運動失調に体幹への介入は有効なのか?
運動失調によるバランス能力改善には補助のない立位で全身運動を使ったダイナミックなバランストレーニングや歩行練習を一日に2時間以上、週に4回以上行う必要があるとの報告がある。
しかしこれは支持物無しの立位保持ができない重度の運動失調に対する症例は含まれておらず、効果的な運動療法は確立していない。
そこで背臥位などの安定した姿勢で行える介入方法でコアスタビリティトレーニング(CST)がある。橋出血により重度運動失調を呈した症例に対しCSTを行った結果を見ていく。
結論としては身体機能の向上がみられた。詳細は文献を参考に。
具体的な方法は、
・背臥位で膝屈曲70~90°屈曲位で保持し、骨盤後傾を促した状態でゆっくりと股関節を0°まで伸展するブリッジ運動。この姿勢を5~10秒保持しゆっくりと元の姿勢に戻す。
・両手で手すりを把持し、股関節・膝関節屈曲45°程度のハーフスクワット姿勢を保持させる。この姿勢が保持出来たら約10°程度の膝屈伸運動を5秒程度かけて行う。
これらのCSTにより下肢の運動失調の改善がみられた。
CSTに使用されるブリッジは体幹の安定性に強く関与する腹横筋、腹直筋、脊柱起立筋の同時収縮が生じることが報告されている。これらの協調的活動能力の向上が体幹の安定性を向上させた。
さらにCSTは緩徐な運動である。緩徐な運動は、速い運動の際に生じやすい慣性を減らし、運動の難易度を下げ、エラーを小さくする効果がある。重度の運動失調を呈する患者では運動時に起こるエラーが大きい場合には運動を学習しにくいが、小さいエラーの場合には運動を学習しやすいとされている。
また、上肢支持を用いながら膝屈伸を行うことで体幹と肩関節周囲筋の同時活動が得られることから上肢の失調症状の改善も認められている。
参考文献 Core stability trainingにより運動失調およびバランス障害が改善した重度小脳性および感覚性運動失調の1症例 阪本誠 他 理学療法科学 2017