店に3回面接受けてて、やっと受かったんです。だから簡単に辞めたくないなって。それに僕は仕事も遅いし、みんなに迷惑かけてばかりで、まだレジ打ちしかやらせてもらえないけど、もう少し続ければ他の仕事も任せてもらえるかもって、、そう思って」

正直驚いた。彼は図太い奴だとは前から思っていたが、想像を超えていた。



彼は私なんかよりタフだった。


自社の社員だけでなく店長達から褒められ、表彰されていくうちに、すっかり私は天狗になっていたのだ。他のスタッフが呼び込みをするより、私が呼び込んだほうが客はよってくる。
他のスタッフが接客するより、私が接客したほうが客も気分が良い。

そんな傲慢な心構えで働いていたからか、お客からの人気は全く得られなかった。

思えば、彼の丁寧で無垢な接客はお客の心に残る温かい接客だった。現に、彼は名指しでお客からお褒めのアンケートを頂いていた。それだけ彼の真心がお客に訴えるものがあったのだろう。最初は悔しかった、なんであの木偶の坊がって見下してすらいた。けれど、彼の話を聞いて私の醜い嫉妬心は尊敬へと変わった。


彼と関わって変化したこと

それから不器用な彼とは、お昼休みが被るたびに色んな会話をした。

実はこの店舗の店長の一人は同級生だったこと、母親が乳がんで大変だったこと、家事を苦手なりに手伝っていること、そしてnoteに自分の書いた小説を投稿していて、わずかながらにも収益を得ていること。

ぜんぶぜんぶ、私には無い物だったから、彼の話はとても刺激的だった。他のスタッフがつまらないと酷評していたとしていても。

基本、彼が一方的に話をしてくれるから私は相づちを打つだけだったが、彼のネタ切れが訪れたら、どうしたら貴方みたいな接客をできるようになるの?と仕事の面で彼が私より優れてると思う点について教えを乞うた。彼曰く、私には業務以上の優しさがないらしい。思わず笑ってしまった。

それからというもの、私はほんの少しの優しさを心掛けるようにした。


「仕事をやめようと思ってる」と相談した時は

「ただ嫌になって辞めるのは良くないですよ。この会社は入社するのも難しいんですから。でも、やりたいことがあるなら辞めてもいいと思います。まだ若いんですし、きっと先輩なら大丈夫ですよ。」

ありきたりだけど、誰もかけてくれなかった言葉をくれた。

この事もあってか、何か挑戦しようとするたびに不器用に接客する彼の姿を無意識に思い浮かべてしまう。


彼の顔を数か月ぶりに見た

仕事を辞めると相談をしてから数か月が経過した今。以前働いていた店舗のシングルマザー(以下ママとする)の厚意もあって、就きたい仕事にありつけるまで月3万円で一部屋貸してもらえることになった。後になってママに聞いた話、彼も「ママさん、先輩と一緒に住んであげてくださいね」と会うたびにお願いしていてくれていたらしい。優しいやつめ。


もう一つママから聞いたのは、彼が仕事を辞めたらしい。


自分のことじゃないのに少しショックだった。彼が辞めるはずがない、誰かにいじめられたのか?何か困っているなら、今度は私が彼の話を聞いてあげたい、ていうか、聞いてあげることしかできない。そうは思うが、彼の連絡先も知らない私はそんなことすら出来ないでいた。

そういえば、noteやってるんだっけ。

ダメもとで彼の本名を入れてみた。

いた、彼は彼らしく本名で活動していた。

彼のページは自作の小説で溢れていた。物書きになりたいと言っていたのを強く思い出した。彼は彼なりに目標に向かって頑張っていた。数多の記事の中で一つ、彼の目標について書いてあるものがあった。その記事の中の彼はかなり過激派だった。某有名な文学賞を受賞しなきゃ自ら命を絶つ、そのぐらいの熱量で芸術に挑まなきゃダメだと。物の例えだとは分かっていたが、心配で仕方ない。彼はキレたら何をするかわからないタイプだったからだ。

自ら命を絶とうとする人間に何度か会ったことがあるからか、たかが文章でも心配で仕方ない。

死んだら元も子もないじゃないか。そんな風に思いつめてないで一緒にお菓子食べようよ。って言って励ますのも違うし

貴方ならできるって暑苦しく応援するのもなんか違う。


直接応援するのは難易度が高いから、月に一度、匿名で彼の記事を一つだけ買うことにした。記事をすべて公開した状態で、収益をつけているものだとしても良いと思ったものはハートをつけて買う。それが今の彼にできる私なりの最大限の励ましだ。

辛くなったら、またアパレルのお店に戻ればよいよ。実は一部の社員たちから高く評価されてたんだからね。



今回の教訓
1.効率化に特化しすぎた今、不器用なまでな丁寧さは心  に染みる。
2.私には優しさが足りない。
3.純粋に頑張る人にはファンがつく

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